「老婆心ながら、手前味噌もほどほどになさったほうが。。。」無名 Haihaiさんの映画レビュー(感想・評価)
老婆心ながら、手前味噌もほどほどになさったほうが。。。
※2024.5.9追記
『無名』というタイトルに ”Hidden Blade” という英訳がつけられている。
仕込み刀、が近い翻訳になるだろうか。
トニー・レオン(日本による傀儡の汪兆銘側スパイ・フー)
ワン・イーボー(フーの部下)
さすがのトップアクター、
アクションシーンも含め熱演が光った。
あと加えるなら、
森博之(陸軍将校・渡部)がスクリーン上で強い存在感を放つ。
中国製スパイ映画なので、どう転んだとしても、どんな窮地に追い込まれようが100%!共産党側が勝者になる前提で見ている。
「安心してください。分かってますよ!」
なのだ(笑)
共産党って、すごいだろ? アタマ良いだろ?
日本人って、残忍な上に、◯鹿だよね?
という要素は、
戦前戦中の中国大陸を舞台にした映画に必要条件なのだろうが、いい加減、辟易する。
「大ドンデン返し」も「意外性」もない。
ラストに大仰なカミングアウトシーンがあるのだが、不要だと言い切れる。
「スパイノワール」と宣伝しているが、なにが ”ノワール” なのか意味がわからなかった。
◆途中でシーンが細かく切り替わり、時系列で行ったり来たりを繰り返す。
つまり、タネ明かしをしながらストーリーは進んでいく。それ自体は、「親切系スパイ映画(笑)」によく用いられる手法なので、不満はない。
◆映像や音楽(料亭シーンでの「さくらさくら」変奏曲風BGMは◎)も良し。
◆効果音は緊張感を表現できていた。
ただ何より大切なストーリーが…。
現代中国における勧善懲悪の価値観のみで脚本が書かれているので、日本人の私が見ても鼻白むだけ、ハラハラもドキドキもしない残念なスパイ映画になっている。
極めつけは、
8月9日、ソ連の突然の条約破り(対日参戦、満州侵入)により、精強を誇った関東軍があっという間に瓦解するのだが、本作では、そのすべてが中国共産党スパイの手柄になっている。
つまり、関東軍の大雑把な分担図を入手した功績で、ソ連は破竹の進撃をしたと。
ありえませんね(絶句)。。。
終戦直前の関東軍は、
歴戦の主力師団(師団番号1ケタ〜2ケタ)を南方や本土防衛に引き抜かれて、急造の名ばかり師団(師団番号3ケタ)ばかりになっており、既に「張り子の虎」以下に成り下がっていたことは、誰もが知る常識。
多少の自慢は気にしないが、度が過ぎるとイタイ感じがする。
主要な登場人物(作品内の良い人や強い人)は、全員が共産党員だ。
共産党のプロパガンダと割り切って見るしかない。
老婆心ながら、手前味噌もほどほどになさったほうが。。。
中国の人は本作を見て、スカッとするのだろうか?
気になった私は、まだ見てないとウソついて(笑)、
在日中国人の知り合いにメールで聞いたところ、
「最悪な映画、見る必要ない」
と返事が来ましたとさ。