「肉体・かっこいい台詞・アクション、引き換えに壊れる心」アイアンクロー 僧ヶ鍬崎さんの映画レビュー(感想・評価)
肉体・かっこいい台詞・アクション、引き換えに壊れる心
・キャストの身体が素晴らしい
メジャー映画でここまで主役の裸体率の高い映画はそうない。まず、この身体を作り半裸のままアクション映画に臨んだザック・エフロンその他キャストをを褒めたたえるべき。エフロンのあの丸い三角筋はそう作れるものではない。
・素晴らしい定点アクション
プロレスは全く詳しくないのだが、途中で出てくる世界チャンプたちの口上はいかにもそれっぽい「強い男」を演出していて、画面の絵と台詞に注力すると知能が下がって楽しくなる。
そこから打ち出される映画ならではのカットとスタントを交えた定点カメラ多めのプロレスショーは、職業強い男という劇中劇ながらほれ込む出来栄えだった。特に兄弟3人がそろってからは2024年第一四半期最高のアクションだった。
身体、台詞、アクション。この段階で5点を出してやれる素晴らしい作品。みんな観ろ、絶対感動するから。
・フォン・エリック家の壊れる心
素晴らしい肉体・台詞回し・観客を魅了するアクションを作る、そのために追い込まれれば人は死ぬ。映画で陽のあたる面が素晴らしいほど、深く濃い陰ができる。
厳しい闘争からの逃避の場になるべき家庭がパフォーマンスと引き換えに心身を苛む場であった時点で、ある意味兄弟の破滅は必然だった。本当に追い込まれる前に、自分の家族を作った兄ケビンだけが生存したのはロジックとして当然である。
毒母と無関心な父というのは邦画でよくある構図だが、毒父と子へ無関心な母というのは新鮮味があってよかった。輝かしい長男の結婚式で久しぶりのセックスに浮かれる老夫婦の陰で、次男が映像描写されずに死ぬのは、この家族のエッセンスとなる素晴らしい場面であった。父を王とみなす母は、その部下がどうなっているかへ血は繋がろうと関心を持つことはないのだ。
共感ありがとうございました。
>厳しい闘争からの逃避の場になるべき家庭がパフォーマンスと引き換えに心身を苛む場であった時点で、ある意味兄弟の破滅は必然だった。
この指摘、はっとしました。そりゃそうですよね。解像度があがりました。ありがとうございました。