「「家族」という「呪い」に苦しむ兄弟たちの物語」アイアンクロー tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
「家族」という「呪い」に苦しむ兄弟たちの物語
冒頭、ボディビルダーのように体を作り上げたザック・エフロンの姿に目を奪われる。
ただ、父と同じくプロレスラーになった4兄弟が、世界チャンピオンを目指していくその後の展開は、これといった見せ場や盛り上がりもなく、やや退屈させられる。
そもそも、プロレスは、筋書きのないスポーツというよりは、筋書きのあるショービジネスに近く、どこまでが真剣勝負なのかが分からないので、それを描くドラマにも、なかなか没入することが難しい。
このことについては、劇中でも、プロレスに「台本はあるのか?」と恋人が尋ねるシーンがあるのだが、主人公は、はぐらかしたような答えしか返さないので、見ているこちらも釈然としない気持ちになってしまう。
中盤に差し掛かり、兄弟たちが立て続けに不幸に見舞われるようになると、ようやく物語が動き出すのだが、それと同時に、彼らが「呪われた家族」ではなく、「家族によって呪われた」兄弟だということが分かってくる。
少なくとも、弟たちは、プロレスラーにならずに円盤投げや音楽を続けていれば、あのような末路をたどることはなかったはずで、その点、自分が叶えることができなかった世界チャンピオンになるという夢を、息子たちに「押し付けた」父親の罪は重いし、どんな問題でも「兄弟で解決しろ」と責任を回避する両親の姿勢も、「呪い」の一端と言っていいだろう。
その一方で、プロレスでのし上がっていくことよりも、兄弟で一緒にいることに何よりも幸せを感じていた主人公が、多くの子や孫に囲まれて写真に納まっているラストシーンは、家族が「呪い」ではなく「居場所」にもなるということを示していて、心地の良いハッピーエンドだと感じることができた。