「呪われた家族は誰の呪いだったのか。」アイアンクロー ヤマッチさんの映画レビュー(感想・評価)
呪われた家族は誰の呪いだったのか。
アイアンクローという得意技でトップレスラーへ上り詰めたフリッツ・フォン・エリック。「最強のレスラーになって成功する。誰にも頼らず、自分の力で頂点に立つ」と家族を説き伏せ成功をおさめます。ここからフリッツは家族の中での絶対的な存在となります。プロレスラーの話ではありますが、この絶対的な父親ということによる洗脳されていく家族というドラマでもあります。父親は自分がなれなかったNWA世界チャンピオンを息子がなることだけが望みです。息子達の苦悩や試練の時には「お前たちの問題」として一切取り合うことはありません。母親も同じようにかかわろうとはしません。このことが息子達を苦しめ戸惑っていきます。洗脳されている息子達は父親に逆らうことなく、ただプロレスラーとして最強を目指していきます。一つの目標に向けて一心不乱に突き進むという生き方は諸刃の剣であり、挫折や閉ざされた時の気持ちの切換えや立ち直るすべを持っていないということもあります。気持ちの持ち直せなかった四男ケリー、五男マイケルは打ちのめされ自殺してしまいます。呪われた家族の原因は父親がかけた呪いではないかと思います。苦悩しつづけた次男ケビンはその父親の教えから逆らう事で晩年は家族に恵まれて幸せな老後を過ごすことになります。どこの家族でも我が家のマイルールというのがあります。それが逸脱した時にこの家族のような不幸が訪れる事を教えてくれているように思いました。
この作品の凄さは、実在の人物を演じるわけですから、役者は徹底的な肉体改造をして完璧に再現しているところです。主人公以外にも実在のレスラー、ブルーザーブロディ、リックフレアー、ハリーレイス等を完全再現しています。試合シーンもレスラーに監修を受けて迫力あるシーンとなっているところです。プロレスファンとしても納得いく出来栄えと思いました。