「夢とその先」アイアンクロー サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)
夢とその先
プロレスの頂点を目指すエリック兄弟。栄光を掴むために、必死にもがき、あがき、努力を続けながらも、そんな日々を家族と楽しく過ごしている。誰よりも情熱的でひたむきな彼ら。。。だけど、観客は徐々に気付き始める。
『何か良くないことが起きる』
楽しそうな雰囲気は建前。兄弟の心と身体が悲鳴をあげていくのが見て取れ、全てが壊れてしまう様子が目に浮かんでくる。頂点に立てなかった自身の後悔の念を息子に押し付ける父親と、それが圧力だと思わず父を慕い続ける息子たち。愛のムチ。何のために彼らは戦い続けたのだろう。
息子たちが成長していく中で、衰えるどころか生気を取り戻したように顔に肉の付いた父親と、人生に疲れ果てたかのように酷く窶れた母親。この対極の状況になった夫婦から、この家族の異様さが伝わってくる。実話であることが信じられない。たった1人の力で、ここまで人は狂ってしまう。
エリック家を演じたキャストが全員アカデミー賞級。この冷たい空気感と爆裂ボディから、途中からドキュメンタリーかと錯覚してしまう。やるせない気持ちとどうしようもない怒りから、終盤は震えが止まらなかった。
2024年、最も辛く悲しい物語。伝記映画としては、「オッペンハイマー」をも超越する傑作だと思う。
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