「胸躍る映画でした。」侍タイムスリッパー Kommie3さんの映画レビュー(感想・評価)
胸躍る映画でした。
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映画館で映画を観る回数が激減していた昨今、単館から全国に拡がったという謳い文句に釣られて観に行き、満足して帰ってきました。
本作はいくつかの対比や暗示が上手く紡がれて物語を作っている感想です。
同じ殺陣を演じる役者として精進を重ね、片や人気の時期にスターとなってスポットライトを浴びる仇役に対し、斜陽の時期に大部屋俳優としてスポットライトの陰の立場にいる主人公。それは奇しくも、等しく信じる士道を歩んでいるのに光と陰になってしまった長州と会津に重ねられている。また最後の立ち合いのために型をつかっている最中、殺陣として上段の刃を天に向けていた構えを、刃を寝かせた構えに直す。それは様式美である殺陣から、相手を斬る為の剣術(斬る意志)に戻った事を暗示させる。さらに共に時代劇を愛し盛り上げようとしているはずなのに、武士の意地が故に本身を使い、殺陣でなく立ち合いをしてしまう。所々に散りばめられた主人公のヒロインへの淡い思慕や周囲の人達の温かさにほだされながら、それら全てを捨ててもとどめられぬ武士の意地。
これらのいくつもの段落がバラバラにならずきちんとした物語となっていて見応えがありました。
また最後の決闘のシーンは本当の武士同士の命をかけた斬り合いの様な気迫がかんじられ、肘掛けを掴んでしまう程でした。
唯一物足りなく思ってしまったのは、主人公が現代を認識し、殺陣に生きようとするまでの部分が薄く感じたところ。今を受け入れざるを得ないと納得する部分をもう少し厚くしても良かったのかな〜と。(長さの問題や、描きたい部分ではなかったとかテンポが悪くなるとか理由があったのかもしれませんが。)
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