「プロレス版亀田三兄弟と想像してはいけない」アイアンクロー kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
プロレス版亀田三兄弟と想像してはいけない
私が少年時代、男の子は皆プロレスを経験していた。観るだけでなく、技をかけあった。好きじゃない子どもでも、いじめに近い形で技をかけられていたものだ。四の字固めや卍固めコブラツイスト…、本作のタイトルであるアイアンクローも。私も子どものときにやった記憶がある。それくらいメジャーな技ということだ。でもフリッツ・フォン・エリック(本作の父親)の試合を観た記憶はない。マンガのプロレススーパースター列伝で見たということかもしれない。
それくらいプロレスにハマらなかったのに今回観ようと思ったのはザック・エフロンの役作りに驚いたから。予告編で見た彼はプロレスラーそのままだった。実際に本編を観てもその印象は変わらない。なんてすごい俳優になってしまったのだろう。
プロレスがそんなに好きではないから予備知識がほぼゼロの状態で観たが、こんなことが本当に起こるんだという驚きしかなかった。こんなのリアリティがないと修正を求められる脚本だよ。「呪われた一家」と言われるのもわかるし、ケビンにとっては自分にも何かが起こると考えて妻や息子と距離を置こうとする気持ちもわかる。だから、最後のシーンでとてもケビンの未来が明るくなったし、観ているこちらも救われた。この映画の評価はあのラストで爆上がりした感さえある。
正直、親が息子たちを厳しく鍛え上げて世界チャンピオンにしたって話だと、日本では亀田三兄弟を想起してしまう。あれはあれで面白い物語になりそうだが、さすがに本作ほどにはドラマティックにならないだろう。プロレス版の亀田家物語みたいな話なのかと思っている人がいたら全力で否定して諭してあげたい。