「“呪い”の映画。」アイアンクロー eiga_beginner.comさんの映画レビュー(感想・評価)
“呪い”の映画。
プロレスは好きなので、これは観ねばと映画館を探すも、意外とどこの劇場でも上映しているわけではないようで、周辺にある劇場での上映規模の様子や、実際に観に行った大きな劇場でも小さなスクリーンでの上映しかないことなどからやや嫌な予感がした。
ちなみに、実際に鑑賞した時間帯もあったのかもしれないが、100席あるかないかくらいのスクリーンで観賞者はわずか5名ほどしかいなかった。これはハズレか・・・?
タイトルの通り、アイアンクローという技の存在はもちろん、かつてアイアンクローを必殺技(得意技)として使っていたレスラーがいたことは知っていたけど、知識としてはその程度。
往年のプロレスファンというわけでもなく、あえて事前に情報をチェックせずに観てみた。
“呪われた一族”というだけあってどこまで脚色されているのかはわからないが、これはたしかに“呪われている”とおもってしまう内容だった。そんなことが本当に起こったのか!?と。
映画のスタートからモノクロの演出は良かったとおもう。
ただ、最初の方で一番下?の弟がお腹を下してトイレに行きたいとドアをノックしている中で、シャワーを浴びながら恐らくオ〇ニーしていたとおぼしきあのシーンは一体何を意味していたのか最後までよくわからず。
一番最初に生まれた子は原因は語られていなかったものの、幼くなして既に亡くなっていたことが判明。へぇそうだったんだといった感じ。
途中で4人目の兄弟が実家に帰ってきてそこから4人兄弟がなんだかんだあってプロレスラーとしてリングに上がるのだけれど
●長男の披露宴でトイレで嘔吐する何番目かの弟。
明らかに吐いたものがただのゲ〇ではなく血が混じったような感じに見えた。長男はそれを見て「病院に行け」というも「大丈夫たいしたことはない」と突っぱねる。フラグである。
世界ヘビー級のチャンピオンへの挑戦者の有力候補として、海外で興行をこなしていくなかで実績や名をあげるため日本に行ったのだが、そこで腸だったかが破裂して亡くなってしまう。
マイクアピールがうまい印象。今でいうWWE向きな感じ。
●音楽が好きで友達とバンドを組んだりしていた一番下の弟。
明らかに華奢な体系。
そこからトレーニングを積んだのだろうし、デビュー戦?で実況が「体が仕上がっている」的なことを言うも、「いや、どこがだよ!」というレベルの仕上がり。あそこは笑うシーンだったのか?
そういった体づくりが十分でないことも原因だったのかどうかはわからないが、試合中に放ったドロップキックの受け身をミスったのか、肩を脱臼?そのまま試合終了。
すぐに病院に運ばれて手術を受け成功はしたものの、何かの珍しい病に侵されていたようで、ここでの“明らかに障害を負った力の抜けた表情”というか演技は良かったようにおもった。
その後もリハビリをしてある程度日常生活を送れるまでになったようなのだが、心を病んでしまい何かの薬を大量摂取して家の敷地内で自〇。
●一族悲願の世界ヘビー級のチャンピオンになった何番目かの弟。
チャンピオンベルトを持って自宅に帰ってきて間もなくして酒を飲みノーヘルでバイクに乗って案の定事故を起こす。わかりやすいフラグ回収である。
そのせいで片方の足首から下を欠損。デスクワークでもない激しいプロレスという競技者でこれは選手生命が終わったも同然。ただの自業自得ではある。
しばらくは義足で激痛に耐えながら復帰を目指してトレーニングを続ける中、やがてインターコンチネンタル王者だったかな?になっていて凄い精神力だなとおもった。
ただ、もう一度世界ヘビー級チャンピオンになるんだ!との父からのプレッシャーが原因だったのか、長男に電話で「もうダメだ」的なことを言い、結局お父さんに自らがプレゼントした銃で自〇。そんな気はしていた。
実家に連れて行った彼女とも喧嘩別れでもしたのか、しれっとフェードアウト。
その後、あの世らしき世界で船を漕ぎ、行きつく先には既に亡くなった兄弟たちが彼を出迎える。そこには一番最初に生まれ幼くして亡くなった本当の長男の姿も。そして兄弟4人で抱き合う。
やっとプレッシャーや様々な悩み苦しみから解放されたかのうようにみんなが安らかな笑顔で印象的だった。
この演出は“そうあってほしい”という残された親や長男からの願いでもあったのではないかと。
個人的にこの作品が全体的にダークなので、これはあって良かった演出だともおもった。
●長男。
生まれた子供はせめてこの一族の呪いの犠牲になってほしくないというおもいからなのか、出生届?の際に苗字を別のものにし、これが功を奏したのか、精神的な部分を除いて長男自身にはこれといって大きな不幸はなく(描いていないだけ?)
肉体は圧倒的に一番仕上がっていたのだが、兄弟で生き残ったのが自分だけと一般の人々には想像すらできない絶望を味わったこともあってかレスラーを引退し父が持っていた小さな会場を受け継ぐも倒産寸前の状態で売却の話があったことや、子供たちやこれからのことを考えてお金が必要ということもあり父親に売却のことを話すも当然反対される。
が、結局売却した。あれで良かったとおもう。
最終的に奥さんは3番目の子を身ごもっている様子だった。
●その他。
父も母も兄弟同士の悩みや葛藤に対して「兄弟で話し合って解決しなさい」的なことを言い聞かせていたのだけれど、これがこの家庭の教育方針だったのか?
あまりに介入してなさすぎて親としてもうちょっと道しるべになってあげてもよかったのでは?とおもってしまったのだけれど、基本的に家族がピリピリしたようなシーンはそこまでなく、兄弟はみんな仲が良かった。
父親も厳しくスパルタ的なのを予告編で観たような気がするのだが、そこまででもないように感じた。
エンドロール後には長男のその後のちょっとしたエピソードと、WWEで殿堂入りしたこと。
そしてその後の長男の大家族の実際の集合写真も映し出されていた。
決してプロレスを観たくてみる作品ではなく、実際にプロレスの試合内容としてはチラホラと合間に入ってくるような感じで、当時のプロレスということもあってか派手な飛び技やアクロバティックな動きはない。
メインで描いているテーマではないのでこれは仕方がないとおもう。
今作のテーマは“呪い”ではないかと。
個人的にフレアーは顔が違いすぎてちょっと違和感があった。もう少し鼻の大きさとか似ている俳優はいなかったのだろうか?
あと、細かいこととしては長男を逆ナンして後に妻となる女性が登場したナイトクラブのときの身なりやヘアスタイルが「当時でこんな感じなの?今時っぽいけど?」とおもってしまい少し違和感を感じた。
もう少し古めかしい感じでよかったんじゃないかな?と。それともあの地が当時それだけオシャレの最先端的なところだったのか?
個人的には全編を通してとくに感動するとか、兄弟愛にジーンとくるとか、いわゆる泣ける作品ではなかった。もちろん笑えるようなシーンもない。
ましてやハラハラドキドキといったものもとくになかった。ただこの呪われた一族の物語を“リングサイド”から見ている、そんな作品だった。
とはいえレンタルでもう一度じっくりと見てみようかなとおもった作品でもある。
上映劇場の少なさやお客の入りの悪さなど、少なくとも当初抱えていた不安というハードルは越えてくれたかなと。