「スタントマンたちにサムズアップ!」フォールガイ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
スタントマンたちにサムズアップ!
エンタメ映画に必要不可欠なものと言えば…?
人気スター? たっぷりの予算とスケール? VFX? ストーリーやメッセージ?
それらもだけど、もう一つ。
スタント。
見せ場となるアクション・シーンで、スタントマンたちが身体を張ってこそ作品は盛り上がり、見る我々もエキサイティングする。
本作はそんなスタントマンを主人公に。これぞ!とでも言うべきTHEハリウッド・エンタメであり、それがスタントマンたちへのラブレターになっている。
人気アクション・スター、トム(クルーズじゃないよ)のスタントマンを務めているコルト。
身体を張ったスタントは業界でも評判高く、映画監督を目指す恋人ジョディとの仲も良好で、順風満帆。
ところが、ある映画の撮影中に事故に遭い、大怪我。ジョディに別れも告げず、映画界を去ってしまう…。
一年後。レストランの駐車場で働くしがない日々を送っていたコルトの元に、旧知のプロデューサーのゲイルから誘いが。
ジョディが映画監督デビューする事になり、スタントマンを探している。ジョディたっての頼みで、コルトに。
ジョディとの再会と復縁期待で久し振りの撮影に参加するコルトだったが…。
ブランクやあの事故の事が頭を過るものの、見事派手なスタントをこなす。身体は鈍っていなかった。
ジョディも喜んでくれる…と思ったら、“新人スタント”がコルトと知っておかんむり。と言うか、コルトの参加すら知っておらず…。
しかし、他にいいスタントマンはおらず、ジョディは渋々…。
アレ、何か話が違う…?
ゲイルを問い詰めると…。
ジョディの監督デビュー作を成功させたいのは本当。
が、今、撮影がピンチに。と言うのも…、
主演のトムが突然失踪。
コルトはトムが戻ってくるまでの代役と、ゲイルからトム探しを依頼され…。
エンタメ要素をこれでもか!と詰め込み。
アクション。
スタントマンが主人公なので、ド派手なアクションや危険なスタントをたっぷりと。
車の横転“キャノンロール”。これまで最多だった『007/カジノ・ロワイヤル』の七回転を超える八回転半し、ギネス記録更新!
街中を大型車が暴走。コルトはしがみついて“サーフィン”しながらチェイス!
ボート・チェイスや火だるまや降下ダイブなど、ライアン・ゴズリングが身体を張ったアクションを披露。
本作のライアンのスタントマンは4人。各々がシーンやスキルによって担当している。
圧巻は、ヘリからの大ダイブ(タイトルの由来の“フォールガイ”)と、カー大ジャンプ! スタントマンたちのプロ技の賜物。
サスペンス/ミステリー。
スタントマンが人探し。急遽の探偵…? 消えた映画スター。自宅では何者かに待ち伏せ奇襲、宿泊していたホテルでは浴室に氷漬けの死体…! トムではなかったが、トムの現スタントマン。しかもその死体すら忽然と消え…。周囲にヤクの売人や謎の追跡者。トムは何かの事件に巻き込まれたのか、それとも…? さらに、コルトは濡れ衣を着せられ指名手配に…。
窮地をスタントマンならではの身体能力とノウハウで突破していくのが面白い。
コメディ。
陽気なコルト。勝ち気なジョディ。コメディリリーフなコルトの旧知のアクション監督のダン。ワンマンなゲイル。俺様なトム。芸達者なキャストたちによるキャラの色付け明確なやり取り。
未練たらたらのコルトと許せないジョディ。自分を捨てた事を、映画の設定説明と絡めてねちねち演出。監督、撮影中です。公私混同は…。
コルトとジョディの分割画面トークやコルトとダンの映画愛トークなども楽しい。“ユニコーン”にはウケた。
映画愛。
映画業界が舞台なだけあって、映画愛たっぷり。『ロッキー』『ワイルド・スピード』『ラスト・オブ・モヒカン』などの台詞の引用、コルトの窮地を『逃亡者』に例え。コルトとジョディの関係を『ノッティングヒルの恋人』『プリティ・ウーマン』に例えて。
他にも有名映画タイトルや役者の名前がちらほら。ワンちゃんの名前も。
“スタント賞”が無いアカデミー賞にチクリ皮肉。これには全く同感。スタント賞の設置を!
でも一番の映画愛オマージュは、劇中映画『メタルストーム』。創作かと思いきや、何と実際にある映画だという…!
ラブストーリー。
コルトとジョディの関係は本作の中軸でもある。
かつては愛し合っていたが、険悪に…。復縁など無理…? が、撮影する中で徐々に関係修復。これも王道だが、作品にはぴったり。
撮影もトム探しも恋も無事“クランクアップ”出来るのか…?
ライアンとエミリー・ブラントのケミストリー。
スタント出身のデヴィッド・リーチ監督のエンタメ手腕。
カラオケも熱唱。既存楽曲の使われ方も巧い。
撮影はトラブル続出。
トム探しに進展。まさかの真相と思わぬグルとコルトのあの事故も…。陰謀にハメられた…!
その悪事を暴く。方法は、映画の撮影と危険なスタントで。
そして、コルトとジョディの復縁。
それぞれが相乗効果。
多少強引でご都合主義もあるが、望んだ通りのハッピーエンド。
『メタルストーム』も新たなプロデューサーとアノ人(!)主演で晴れて完成。見てみたいぞ!
これぞハリウッド!これぞエンタメ!
今年の全米サマーシーズンの幕開けを期待されながら、いまいち振るわなかったのが不思議なくらい。
映画とスタントマンに愛を込めて。
EDはジャッキー映画みたい。
スタントマン主人公の本作だが、これの日本バージョンが時代劇の斬られ役の今話題のあの映画かもしれない。
スタントマンたちの合図。
見終わった後、こちらも“サムズアップ”したくなる。