ラストマイルのレビュー・感想・評価
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「ブラック」を生み出すのは私たちカスタマー
予告から期待を高めていた本作。公開初日は都合で観に行けず、2日目に鑑賞してきました。期待どおりめっちゃおもしろかったです。
ストーリーは、ブラックフライデーを目前に控えたある日、世界規模の通販サイト「DAILY FAST」から届いた荷物が相次いで爆発する事件が発生し、同社が関東に置く巨大物流倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナが、警察からの要請にもかかわらず、企業理念と売上を理由に出荷停止を拒む中、犯行の裏側にある物流業界の闇がしだいに明らかになっていくというもの。
予告で見知った内容での展開ではあるものの、爆弾犯の特定や動機、配送品へ混入させる方法等をめぐるサスペンス展開で、序盤からずっと目が離せません。特に冒頭から続けざまに描かれる爆発シーンがどれもリアルで、日常よく利用する宅配荷物に爆弾が仕掛けられ、持ち込まれた室内で爆発するだけに、生々しい恐怖を感じます。
そんな恐怖が罪もない人々の身近に迫っているというのに、通販会社、配送業者ともに責任を押し付け合う姿が、なんとも醜くあさましいです。さらにそれは、そこで働く者同士での責任の擦り合い、立場の弱い者へのしわ寄せと続きます。どこの業界にも存在する、力関係と慣例によって蔓延る闇と腐敗を感じます。とりわけ今回は物流業界を舞台としていることが興味深く、物流の重要性とそれを支える構造上の問題に鋭く切り込んでいるように思います。
ここへ、人気テレビドラマ「MIU404」「アンナチュラル」のメンバーたちを巧みに絡ませる、シリーズファンへのサービスが心憎いです。せっかくの豪華キャストなので、もっと活躍の場が欲しいところではありますが、こういったシェアード・ユニバース展開は、観ているだけでわくわくします。
また、配送ドライバー親子やシングルマザー親子を登場させ、苦しい生活状況の中、歯を食いしばって頑張る姿を描いている点も見逃せません。中でも、火野&宇野のショウヘイ親子が、昼食時間も削り、身を粉にして働きながら支え合う姿は、切なく沁みるものがあります。と同時に、本作に説得力を持たせていると感じます。
これだけの内容に加え、冒頭のアパートでの爆破や洗濯機などの伏線を回収しながら、最後はエレナの変容と業界にさす希望の光を感じさせる見事な締めくくり。いささか盛り込みすぎにも感じますが、それを破綻なくまとめ上げている脚本が秀逸です。
鑑賞後にスマホを見ると、偶然にも宅配便業者からの不在通知。申し訳ない気持ちでいっぱいになり、すぐに帰宅しました。私たちの暮らしの利便性は、誰かの頑張りで支えられていることにただただ感謝です。しかし、互いの首を絞め合うことのないように、過剰なサービスを求めすぎないことも持続可能社会のために大切なことではないかと感じます。もう少し寛容な世の中になるといいのにと感じる今日この頃です。
主演は満島ひかりさんで、エレナの心情の変化が伝わる好演が光ります。脇を固めるのは、岡田将生さん、阿部サダヲさん、ディーン・フジオカさん、大倉孝二さん、酒向芳さん、石原さとみさん、井浦新さん、市川実日子さん、窪田正孝さん、松重豊さん、薬師丸ひろ子さん、竜星涼さん、綾野剛さん、星野源さん、麻生久美子さん、橋下じゅんさんらで、豪華キャストが顔を並べます。ちなみにシークレットキャストが、かつて宅配便を扱ったドラマの主演だったのも何かの縁を感じます。
手堅いが物足りなさも
「深夜バイト」
良くも悪くもスケールがテレビ的
正直テレビドラマはまったく見ないので野木亜紀子という人をそれほど認識して観てることはない。しかしキャストがやたら豪華だ。派手な予告編の割には意外に地味な印象。
たまたま上映前にAmazonプライムのドラマなのか恋愛バラエティなのかよくわからない予告が入っているのは何かのサービスか知らないけれど、Amazon的会社からの配送物が爆発するところからはじまって12個の無差別爆弾の爆発阻止と犯人探しがはじまる。
物流、というのはいいところに目をつけたと思うのだけど、予想より地味だと思ったのは、あのスケールある空間と人とマシンがあんまり活かされてなかったな、と。センター長とその部下と運送会社のトップと、ドライバー、そしてお客様、上から下へ荷物の流れと共にドラマはカットバックされてゆくが、肝心の倉庫内と従業員や捜査員のモブシーンとかやりとりが少ないからか、あまり盛り上がらない。意味不明で更に下手くそな雨のシーンがあるが何か大幅にカットしたのだろうか。
盛り上がらないといえばその豪華さの一端である捜査関係者が豪華関係者であることが顧客第一主義には則ってるけど物語を加速させることはなかった。本来派手さを出すのなら、やはり捜査側(警察とマスコミ)を群れで突っ込めばいいのに、そしてテレビ局映画なのにそうはしないのも不思議だった。
結構カットしてるのか?といま思う。
ドローンをケレン味程度にバンバン使ってテンポ良く見せるが、やはり爆発と爆発物サスペンス的な見せ方、特に中盤とクライマックスが弱いのか(未遂のシーン)
それと、犯人が、その巨大物流組織への復讐だったにせよ、無差別殺人はさすがにやり過ぎな気がする。さすがに犯人の自爆は納得だけど、市民の命を巻き込む犯罪な割には、主人公たちも警察もちょっと軽い気がした。
テレビドラマとしてテレビや飛行機の中で観てたら面白いような気もするが、どつしても映画館で観るものとすると、同じ脚本家の「カラオケ行こう」のほうが映画的で良かったが、やっぱり「罪の声」はダメだったのを思い出した。
わけわからんくらい引き込まれた濃密な2時間
「まだ頭の中が混乱してる…色んなことが起こりすぎて…」一緒に観に行った人の第一声。同感。とてつもない情報量と濃密なストーリーに圧倒されてしまったのです。
はじめに、「アンナチュラル」も「MIU404」も未鑑賞でしたが全く問題ありませんでした。それもあって、ただただ豪華キャスト陣に震えます。え?あの人をちょい役で終わらせるの?やべぇな、これwww両作のファンの方の反応も気になりますが、レビューを見る限り概ね好評のようです。
私も物流関係に従事しているので、この作品に込められた問題提起は凄く刺さりました。特に末端の配送業者の抱える過労、人員不足、タイムスケジュール、単価の安さ等の課題を描いていたのは嬉しくもあり、胸が苦しくなりました。それと、大手運送会社の局長(阿部サダヲ)のセリフは思わず笑ってしまいそうになるほどリアルでした。
この作品、とにかく脚本、演出が凄い!観客を飽きさせないとかそういう次元ではなく、本当にわけわからんくらい引き込まれました。疾走するストーリー、圧倒的テンポの良さ、矢継ぎ早に起こる事件、追われる対応、途切れない緊張感……もう、とにかく濃密な2時間。さらに、主人公の考察や事件の概要など丁寧に描かれているので、置いてけぼりを食らうこともありませんでした。
ポチれば翌日には物が届く。その裏でいかに多くの人達が動いているか。「俺達は奇跡を起こしているんだ」。作中、ドライバーが放ったさりげないセリフ。あぁ、いかん、レビュー書きながら泣けてきた。ドライバーの皆さん含め物流関係のお仕事をされてる方々、本当にありがとうございます。(自分に言ってるみたいでキモいなw)
圧倒的スケールで描かれたサスペンス映画。「アンナチュラル」も「MIU404」も知らなくてもOK!物流という身近なテーマはきっと万人に刺さるはず。是非映画館で観てほしい超おすすめの傑作です!
野木さんをはじめ、トリプルタッグの復活作で大傑作✨️
まず、映画としては展開が早く上映中常に面白かった。ひとつ言わせてもらうと(志麻さん風に笑)もっと長い時間この世界観に浸りたかった。
そして404コンビまた見れて良かった!!
明日からまた、仕事にやりがい見出して頑張ろう!!って思えるそんな作品です。
(高校生だから仕事してないけど)
リピ確定です笑
この4年間背負ってきたものを全て忘れられるような、それくらい
インスピレーション感じる作品(あずにとっては)
この作品を忘れることはないんだろうなぁと思います。
そしてここからは本当にネタバレになりますが、MIU時代に虚偽通報で出てきた前田くんが陣馬さんとコンビを組んでたところでほんとに嬉しかった✨️志摩さんも伊吹の扱いにさらになれててこの4年間いいコンビであり続けたんだろうなぁって感じました。4機捜が臨時部隊ですぐに無くなるかもしれないってところから始まったのにまた見れて嬉しい。何度でも見たい映画でした。
頑張るおじさま達に癒された
優生思想的な人が多い世の中でピラミッド構造となっているショッピングサイトと物流業界。顧客満足なんてものは後付で売上重視の社会をまざまざと見せ付ける1本。
重厚なシリアスとコミカルな会話劇が塩梅よくエンタメとして落とし込まれており久々心躍る傑作でした。
自分が壊れていくことに気付かない社訓12箇条のマジックは身近に感じる要素もあり、満島エレナの強烈なキャラクターに疑心暗鬼になりつつも、最後は彼等を応援していました。
岡田将生さんは珍しく温度感のない役なのでそれもまた新鮮で目で感情を魅せる演技力は流石。
アンナチュラルとMIU404、そしてラストマイルの三作で出演の大倉さんが演じる毛利さんは力の抜け方と観察力のある優秀さのギャップにヤラれます。今回天然が炸裂した刈谷刑事(酒向さん)と抜群の相性でした。
そして末端の委託ドライバー佐野親子のワチャワチャも最上級に可愛すぎる。
鑑賞後に米津さんの主題歌「がらくた」を聴くと暖かさと切なさが倍増し感涙に浸りました。
映像が洋画に劣る邦画はショボさを補う何かが必要。さて、本作は・・
製作費が圧倒的に洋画より少ない邦画は映像面のショボさを補う何かがないと観客動員は望めないと思っています(脚本の良さとか動員力の有る出演者とか)
まず、映像は洋画に比べると悲しくなるほどショボいです。
あと、本作は、ちょうど実社会で問題になっている物流業界の影を扱っています。
(社会に不可欠・縁の下の力持ちと言葉では持ち上げられることがあっても、実際に待遇を改善されることはほとんどなくやりがい搾取でコキ使われるキツイ業界だそうです)
話としては面白かったですし見て損にはならない作品だと思いました。
ただ、テレビドラマとちょっとコラボしていて出演陣は豪華でしたが、話の進行の点では特段の必要性は感じなかった。
まあ、客入りに繋がるので否定することではないのでしょうけど・・
繋がる
推理要素は捻りもあり様々な疑いがあるも、案外ストレートな展開で起承転結があり見やすかった。また、普段何気なく利用しているECサイト、ネットショッピングをテーマに、ハラハラドキドキを味わえるのは、とても身近で入り込みやすい作品でした。代理代行や下請け、配送業者など、様々なしがらみや配送料の安さといった社会問題に触れつつも、この作品のストーリー性を貫いている点が素晴らしかった。また、Customer-centricのお客様中心主義についても、捉え方次第でお客様以外の会社主義という見方もできるということが、この作品からの学びでした。
真面目な日本人ドライバー
真面目で刀を抜けない日本人。主人公の女性はそれが淡く出された女性で、海外らしさがありながらも、出自が日本であることを拭えないようなキャラクターでした。
物語としては大手物流会社から始まりますが、大手から顧客まで繋がる作品ですので、物流会社だけではなくその他の会社でも当てはまる内容です。
野木亜紀子さんが書かれたアンナチュラルでは『幸せのはちみつケーキ』の回がありましたが、それと似たものをよく感じます。(異なる点としては、死因が意図的か意図的じゃないかのところで、これがそれぞれの物語のメッセージ性に繋がります。)
事件があったことにより一度はベルトコンベアーも止まりましたが、解決すれば元に戻ります。
元に戻った際、退職した主人公とは違って、会社に残る人間たちは何を思うのか、0という文字を見た人間は自身もそうならないようにとまた気を負ってしまい負の連鎖になるのか。
主人公が八木に言った「嫌なら止めちゃえばいい」というセリフは、止めるだけではなく、辞めるともかかっていたのでしょう。
己を犠牲にした山崎にも直接言いたくなるような、もしくは今後こうなってしまうかもしれない方々へのメッセージとして強く感じます。
飛び降り自殺は、失敗してしまい植物状態になる事例も多くあり、自殺の成功ではなく失敗を描くことで、よりリアルさが出ます。
エンドロールには相談センターの綴りもあり、閉鎖的になっている日本で働いている私たちへのメッセージでもあったと思います。
気丈に振る舞う彼等も、心の奥や頭の中では山崎の思考と似たものがあるかもしれません。
権力を持つこと自体は悪なのではなく、それをどう行使するのかによってそれぞれ物の見方が変わります。
主人公は度々海外と日本を比べるセリフを吐きますが、委託ドライバーのキャラクターを見て思い出したのは、SNS上でよく共有される海外と日本ドライバーの荷物の置き方の対比動画です。
海外ではドライバーが荷物を玄関に向かって投げたり、踏んでしまうも謝りもなく去ってしまう光景があり、それを防ぐために玄関にドリンクや食べ物を置いて改善されたという動画が拡散されました。
日本のドライバーはドリンクや食べ物が玄関に置かれなくとも商品を丁寧に届けるのがほとんどです。
この日本人の真面目な部分が映画ではよく映し出され、それと伴い委託ドライバーは雨が降る中傘もささず、荷物が落ちないようにバランスを取りながらもインターホンを押す部分がありました。
必要のない自己犠牲の元に成り立つ仕事は真面目な日本人がよく映し出され、またドライバーとしてプライドのある人間像として受け取りました。
1時間ある休憩を30分にし俊敏な配送をすることは、傘もささず雨に濡れる中荷物を抱えることは、仕事を止めるため自ら飛び降りることは必要なのでしょうか。
必要のない自己犠牲を、自身で認識することが大事なのではないでしょうか。
人の命を犠牲にして成り立つ仕事は、もはや戦争と何ら変わらないのではないでしょうか。
序盤で張られた伏線がよく回収されていたと感じます。
ストーリーの舞台を複数当てたことで、異なる立場、経歴の人たちが移されるため、観客がストーリーの社会背景や空間をうまく認識できる作品でした。
社会問題と、言葉遊びと、きゅるんと。
面白いが詰めすぎ。
ドラマでも一話完結させているので、2時間映画でも収められるか?と思っていましたが、あれは難しい。あと1時間くらい尺があっても良かったのでは?というくらいテンポが早い。
ドラマで見慣れているので、犯人はすぐにわかったが、トリックなどはもう一度細かく見直さないと味わえないと感じた。
あと、ドラマと世界線は一緒なだけであって、続編ではありません。勘違いしている人もいるみたいですが、その後みんな元気でやってるよ!程度でストーリーには絡んでません。
気分的には、ポチる事に罪悪感を覚えつつ、これからもポチる自分にモヤモヤ。
ハッピーハッピーな映画では決してないですね。
しかし、こんな事件が起きたら、本国の方の株価には影響出たんでしょうかね?
あと、爆弾の爆発の大きさが不一致というレビューも見られますが、素人おっさんの作った、ダイハード3と同じものですから、相当適当な物と推察はします。
しかし、ツッコミどころが多いので、何回か見ないとわからないな。
メディカル便も病院側は想定していて、卸は複数業者を使っているはず。カテーテルなら業者が新幹線使っても届けるものでは?と思いました。
丁度、朝ドラで盛り上がっている岡田さん。
最後の最後で苦悩を引き継いでしまい、ドライブマイカーに引き続き苦悩の似合う美青年ポジションに落ち着きそうですね。
何がほしい?全部ほしい
マジックワード「全てはお客様のために」
本作でも野木亜紀子節は炸裂!ということはもちろんエンタメ性だけでなく、社会を映し出すメッセージ性も兼ね備えている。構成含め伏線も張っているけど、演出がやはりTVでクドいから、良し悪しはさておき分かりやすさはある。
大好きな満島さん、迷いながら演じたということだったが舟渡エレナ役でもその演技力・存在感(引き)そしてノリノリな魅力が弾け走り回っていた!結論ファーストで思ったことはハキハキズバズバ言うような行動力のある=仕事のできるザ・アメリカ帰りな感じをモノにしていた。人気出てからも様々な作品・役柄で確かに叩き上げてきては、日本映画界において確固たる地位を築いている感すらある岡田将生も安定。
『アンナチュラル』&『MIU404』組は、正直本当にカメオくらいかと思っていたから、実際に見てみて当初思ったよりはまだ出てくるなと感じた。当たり前だけど映画やドラマ、フィクションの登場人物たちの人生は、その前から始まっていてその後も続いてく。だから、変わりもする。そこの間は本来ないはずなのに、「いや〜みんな変わってないなぁ」なんて思ったりも。某M○Uの影響で、「何でもかんでも"ユニバース"しすぎ!もういいから!!」って食傷気味お腹いっぱいな気持ちになっていたけど、本作のシェアードユニバースは良しとしよう。やっぱり嬉しいしね!
No Limit
Customer-centric
Various View Points
2.7m/s → ◎
70kg
ロッカーのメッセージ
(感想、役者さんの本名で失礼します)
『2.7m/s→0(70kg)』
▶︎『ベルトコンベアを止めます』
中村倫也▶︎ 疲弊してしまった中村倫也は自死を決めるが、どうせ飛び降りるならベルトコンベアを止めてブラックフライデーを中止にさせよう(社員のためにも、運送会社の為にも)と考える。しかしベルトコンベアも止まらず、ブラックフライデーは続行、自分も死にきれなかった。植物状態になる前の「馬鹿なことしたなぁ…」という呟きには、飛び降りたことへの後悔や飛び降りずとも満島ひかりのように何か交渉で会社を変えることが出来たのではと考えていたのかな…
ディーン▶︎ただの飛び降り自殺だと5年間思っていたがメッセージを理解したことにより、意図的にベルトコンベアの上に落ちたことを知った…生前の中村倫也の仕事ぶりは映像がなかったけど「死んでも止めるな」と言っていたからディーンも意識が「流通を止めないこと>中村倫也の死」
になってしまったのかな…
岡田将生がたった2年でこの倉庫で1番長いこと、会社が潰れ親子での配送業(格安)、社長と満島ひかりに挟まれる阿部サダヲ、全てを解決しても1個20円しか上がらない給料(ただ会社としては160億円の損失)
全てがリアルな現代で見てて苦しくなる部分も多かったです。
伏線回収、ストーリー、現代問題の描き方、アンナチュラルMIU404の使い方、がらくたの歌詞、個人的に全てが満点の展開でした。全てを理解した上でもう1回見たいです(*^^*)
物流業界の苦悩と闇
日本映画素晴らしい!
視聴者への風刺の投げかけと自省の強制が辛い
「過去2作と繋がるノンストップサスペンスエンターテインメント」
この宣伝文句からお出しされたものが社会、ひいては物流を利用する我々視聴者への問題提起なのである。はっきり言って暴力的だ。
シェアードユニバースを謳い、世界観の広がりを謳い、エンタメ性を謳っていながら、不意打ちで「この社会の問題の当事者はあなたです」と投げつけられる。
そもそもこちらはシェアードユニバースの世界観に浸りたいのである。社会問題を訴えたいならそういう映画をそういう広告で作るべきだ。
いきなりコレを投げつけられて、私はしんどく感じてしまったし、しんどいと思うこと自体が「問題に向き合っていない」ということになるんじゃないかと感じてしまっている。
社会問題を訴えるのはいい。作品に活かされているならいい。或いは連ドラの一エピソードであれば、考えさせられる話があった、ということで視聴者も当事者意識を持ちつつしんどい感情にならずに済むかもしれない。でもこの社会風刺は、作品の前に出てきてしまった。これをエンタメとして広告を打つのは、視聴者への不意打ちの暴力だと、私は感じてしまった。風刺や批判に当事者意識を持たせることが目的だとしても、不意打ちでそれを行うのは、卑怯だと思った。
また、予告編で過去作との繋がりを強調した割に要素は薄い。メイン2人に感情移入する時間が無い。これならUDIラボと機捜とデリファスでチーム組んだ方が良かったんじゃないかなと感じた。
過去2作のキャラとコラボして爆弾魔を追う、という触れ込みだったのに対して、過去2作のメインキャラは要所で登場する程度で縦軸の2人とは絡まなかったのが肩透かしに感じる人もいるだろう(ラストマイルのメイン2人の存在感を邪魔しないための采配だと理解してはいるが、毛利さんと刈谷さんとしか絡まないのは寂しい)。
そもそもメイン2人に感情移入できない。
特にエレナはこの非常時に何言ってんだお前、という感じだし、前半の羊運送への当たりがキツイのが見ていてしんどくなる。とはいえこれが物流の闇である、という風刺なのだろうが。この後に彼女自身の話や筧との会話についての告白があるわけだが、これまでの情報開示の上でそれがあったとしてスっと感情移入できるのか、と言う話でもある。少なくとも気持ちよく好感を持てるキャラでは無い。
予告にある五十嵐の「何ができたっていうんだ」という言葉はエレナや五十嵐等の、作中の「強い者」を象徴するセリフであるが、それに説得力を持たせる掘り下げが無かったので、キャラに惹かれないのだ。
孔についてはシンプルな描写不足。孔の人となりはわかるが、バックボーンを「考察したい」と思わせる魅力や描写がない。前職がブラックですり減ってしまったことは説明されるが、それ以上のことは分からないし、興味を抱けない。
逆に佐野親子や八木は共感性の高い役でポジションも分かりやすいので、少ないシーンでも共感が湧く。彼らの何気ないシーンが伏線として活きるところもいい。彼らは実際に「私たち」だからこそ、少ないシーンで共感出来る。
物語のメイン舞台が終始配送センターの倉庫なのもスケールが小さいと感じた。空輸なども含め全国規模でてんやわんやなのかと思ったのでココは明確な肩透かしポイント。とはいえミクロな部分をフィーチャーする選択をしたと考えれば納得のしようもあるが。実際上記のように下請けの羊運送の悲喜こもごもには強く感情移入できた。
UDIラボと機捜のシーンは文句無し。最高だ。これが見たかった。UDIラボと機捜とデリファスでチーム組んで素直に作った方が良かったんじゃないかなと思う。
総じて、あのアンナチュラルやMIU404のような感情をダイレクトに揺さぶられる鑑賞体験や、彼らとのコラボレーションを期待すると肩透かしを食らう。
エンドも良くも悪くも視聴者に委ねる形な上、明確なボスキャラが居ないので2時間のエンタメ作品の鑑賞後の余韻としてはパッとしない。
総じて、映画単体としてはメインキャラに感情移入や共感がしづらく、シェアードユニバースとしても広がりを感じない、微妙な作品だという評価をせざるを得ない。
伏線回収の巧みさや、過去2作のキャラのアフターを楽しむことはできる。
良い出来
それぞれの素材は最高なのに
前提として、同脚本家の他作品や「MIU404」「アンナチュラル」は何度も見返しましたし今回の役者陣も全員好きな方ばかり。
実力派俳優たちの演技はもちろん、舞台の倉庫や爆発現場の映像技術も素晴らしかった。
現実世界の社会階層や過重労働への問題提起についても、物流ではないものの社会インフラ業界に身を置く労働者として強く共感します。
スタッフロール後のお決まり「この物語はフィクションです」のあとに続いた、心の痛みに寄り添うメッセージにも制作側の真摯さが伺えます。
ただ脚本は…。露悪的かと思えば突然弱い立場への共感を示したりスタンスがよく分からず最後まで不安定な印象の主人公。
小粋にしようとして失敗している余計なセリフと事態の深刻さとのアンバランスさにも違和感しかありませんでした。
主人公の不安定さが過重労働の後遺症の現れというならまだ理解はできますが恐らくそうではない。
それぞれの行動の意味がきっとあるはず、と期待しましたがそういったカタルシスもなく。
話題性と出演陣の豪華さだけで評価されると筋の通った脚本のある他の中規模作品が浮かばれないな、と言う気持ちになりました。
繰り返しますが素材は素晴らしいです。これからも野木さん、俳優さんたちの作品を楽しみにしています。
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