「熱く泣ける、そして意外と小ボケもいっぱい」侍タイムスリッパー カツベン二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
熱く泣ける、そして意外と小ボケもいっぱい
侍が現代に現れるというストーリーは藤岡弘、の「SFソードキル」以来?何度も目にした手垢のついたプロットだが、本作は他とコンセプトや展開がしっかりと差別化されており、既視感なく新鮮に見ることができた。
ただ、この映画については「カメラを止めるな」同様、安田淳一監督の映像製作への情熱と、それに賛同し総製作費2600万円というほぼ手弁当状態で協力参画した役者陣、制作スタッフ、撮影所等をどう考えるかで評価は違ってくると思っている。
自分自身は撮影所や殺陣師らの時代劇への熱や思いがこれ以上ないくらいしっかりと受け止めることはできたことからも、この背景込みで評価させていただきたいと思ってる。
※監督曰く役者さん達にはちゃんとしたギャラを支払っているとのことでした
主演の山口馬木也は自分的にはほぼ時代劇の人で、失礼だが松平健の若い版くらいに思っていた程度だったが、間違いなく武士の所作、佇まいを見せ、淡い恋心を抱くシーン含め今まで見たどの侍役よりも侍だった。
初めて斬られた時に今までの事を走馬灯の様に思い出すシーンは泣きそうになった。
会津藩は徳川家と一連托生の立ち位置で、白虎隊はじめ幕末には最も悲劇的な末路を辿った藩だが、それだけに大政奉還後百数十年経った現代の姿を高坂新左衛門が目の当たりにした時の気持ちは想像に難くない。
ましてや「最後の武士」(ラストサムライ?)で会津藩の悲劇をより詳細に描写するような台本が追加されたのをみれば自分の無力さにどうして良いかわからなくなるというのは無理もない。
そんな高坂の心情と監督の思いやこの映画の舞台裏事情とが掛け合わさり、最後の殺陣は鬼気迫る迫力のあるものに昇華できたのだと思う。(最初二人が微動だにしなかったのは「椿三十郎」のオマージュか?)
次作「ゾンビ四谷怪談」の上映に期待。