「『うた☆プリ』らしいダイナミックな演出の中に込められたファンへの長大な愛の返歌」劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ TABOO NIGHT XXXX ゆういちさんの映画レビュー(感想・評価)
『うた☆プリ』らしいダイナミックな演出の中に込められたファンへの長大な愛の返歌
『TABOO NIGHT XXXX』はほぼ全編が劇中劇として進行する、アイドルのライブツアーとしては攻めた構成の作品である。ライブの醍醐味である双方向コミュニケーションにおいても、アイドルからファンへ語り掛けるのは曲中のコール&レスポンスが主で、MCパートらしいものどころか自己紹介パートすらない。「言葉はいらない 歌があればいい」(QUARTET NIGHT『エボリューション・イヴ』2015年6月リリースより歌詞を抜粋)と長年歌ってきた彼ららしい、いかにも挑戦的な構成だ。しかしこのライブには、長年連れ添ったファンへの惜しみない愛と信頼が隠されている。
劇中劇は、4つの宝石を巡る現在と過去を織り交ぜたストーリー。4つの宝石がひとつになって本来の力を取り戻すまでの軌跡を純粋に楽しむこともできるが、これらのストーリーはQUARTET NIGHTの4人が歩んだ歴史の疑似体験としても読み解くことができる二重構造である。その道でトップクラスの実力を誇るバラバラだった4人が、ファンとの愛と信頼を築き4人であること・4人でなければならないことの意味を再確認する。ソロ曲の役柄の裏側に隠された彼ら自身の過去、そしてそれらを乗り越えた先で示される未来への答え。しかし、作中ではそのような二重底のネタばらしは一切語られない。彼らはアニメの外の世界にいる長年のファンに向けて、言葉はなくとも歌で、パフォーマンスで、必ずこのメッセージが伝わると信じてこのライブを作り上げた。スクリーンの中の観客と、映画館の座席に座る我々と、それぞれ異なる次元にいるファンへ純粋なエンターテインメントショーと深い親愛のメッセージを同時に送る離れ業をやってのけたQUARTET NIGHT『TABOO NIGHT XXXX』、途轍もない作品である。
パフォーマンスは圧巻の一言。『うた☆プリ』らしいぶっ飛んだダイナミックな演出の数々に、ラップや洋楽、シネマティックなエッセンスを盛り込んだ新しく心地よいサウンド、個々の抜群の歌唱力にQUARTET NIGHTの誇る美しい4声ハーモニー。個人的なお気に入りシーンは怪盗4人衆のメドレー。役のコーティングが施されているものの、4人それぞれの個性が最大限に活かされたパフォーマンスはエキサイティングで(特にカミュの登場シーンは最高)、アメコミ調のホログラム挿入や殺陣の要素を取り入れたダンス、メイン歌唱以外のメンバーがコーラスを入れる贅沢なサウンドにも大満足。また3Dモデルの進化もすさまじく、メタリックパーツ、ビジューの輝き、パールやラメの質感の違い、更には布地の材質差まではっきりと感じ取れる。怪盗衣装へのプロジェクションマッピングを用いた動きのある意匠投影もお見事としか言いようがなく、ライブ構成のみならず技術的にも挑戦的な作品となっていたであろうことは想像に難くない。
これまでの、映画の観客をスクリーンの中のライブ会場に引きずり込むような『うた☆プリ』ライブ映画作品とは異なる造りである今作、公開当初賛否がくっきり分かれたのは事実である。が、しかし敢えてこの“映画の外側にいるファンへと語り掛ける禁忌”に挑戦した彼らに、またそういった複雑な造りにしてまで長年のファンへの愛の返歌としてこのライブを作り上げた彼らに、限りない賞賛を送りたい。
公開2週目以降は地域別のMCパートが追加されるとのことで、これらからも進化を続ける予測不能なQUARTET NIGHTのライブツアーからはますます目が離せない。『期間限定』グループであったQUARTET NIGHTのこれまでとこれからがすべて詰まったライブ、そして新たな始まりの旅を見届けたいと思う。
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