「無意識に潜む差別意識はないか?」貴公子 Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)
無意識に潜む差別意識はないか?
フィリピンに住む韓国人の父とフィリピン人の母の間に生まれた混血(コピノ)であるマルコを主人公に据えた作品。
韓国ノワールらしくキツめの暴力アクション・シーンも少なくない一方で、場合によってはイ・ビョンホンが『ターミネーター5』で演じたT-1000を彷彿させるかのような動きを含めた謎の男「貴公子」のコミカルさ、そしてマルコの出自にも関わるもの悲しさ等も多重的に描かれ、最後の30分くらいまでなぜマルコがこんな目に遭っているのか分からないミステリー要素も相まって、エンターテイメント作品としてよく仕上がっている。
『パスト ライブス/再会 』 でも韓国で生まれ育った韓国人とコリアン・アメリカ人の価値観の差などが描かれていたが、ここでも「コピノ」(=コリアン・フィリピーノ)という名称をわざわざ付けて純血との差を際立たせている辺りのメンタリティは日韓で本当によく似ていると思う。(冒頭で「混血」ということばを選んだのは意図的。)
「アメラジアン」の問題や、「純ジャパ」か否かを気にする人々など、殊更の差別主義者でなくとも、実は多くの人々が無意識のうちに線引きをしていることが少なくなく、それ故にこの問題は根深い。
コメントする