劇場公開日 2024年4月5日

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「男らしく生きるという幻想と…悲劇」アイアンクロー たまさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5男らしく生きるという幻想と…悲劇

2024年4月19日
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鑑賞方法:映画館

実話に基づく、というエピグラムから始まる今作。
痛切な痛みと共に胸に迫る傑作。

家族論、ジェンダー論、家父長制、歪んだマチズモ、キリスト教..などの要素を入念にフィルムに刻み込んだプロレスラー一家の物語。
この話が現実にあったということに、まず驚かされる。

古代ギリシャ悲劇から、シェイクスピアの有名な3大悲劇などが根底に横たわる。
なぜ、ギリシャ悲劇やシェイクスピアの物語、また古代の神話などが現代にまで語り継がれ、書物が残り、映像化されるのか。現代の人間が生きる社会における、普遍性があるからだろう。

70年代、80年代のプロレス世界。アイアンクローという技で一世を風靡した父親フリッツフォンエリック。彼の息子たちもまた父親の強烈なプロレス教育によりレスラーの道に。
父の教えを純粋に純真に信じながら…。
しかし強烈なプレッシャーと共に。
息子たちを次々に襲う悲劇...
現実にこんなことがあったのか...
フリッツの息子たち6人のうち、サバイブするのは次男のケビン、弟たちは自ら命を絶ち、または病に倒れる...
次々に若い命を散らしていく。胸につまる。
人生を賭けて闘う、というのはこういうことなのか???

監督ショーンダーキンの言葉から引用するが、この物語は苦しみや悲しみの物語ではない。むしろ、悲しみの欠如、人が自分の苦しみ悲しみから目を逸らした時に、何が起こりうるかを描いている、と。
7、80年代の時代の空気、プロレスシーン、特有の気だるい雰囲気、迫真の闘争場面、俳優のすさまじい肉体...。
改めてプロレスも過酷なものだと痛烈に感じる。
ケビン演じるザックエフロン、肉体改造でプロレスラーを名
演。
監督ショーンダーキンの抑制の効いた演出。

男らしく、または女らしく…現実でも使い古されている言葉だ。
親の夢を子供に託す。
それらが、どれだけの人達を苦しめているのだろうか。
子供たちが喜びを見出せるのなら、それはいいことに違いない。
そんなことにも思いを馳せる。

プロレスに無知な私だが、プロレスに詳しい必要はない。
多くの人に観ていただきたい。

ラスト、彼岸に旅立った子供たちの描写。
胸にせまる。

次男ケビンが選んだ生き方に一筋の光明を見出す。

たま
luna33さんのコメント
2024年5月1日

ボクシングで思い出しました。

「あゝ、荒野」も大好きなんです。ラストの菅田将暉君の表情がたまらなかった。さらに遡れば「あしたのジョー」もあるし「どついたるねん」もあり、
やはり格闘技系は傑作が多いかも知れませんね。

luna33
たまさんのコメント
2024年4月30日

Iuna33さん

共感、コメントありがとうございます🙂
あなたのおっしゃるように、深く刺さってきます。涙がにじみます。
本当のしあわせ、本当の強さ、そして優しさ、を問うてくる映画ですね。
レスラー、自分も大好きな映画です。
おっしゃるようにプロレス、またボクシングなどを描く作品には傑作が多いと思います。
こちらこそよろしくお願いします。

たま
luna33さんのコメント
2024年4月30日

たまさん
フォローありがとうございました。

たまさんの素晴らしいレビューにグッと来ました。
思い出しただけで泣いてしまいそうです(笑)

それにしてもこの作品は本当に刺さりました。
僕の一番深く繊細な部分を揺さぶられたような思いです。
しかも自分でも不思議なんですが、後から思い出した方が
より泣けてしまうのです。

「レスラー」のミッキー・ロークにも泣かされましたが、
プロレスものは傑作が作りやすいのかも知れません。

今後もよろしくお願い致します。

luna33
たまさんのコメント
2024年4月21日

共感、コメントありがとうございます。

そうですね。プロレスという題材を使った家族の物語。
ほんとに…
しあわせとはなんなんでしょうかね。

たま
ゆ~きちさんのコメント
2024年4月21日

共感ありがとうございました。

プロレス映画というより、機能不全家族の悲しい物語でしたね。本当の幸せとは、を考えさせられました。

ゆ~きち