「違和感と嫌悪感」六人の嘘つきな大学生 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
違和感と嫌悪感
青春ものとしてはまずまずの作品ながら、設定的な違和感と嫌悪感で入り込めず。
まず、直前で選考方法を変えたり、面接中にトラブルがあっても止めなかったりするような無責任な企業に、君たちは本当に入社したいのかね?というのが強烈にあり。
また、採用の権限は大きな会社ほど人事部にはないという、企業の在り方への取材と考察が足りず、犯人の動機が馬鹿なガキが癇癪起こした八つ当たりにしか見えないのがニントモカントモ…。
ちなみに、役員会など経営者側が大枠の採用人数と人的適正や方向性を決め、各部の執行役員の思惑に左右された上で内定・採用が決められ、人事部は単なる日程調整と連絡と、手続きが主の業務のはず。
だから、犯人の目的が、会社の採用試験の在り方に異を唱えることなら、人事部を狙うのは無駄。
それに、まずはそこの会社を批判するのならば、そこの採用試験を受けず、ライバル会社に入るか、起業するかして、その会社を叩き潰すのが肝要な策のはずなのだが……
というあたりで受け付けなかった。
また、原作を読んでなかったら楽しめただろうなぁ、ということも。
原作小説だと、視覚情報がないことを利用し、説明を省くことでセリフの意味・ニュアンスをミスリードさせる工夫があったのですが……
たとえば、波多野や八代が優先席に座ってしまう傍若無人な人間に思えるように描いておきながら、実は主人公・嶌衣織が過去の交通事故で足に障害があるので気を遣って座るのを促す行動とセリフだったとか。
映画だとそれらテクニックが使えないから、どうするかと思っていたら……
オール省いちゃってまして、びっくり。
嶌は健康で普通に歩けるし。
映画としてまとめるには仕方ないし、及第点とは思うのですが、「人の多面性」「一つの行動や発言は、受け取る側次第で別の意味に変質して広まりやすいが、本人の真意は別にある」という作品のもつテーマが薄くなってしまい、浜辺美波の美しさだけが突出した仕上がりになってしまったような。