劇場公開日 2024年4月5日

「深く強い兄弟の絆が悲劇を一層際立たせる」アイアンクロー ゆみありさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0深く強い兄弟の絆が悲劇を一層際立たせる

2024年4月6日
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鑑賞方法:映画館

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小学生の頃、テレビでプロレスをよく観ていた。ボボ・ブラジル、ブルーノ・サンマルチノ、フレッド・ブラッシー…そして鉄の爪フリッツ・フォン・エリック(ああ懐かしい)。AWAとかWWFとかそんなタイトルもあったけどNWA王者が最も権威があるというのもよく覚えている(小学生の僕は「プロレス&ボクシング」という月刊誌を購読していたからね)。僕はそのうちプロレスを観ることもなくなり、フリッツ・フォン・エリックの子供たちがプロレスラーになり日本のリングにも立っていたなんて知らなかった。そしてこんな悲劇があったなんて。
鍛え上げられたフォン・エリック兄弟たちの肉体は美しく、また、ハリー・レイスやリック・フレアーとフォン・エリック兄弟との死闘など、映像の中の本格的なファイトは素晴らしかった。
この映画を通して最も強く感じたのは兄弟の絆の深さである。まさに裸と裸でお互いを鍛え合い、そして日常的にもリング上でも助け合う。それだけに一人生き残った次男のケビンからすれば愛する弟達が一人一人いなくなっていく(3人も、実際には4人だったらしい)悲しみは想像を絶する。そしてその悲劇は自分の身にも起きるんじゃないかという恐怖もあったのではないだろうか。亡くなった3人のうちの2人の死因は大怪我からの自殺だったので、身近にいたはずの親の精神的な支えがあればと思わずにはいられない。実際にケリーが自らの命を絶った時、ケビンは悲しみと激しい怒り(本当に殺しちゃうんじゃないかと心配した)を父のフリッツに向けている。何かと言えば「兄弟たちで助け合え」と父親も母親も発言していた。特に母親は宗教にのめり込んでいたようで、もう少し何とかならなかったのかとも感じた。信心深いって何なの?と無宗教、無信心の僕は思ってしまうわけです。人間は無力だから自分(親、人間)に助けを求めずに神にすがれってことなの?

ゆみあり