「白黒版こそディレクターズカット版なのだと思います 1947年からのダイレクトなメッセージと能登大震災」ゴジラ-1.0/C あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
白黒版こそディレクターズカット版なのだと思います 1947年からのダイレクトなメッセージと能登大震災
ゴジラ -1.0 /c
2024年1月12日公開
観て良かった
心からそう思います
動員数を稼ぐために来場者特典をあの手この手を駆使するようなやり口とは全く違います
むしろこの白黒版こそが、監督が本当はこちらを正式版として公開したかったのではなかったのかと思わせるほどのものです
単にグレースケールに変換して白黒にしただけの代物では無いことが観始めてすぐ判るはずです
あちらかに手を沢山加えています
もちろん元の素材はカラー版です
追加カットもなにもありません
しかし見れば分かるはずです
その元の映像素材をできるかぎり白黒フィルムで撮影したかのようなエフェクトが様々に駆使されています
それもたった一つのフィルターで変換したものでなく、シーン毎、カット毎様々にいろいろなフィルターとエフェクトを使い分けてあるのです
最初の東宝マークからしてそうです
正式なカラーのマークがまず映ります
そして白黒に変わるのですが、ここですでに単なる白黒変換では無いと判りやすいようにフィルム様のエフェクトが強くかけられています
つまりボケやにじみがコマ毎に生じさせているのです
もしかしたらこれは単に1954年版を流用したものかも知れませんが……
このように場面ごとの映像内容に応じて相応しい白黒への画作りをこだわりをもって施されているのです
映像スタッフが適当にこなした仕事ではないと思います
監督が細かく指示をだしてカラー版と平行して作業したのではないかと思わせるほどのものです
自分にはこの白黒版こそが、ゴジラ-1.0 のディレクターカットなのではないかと思いました
監督の強いこだわりがひしひしと伝わってくるのです
監督が本当に目指した映像はこの白黒版だったのだと
なぜ白黒版なのでしょうか?
単に白黒映画への憧れ?
1947年が舞台だから?
それもあるかと思います
でも本当は他に目的があったのだと思います
それは2024年の現代へ、1947年からダイレクトにゴジラ-1.0のメッセージを送りたい
カラー版では、2024年から1947年を振り返る思考の一手間が加わってしまい
メッセージが2024年→1947年→2024年という流れの中で弱まってしまっていないか?
1947年→2024年に直接メッセージ を届けようとしたのだと思うのです
白黒版の本作はまるで記録映画のような映像に仕上がっているシーンやカットが数多くあります
これ見よがしなフィルムの傷こそ再現はされませんが、当時の白黒映画のようなにじみやぼけ、階調の幅の狭さ、逆にシーンによっては美しい白黒映画全盛期のような豊かな階調表現を施して1947年の映像そのままを観ているかのような錯覚を起こさせる様に作られてあるのです
1947年の日本の姿はそのまま2024年につながっているのだとメッセージを伝えているのです
1947年のまま変わっていないままだと
2024年元旦
能登大震災
今もなお数多くの被災者を救おうと懸命の救援が行われています
自衛隊もまた出動して救援の主力となって日夜作業を続けておられます
そして南海トラフ地震はあと十年かそこらで確実に起こるといわれています
能登大震災もその前触れなのかもしれません
ゴジラが本当にやってくるかも知れないのです
時間はあまり残されていないように思うのです
能登大震災で犠牲になった多くの方々
今もなお困難にあっている被災者の方々
その何百倍もの規模で超広範囲に、今テレビで映っていることが起こる
まして台湾有事になったら?
それをわかっていながら私たちはまだ敷島のように逃げ回っているようです
戦争がまだ終わって無い人々
戦争するくらいなら殺されよう!なんて繁華街でビラをまいてアジ演説を繰り返す人々がいます
人殺し集団の自衛隊は帰れ!と叫ぶ人達です
このような考えの人達はいつからいるのでしょうか?
それは1947年です
日本国新憲法は1947年に施行されたのです
1947年の日本から送られてきたメッセージとは何でしょう?
軍事を放棄して、戦うことすら出来ない日本
しかし命をかけて守りたいものはある
いくら逃げ回っていてもゴジラはやってくるのだと
話しあおうにも理屈もなにもつうじない相手はいるのだと
法律の根拠も怪しい軍隊ではない軍隊のような戦う組織をつくるしかないのだ
米国も自国の都合で助けてはくれないこともあるのだと
本作は1947年からダイレクトに2024年にこのメッセージを送ってきているのです
白黒版はそのメッセージがカラー版よりも、より強く明確に伝わってくるのです
まして私たちはウクライナがどうなったのかを目撃してきているのです
敷島!零戦に乗って20ミリで撃ってくれ!
そう言われているような気がしてならないのです
敷島!と肩を強く揺すられているのです
敷島とは、日本列島の別の呼び名なのです
そして本作を見終わった時
監督は私たちにこう聞いてきています
「浩さん、あなたの戦争は終わりましたか?」と
モノクロ版では人物の顔にもシミや滲んだような痕があってリアルでした。「敷島」という名称、引っかかってましたが、日本のことなんですね。映画の中の敷島の戦争は終わった。でも敷島という名を持つ国は戦争を敗戦という形で経験したのに、国家も政治も政府も教育も私達の意識も何も変わっていない