「目撃したのはユートピアではなくナイトメア」劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ TABOO NIGHT XXXX 無遠さんの映画レビュー(感想・評価)

0.5目撃したのはユートピアではなくナイトメア

2025年5月10日
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鑑賞方法:映画館

キングダム、スタツアに続く劇場版うたの☆プリンスさまっ♪三作目となった今作。キングダムで「全編ライブ映画」という新境地を切り開き、スタツアはキングダムでの反省点・改善点を技術構成共にテコ入れして一級品のエンターテインメントへと昇華された。さてこの映画では一体どんな到達点を見せてくれるのかと期待に胸を膨らませていたが、失望した。
問題点は多々ある。何から書けばいいかわからなくなるほどに。我々は「ライブ」を観に劇場に足を運んだというのに下手な小芝居から始まり、素晴らしいパフォーマンスが始まっても挿入される語りが余韻と疾走感を阻害する。衣装に関しては、好みの問題になるかもしれないが、私は全く好きではない。あんなものを着せられているアイドルに同情する(けれど衣装デザイナーを責める気にはなれない、理由は後述する)。歌は聞き取れない上にコーレスはガヤの如くやかましく、振り付けやファンサも地味だ。カメラワークも「何故そこを、その角度から抜いた?」と疑問に思うばかりで、アイドルの表情も固い。そしてライブを彩る演出は総じてダサい。
一体、何故、どうしてと上映終了後も私の頭には疑問符ばかりが浮かぶ。前作、前々作を観終わった時は真っ先に「楽しかった!」「すごいものを観た!」と興奮に飛び跳ねていたのに、今作を観て心動かされるものは何もなかった。あるとすれば失望だけだ。
映画が始まる前から予兆はあった。劇中歌CDのジャケットは素人が描いたのかと絶句するほどにクオリティが低くく、スタツアにあった前日譚アニメ及びアニメにちなんだ大掛かりなコラボもない。けれどそういった不安を、映画で、圧倒的なパフォーマンスで吹き飛ばしてくれると信じていた。まさかこうも大胆に裏切ってくるとは想像だにしなかった。
上で「衣装デザイナーを責める気にはなれない」と書いたが、この方は前作スタツアにおいて最高の衣装を仕立てていた。CG担当の方々も前々作からうたプリに関わっており、仕事それ自体にケチは一切ない。出力された形が最悪であっただけで。であれば誰が悪かったのか? 制作の指揮をとり、作品の方向性を決めた監督だろう。
作品を預かっている身にも関わらず、肥大した自己顕示欲をちらつかせる低俗な輩とは前々から思っていたが、一体この作品のどこに、それほどまでの自信があったのか直接話を聞きたい気分だ。観客が観たいと望んでいた純粋なエンターテインメントも、「このアイドルならこうする」という深い考察もなく、スクリーンに映し出されるのは監督がやりたかったであろう混沌とした落書きばかり。この監督の自己満足に時間と金銭を奪われた怒りと、うたプリというコンテンツに彼女の名前が刻まれた絶望、そして今後発表があると予想される四作目にこれが関わるかもしれないという恐怖。本当にどうしてくれようかと。
今の私が望むことはただ一つ。このレビューを読んで、一人でも多くの人がこの映画を鑑賞する気力を失い、別の映画にお金を払う。「この映画は失敗作である」と世間にもファンにも製作陣にも証明される。それだけだ。

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無遠
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