「天使に戻りたがっている可愛い悪魔は、変わることのできない悪魔だったのかもしれません」ラブリセット 30日後、離婚します Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
天使に戻りたがっている可愛い悪魔は、変わることのできない悪魔だったのかもしれません
2024.4.4 字幕 MOVIX京都
2023年の韓国映画(119分、G)
離婚調停が済んだ夫婦が事故によって記憶喪失になる様子を描いたラブコメ映画
監督はナム・デジュン
脚本はパン・ギチョル&ナム・デジュン
原題は『30일』で「30日」、英題は『Love Reset』で「愛のやり直し」という意味
物語の舞台は、韓国のソウル
苦難の道のりで司法試験に合格したジョンヨル(カン・ハヌル)は、映画プロデューサーの妻・ナラ(チョン・ミンソ)と「映画のような結婚」を果たしたものの、性格の不一致他、多くの理由で結婚生活が維持できないほどになっていた
そこで二人は協議離婚へと踏み切り、家庭裁判所にて、それぞれの主張をぶちまけることになった
離婚調停委員も離婚にOKを出すものの、法的に30日後でないと離婚はできないと言われてしまう
あと30日の我慢だと思っていたが、その帰り道に二人は事故に巻き込まれてしまう
救急病院に運ばれた二人が目覚めた時には「二人とも」記憶を失ってしまっていたのである
二人の結婚は貧富の差があって反対が多かったが、その結婚生活における嫁姑問題であるとか、司法試験になかなか合格しなかったために「ヒモ状態」になっていたことなどから鬱積が積もりに積もっていた
そこで、二人の両親は「離婚する夫婦である」ということを肝に銘じさせ、30日間を無事に乗り切ろうと考える
だが、記憶を取り戻すためには「以前と同じ生活を続けた方が良い」というチェン医師(チョン・ノミン)のアドバイスもあり、ナラの母ホベ(チョ・ミンス)は、ナラの妹ナミ(ファン・セイン)を監視役として一緒に住まわせることを決めるのである
映画は、記憶がなくなれば悪夢のような結婚生活は消え、元の恋愛状態に戻ってしまうのではないか、という疑念があり、それを阻止しようと考えるのだが、周囲の努力も虚しく、二人の距離は接近してしまう
元々の離婚の原因となっているのが、夫婦格差で、そこから波及するストレスが、お互いの愛情を覆い隠していた
相手の行動の意図がわかることによって、過去の見方が変わり、そのそも熱烈なタイプであったお互いは、好きにならずにはいられない
物語は、ある時点でジョンヨルの記憶が戻り、ナラは戻らないまま終わりを告げているように見える
だが、実際にはナラの方が随分先に記憶を取り戻していて(ひょっとしたら喪失すらしていないかも)、彼女自身が結婚生活をリセットしたいと考えていた
ジョンヨルの言葉遣いが変わった瞬間にナラは記憶が戻ったことに気づいているのだが、彼が標準語を話している記憶がないはずなのに、その違いがわかるのは、そういう意味があるのだと思う
一応は「標準語で話すのは変」と家族に言われて、喪失中の話し方がおかしいのはわかっているが、元の話し方に気づく速度が速すぎたように思う
標準語で話しているかどうかに疑問を持つよりも前に、一言二言で話し方が戻っていると自信を持って言えるのは、そういうカラクリがあるのかなと感じた
いずれにせよ、軽快でポップなラブロマンスで、二転三転するシナリオもとても面白い
性格も作り込まれていて、「つい」のビンタも仕掛けのひとつのように思える
たとえ離婚が成立しても、もう一回再婚すれば良いのだが、その際にもう一度家族を巻き込んで説得するのは大変だろう
離婚届を出さなかったのはナラの方だったので、90日のことを知っていて、それを利用しようと考えていたのかなと思った
それを考えると、ナラは母親の血をしっかりと引き継いでいる策士だったと言えるのだろう