「私的感じた、この映画の問題点とは?」六人の嘘つきな大学生 komagire23さんの映画レビュー(感想・評価)
私的感じた、この映画の問題点とは?
(完全ネタバレなので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
結論から言うと、今作は私的には問題点ある映画だと思われました。
映画の序盤は、主人公・嶌衣織(浜辺美波さん)らの6人の最終選考前のグループディスカッション準備期間の描写が、6人がそれぞれの大学にいそうなキャラでリアリティと魅力が溢れて描かれていて、面白く観ていました。
ところが最終選考の場面になって、急に映画のリアリティを無くした感想を持ちました。
それは、最初の告発の封筒を開封した元高校野球部の袴田亮(西垣匠さん)が、野球部のイジメ自殺に関与していたとの新聞記事を見て、突然テンションを上げた反応を見せるところから始まっていたと思われました。
そして、リアリティを無くしたと感じた要因は、袴田亮に関するイジメ自殺の新聞記事に対して、矢代つばさ(山下美月さん)がさらに感情的に反応するなど、最終選考での6人全員の違和感ある感情的な反応にあったと思われました。
この最終選考での6人の感情的なやり取りに関しては、映画の最終盤で波多野祥吾(赤楚衛二さん)の録音音声によって明かされる、(封筒の中身が明らかにされなかった主人公・嶌衣織以外の)5人全員が実は善人であったという内容からしても、(結局は主人公・嶌衣織も善人だったことを含めて)それぞれ6人はそこまで最終選考で感情的になる必要はなかったと思われました。
つまり結局は、(主人公・嶌衣織含めた)6人は全員善人だったのです。
なので6人は最終選考でも封筒の暴露に対して、もう少し落ち着いてそれぞれ対応していた方が自然だと思われました。
そして、それでも周りの不信感で全員が次第に追い詰められる展開演出にした方が良かったとは思われました。
個人的には、これは佐藤祐市 監督の演出の問題が大きいように、僭越ながら思われました。
(さらに言えば、人事課が封筒に関与していなければ、最終選考を見ている人事課の人間が、封筒に関してもめている6人を、途中で止めないのは不自然だと思われました。
なので封筒を用意した犯人は、【6人の裏の情報を封筒の中身で伝えるので、最終選考で封筒に関しての話し合いを止めないで欲しい】など、事前に匿名でも人事課に根回しが必要だったようには思われました。)
さらにもう一段、今作に問題があると思われたのが、結局は6人は善人だったという着地によって、この映画が就職活動よりさらに外の世界に出られていないように感じた所です。
6人の暴露の封筒を用意した犯人は九賀蒼太(佐野勇斗さん)だと最後に分かります。
そして、九賀蒼太の中絶問題は、相手の女性も中絶に同意していた話で、相手の女性の両親が激怒して仕方なく女性から離れたのが2人が別れた理由であって、九賀は悪くなかったと、最後に波多野祥吾の音声テープによって明らかにされます。
すると映画では、九賀蒼太の中絶問題はそこで解決され、世間一般の中絶問題への踏み込みはそこで終わってしまっているのです。
同様に、森久保公彦(倉悠貴さん)の詐欺の話も、森久保公彦も騙されていて、逆に森久保公彦は詐欺を大学に通報して仲間を助けたのであって、森久保公彦は悪くなかったと、最後に明らかにされます。
なので映画では、世間一般の詐欺の問題についての踏み込みはそこで終わってしまっています。
それは、袴田亮は実はイジメ被害者を救っていて自殺したのは加害者側で、袴田亮悪くなかったとの話も、矢代つばさは母を助けるためにキャバクラで働いていて、矢代つばさは悪くなかったとの話も、同様です。
つまり、世間一般のイジメや、学生の貧困の問題、についての踏み込みも、それ以上されないままで映画は終わってしまっています。
つまり、6人は結局は善人でしたとの着地によって、6人の問題から派生した世間一般の同様の問題についての映画の中での深さと広がりある踏み込みは、失われてしまっているのです。
結論としては、主要登場人物6人のそれぞれの深い深層と、6人の問題から派生する一般的な現在の日本社会の問題への、2方向への関心が、この映画はそこまで深くないと感じさせたから、今作が食い足りなく思われているのだと、僭越ながら思われました。
浜辺美波さんや赤楚衛二さんなど今作の主要6人の俳優陣は、序盤の演技を見ても優れた役者陣だとやはり思われました。
それだけに、佐藤祐市 監督など制作側が、それぞれの人物や、そこから派生する一般的な社会問題の背景に、もっと深い関心を持って6人に要求していれば、必ず応えてくれた俳優たちだとも感じられました。
今作はストーリー展開の外枠は面白さある題材だとも思われただけに、惜しい作品になっていると、僭越ながら思われました。