アイアンクローのレビュー・感想・評価
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ショーン・ダーキン監督から見たプロレスという天国と地獄
ダーレン・アロノフスキーの『レスラー』は、プロレスの暗黒面にフォーカスしすぎていてあまり好きではないのだが、これはプロレスの暗黒面と喜びや高揚感が背中合わせ、かつ、等価に描かれているのがいい。栄光も没落も幻滅もすべて、プロレスってこうですよ、というよりも、フォン・エリック兄弟の心の旅として描かれている。
実話がベースではあるが、調べれば調べるほど、ショーン・ダーキン監督が実話からつかみだしたひとつの物語であることがわかる。そして、強くあることに囚われた男たちの物語という意味でダーキンの前作『不都合な理想の夫婦』とダイレクトに繋がっているし、洗脳に近い価値観からの脱却ではカルト教団から抜け出した女性の葛藤を描いた『マーサ、あるいはマーシー・メイ』と連なる。つまり、強固な作家性を感じさせる’作品であるともいえる。
作家性といえば、今回は前作に続いて『サウルの息子』の撮影監督と組んでいるいて、美しくも不穏なビジュアルもダーキンのトレードマークとなっている。その中で、死んだ兄弟たちが集うあの世のシーンは不意打ちのような感動で、エモさに惚れ惚れとさせられた。
あと末っ子マイク(現実にはもうひとり弟がいたが)の、バンドのライブシーン。お前、歌じゃ絶対やってけないよ!って思うレベルなのに、兄たちがやるじゃん!ってなってるあの感じ、ほんと優しくて切ない。
予備知識は悪役レスラーの名「鉄の爪フォン・エリック」のみ。それがむしろ良い
子供の頃は毎週のようにテレビでプロレス中継があり、アニメ「タイガーマスク」も人気だったし、昭和のある時期まではプロレスが野球、相撲に次ぐスポーツ分野での国民的娯楽だったように思う。私自身プロレスファンではないが、鉄の爪フォン・エリックという悪役レスラーの名前は憶えていた。本作「アイアンクロー」は、そのように日本でもかつて知られていたフリッツ・フォン・エリックとその息子たちの実話に基づくドラマであり、米国プロレスのファンでもなければそんな一家に起きたことなど知る由もないし、そういった観客こそがこの尋常でない悲劇の連鎖に心が震えるほど驚かされることになる。この話がもし新人脚本家が書いたシナリオだとしたら、「そんな悲劇が家族に立て続けに起きるなんて創作が過ぎてリアリティに欠ける」などと即却下されるレベル。もちろんドキュメンタリーではなく劇映画なので、出来事の細部を少しばかり改変してドラマタイズしてはいるものの、根幹部分は実際にフリッツ家の兄弟レスラーたちに起きたことなのだ。
予備知識少なめで観て驚いてほしいので、筋にはあまり触れたくない。次男ケビン役ザック・エフロンのビルドアップされた体には目を疑い、特殊メイクのボディスーツを着ているのかと一瞬思ったほど。過去作の役で多かったスマートなイケメン好青年のイメージを覚えている人なら、エフロンの肉体改造も驚愕ポイントのひとつだろう。
家父長制や父権主義について。日本では昭和の一時期より前なら当たり前のようにあったものだが、個人の尊重や平等の意識が比較的強いイメージがある米国においても、プロスポーツ一家という事情もあってか父親フリッツと息子たちのような特殊な関係があり、それが悲劇の要因になったことにも深く考えさせられた。
“彼岸”を思わせる想像のシーンがある。それが優しくて美しくて、やるせない気持ちになった。
Get Ready to Be Sad
With no prior knowledge of the family this film chronicles, and little to no interest in wrestling in general, I was surprised that the story here proceeds into an increasingly heartbreaking all-American family tale. The father disclipines his sons to be the best in wrestling, a sport tough on the mind and body as it is. Zac Efron is unrecognizable in muscle and behind a stern quality performance.
最後の呪縛を破る
小さい頃からお前はこうならなければいけないと育てられ、自身もそれを信じていた場合、知らないうちにそのことに囚われてしまう。医者の息子が将来医者になれと言われ頑張ったりするあれだ。
それなりに優秀なはずなのに医大に合格できず絶望したりする。医者にさえなろうとしなければ他に良い道はいくらでもあったはずなのに、ならなければいけないという呪縛。
この作品におけるフォン・エリック家の呪いとは、父フリッツの言う、プロレスラーになれ、チャンピオンになれ、泣くな、である。
父のそんな言葉に兄弟たちは縛られる。プロレスラーにならなければいけない、チャンピオンを目指さなければいけない、と。
そして、その夢が絶たれた時、あるいは強制されていると気付いた時、生きる希望を見失ってしまう。
主人公ケビンは、おそらく兄弟の中で最もプロレスラーになりたかった男だろうし、最もチャンピオンになりたかった男だろう。
しかし残念ながら彼にはその才覚がなかった。それでも努力し続け、あきらめなかった。
ケビンにとって、プロレスラーになれ、チャンピオンになれは、呪いではなく自分が本心でやりたかったことだから。
ある意味で、チャンスすら回ってこないケビンが最も不憫かもしれない。ただ、まだ終わりじゃないという状態がギリギリ彼をとどまらせる。
そして、他の兄弟の無念を次々と肩に乗せていくことになる。それでも、届かない。
いなくなる兄弟の中で一人残ったケビン。
ラストシーンで、ケビンは泣く。そして、自身の息子たちに泣いていいと抱きしめられる。
ケビンに唯一かかっていた呪いともいえる「泣くな」を破り、彼が最も得たかったであろう愛する家族からの抱擁を得る。
その輪の中に父フリッツが入れなかったことは残念であるが、兄弟との再会は非常に涙を誘う。
彼らは誰もが精一杯生きたように見えたから。
そしてついにケビンは、フォン・エリック家の呪いから本当の意味で解放された。
成功だけが心の解放を達成する手段ではないのだ。
アイアンクロー
天国のチャンピオン
最後に彼岸のシーンで5歳で死んだ長男とケリーが抱き合うシーンで涙腺崩壊。エピローグで不幸ばかり続いた次男が幸せな生活を送っていることに安心した。個人的に次男の嫁役パムを演じたリリージェームスが良かった。
素晴らしい。これが映画だ。
ブリーフが似合う
まさしく「呪われた一族」
アイアンクローを必殺技にしていたフリッツ・フォン・エリック。その長男は幼くして亡くなっていたが、ケビン、デビッド、ケリー、マイクの兄弟もプロレスラーになっていく。父は強さで、母は信仰で息子たちを守ろうとする。しかし、デビッドが日本遠征中に急死、さらにケリー、マイクも不幸に見舞われ。
ちょうど兄弟が日本で有名になりつつある時、プロレスを見てました。彼らが病気や怪我で、こんなに不幸な目にあったとは知りませんでした。実際は5ではなく6兄弟だったとのこと、映画に収まりきれない、まさしく「呪われた一族」です。
兄弟皆すごい筋肉で、役者魂をひしひしと感じました。
ブルーザー・ブロディ、ハーリー・レイス、リック・フレアなどは懐かしい名前です。チャボ・ゲレロも懐かしい名前、そのジュニアが出演と監修でした。試合前の段取り確認や、後の控室での普通のやり取りも描いていたのが良いです。当時ブロディの入場曲はレッド・ツェッペリンの移民の歌でしたが、本編で流れなかったのが残念。
実話だからこそのストーリー
こんなにも不幸がつづくの、創作だったらジャンル変わってホラー映画になってしまうので実話だからこそという感じ。
あとファンタジーでもみえみえのお涙ちょうだい系でもないこういう映画で天国シーンが出てくるは珍しいなと思った。
5歳で亡くなった兄弟が当時のままの姿で出てきたのが生きてる人間が考えた天国という感じでオモロかった。
悲劇のプロレス一家
家族の幸せって何だろう
プロレスラーの一家としての苦悩や最強の父親からのプレッシャーが子供達を追い詰めていったとも見れますが、逆にだからこそ兄弟の絆が深まっていったんだと思います。
友達であり仕事仲間でもあり、一番の理解者であった兄弟が一人またひとりと亡くなっていくのは辛すぎます。
両親も相当辛かったはず。
でも、天国で兄弟達が再び仲良くしている場面に救われました。
家族の幸せって何なんだろうと深く考えさせられる映画でした。
自分の夢を子どもに押しつけてはいけない!
子どもは親を喜ばせたいと思うものだから… 夢を語るのはいいと思う。でも、選択するのは子ども自身でなければならない。「鉄の爪」はプロレスの技として、名前は知っていたけれど、その使い手のことはよく知らなかったし、その家族のことはもちろんだ。実話ベースの話ということだが、実際はもう一人息子がいるのだという。みんながみんな、プロレスに進ませるのではなく、ミュージシャンや陸上の投擲競技を続ける選択肢も残してよかったのではないか。一番罪深いのは父親で、次々に問題が起きても、我関せずで向き合おうとしなかった。兄弟で解決しろと言っていた。母親もその次に残念だ。よく家族の全体像が見えていた次男ケビンが相談しようとしても、受けつけなかった。たとえ、夫に意見するのは無理だとしても、理解していることを子どもたちに伝えることができていたら、違った結果になっていたかもしれない。とても悲しいし、悔しい。誰か、彼らを救うことはできなかったのだろうか。ケビンの家族だけが救いになっている。演じる、ザック・エフロンは肉体改造もすさまじく、一見では彼だとわからないほどだ。実際のプロレス・シーンも自分で演じたらしい。そのがんばりぶりに頭が下がる。とにかく、事実は小説より奇なりということわざがあるが、本当に圧倒される内容だった。
アイアンファミリー
私ゃ音楽にも疎ければスポーツにも疎い。
“フォン・エリック”の名はプロレスファンなら知らぬ者はいないのであろうが、私はあまりよく…。
が、“アイアンクロー”は何となく知っていた。相手のこめかみに指を押し立てる技。
その“アイアンクロー”の異名を持つレジェンドプロレスラー、フリッツ・フォン・エリック。
父と同じくプロレスの世界に入った息子たち。
ただの有名プロレス父子の伝記ではなく、家族のドラマとしての要素が強く、“呪われし一族”と呼ばれる所以の家族を襲った悲劇が衝撃でもあった…。
次男ケビン、三男デビット、四男ケリー、五男マイク。
長男ジャックはまだ幼い頃に亡くなり、男兄弟4人、スパルタ父親に鍛えられ、プロレスデビュー。(実際には六男もいるらしいが、作品の都合上五男と併合という形でカットされたとか…)
日本で言うならボクシングの亀田ファミリーみたいなものか。
マイクパフォーマンスが得意な三男、五輪陸上代表だった四男、ミュージシャンを目指していた五男。性格も経歴もバラバラ。実質主役の次男ケビンは優しく、家族思い。
父親にしごかれ、時にプロレスとの向き合いに悩みながらも、妻となる女性との出会い(ベリーキュート! リリー・ジェームズ)、信仰深い母親の支え、兄弟たちとタッグを組み、70年代~80年代のプロレス人気を牽引していくが…。
ザック・エフロンの新境地!
驚異の肉体改造。元々マッチョメンだが、本物に全く見劣りしないレスラー体型。
もはや誰も彼の事をアイドルとは呼ばないだろう。キャリアベスト。堂々たる演技巧者になった。
そんなエフロンら演者たちの肉体から繰り出される圧巻のファイト!
本作はずっと映画化の企画あったらしいが、悲劇的な内容とプロレスシーンの再現の難しさから難航したという。
本物さながら…いや、演者たちにとっては本物なのだ。肉体と肉体のぶつかり合い、ダイナミックな技…。プロレスファンは感涙、でなくともエキサイティング!
実際の兄弟そっくりのヘアスタイルやファッション。監督のこだわりが闘魂だ。
だが、それら以上に胸迫ったのが、家族を襲った悲劇のドラマ。
私はこれを知らなかった。
三男デビットが、日本でのプロレスツアー中に急死。原因は腸の破裂。身体を崩していた描写もあった。
家族は悲しみに暮れるが、これは始まりに過ぎなかった。
不慮の事故で片足を失った四男ケリー。
試合で後遺症を患った五男マイク。
相次いで…。
幼くして亡くなった長男ジャックもだ。
悲劇と不幸と死に見舞われる…。
同じ喪服を着たくない。腹を痛めて産んだ息子たちを相次いで亡くした母親の心痛…。
だが、父親は違う。こんな時でも闘え。
そのプレッシャー。言うまでもなく、“呪い”の張本人。
痛み抑えや身体を奮わす為に使ったのは…。
自業自得でもあり、残酷過ぎる末路でもあり…。
殿堂入りし、伝説的なプロレス一家と称えられる一方、呪われし一族。
そのまま終わったら後味悪かったが、最後に救いがあった。
先に行った兄弟たちが“ある場所”で再会。そこには、長男も…。
残されたケビン。が、決して一人ではない。子供たちが、家族が、いる。
ケビンの子供たちもプロレスラーへ。
その血が身体を流れ、闘魂が燃える。
鉄の家族=アイアンファミリー! 家族でリングに立ち続けるーーー。
ザック・エフロンはいつのまに
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