ラストマイルのレビュー・感想・評価
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人も物も、安く買い叩かれてなくなったものは二度と戻ってこない
あと10回は見ますので、今後感想どんどん追記していくかもしれません。
最高でした。おもしろすぎました。こんな作品に巡り会えたことに感謝。
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◾️全体感
通販事情と、それにまつわる経営陣と末端の苦労の話。
眼に見える悲惨さは、末端の方がわかりやすいですが、経営陣の誰もが心を病んだり人間として壊れている。いつ歯車がずれて崩壊してもおかしくない。
そんな歯車が壊れたときに、どのように立ち向かうのか…というのを感じました。
事件が起こったときに、誰もがつながっている。
警察も、医者も、検察も。
MIUもアンナチュもちょい役と聞いてたんですけど、MIUとアンナチュがなければ事件解決はしなかった。誰もが傍観者にはなれない。
次はあなたが当事者になるかもしれない。その時、あなたは問題にどう立ち向かう?
前任者たちは壊れたり逃げ出した
山﨑は身体をはって一石を投じた
エレナは改善のために走り回った。
そう、梨本に問いかけて終わったのもとてもよかったです。
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◾️キャラクター感
本当にキャラクターのつくりこみが素晴らしい。
最初は不信感があったエレナだったのに、話をつうじていくうちにどんどん得体がしれなくなっていって、爆弾のシーンでは孔とともにやっとエレナに触れられた気がしました。
エレナは「福岡出身なのに、アメリカ人みたいな人だなあ」という第一印象で「その感覚が間違ってなかった!」と思わせる伏線の回収が最高でした。
ずっと笑顔ではりつめていて、泣く時ですら笑顔。
怖い演出だと思いました
ーー
孔というキャラクターは、今の多くの日本人に近い「自分」像なんじゃないかなって思いました。
ブラック企業で転職。
世の中に希望も渇望もしていない。
上司の指示を仰ぐだけ。
頑張ってはいるけれど、どこか他人事。
それを最後に引っ張られて、最後にロッカーの前で文字をみつめる演出に痺れました。
ーー
警察たちは立場が変わると見える物がちがうなと思いました。
MIUの時は若干横暴だったり頼りなく見えた警察たちも、紙取り出した時痺れました。
離婚した母親の苦労もクローズアップされていいなと思いました。
離婚したことで、生活はさらに困窮する。でも、世の中は「離婚して慰謝料もらって女は楽でいい」みたいな風潮がまだ残っています。
宅配業者だけでなく、そういった現代の問題を訴えかけるのが、このシリーズのすごいところです。気にしなければ、気にならないものです。
細かなところをまだ見切れていないので、今後よりもっと注視していきたいです
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◾️物語について
見事としかいいようがありません。
様々に散りばめられた多くの伏線。それらを丁寧に回収して回収して。
私は映画初見時に「物量倉庫からの転売なら、最初の電話はどうして?」という疑問があって、それをわだかまりとして見ていたら、「最初に死んだのは犯人だった/唯一の死者」ということで関心しました。
翻弄されている末端のトラックの運転手たちの悲壮感のようなものを感じながら。それでも愛情をもって家族愛や隣人愛。他人のために全力で走って命を救った。
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◾️シリーズ比較
MIUもアンナチュも、一部の職業の人間間模様でしたが、ラスマイは全ての人の隣にあるもの・誰もがおこりうることなので、すごく映画向きだったとも思いました。
アンナチュ:間に合わなかった
MIU :間に合った
ラスマイ :今戦っている 印象
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◾️気づいたこと
デリファスの色:ホワイトカラーとブルーカラー
洗濯機のメーカー:ヒノモト=日本
羊急便:スケープゴート
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あと10回は見に行きます
ブラック企業を題材にしたストーリー
ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」を
観てなくても映画鑑賞には支障ない構成に
なっている。
爆破事件解決とブラック企業のストーリーで
ミステリーと社会問題を同時に映している
映画のようだった。
満島ひかり演じるセンター長が仕事に
追い詰められる様子に恐怖を感じた。
題材は凄く良い
人命軽視の感が拭えない主人公が残念
外資の巨大通販サイトの名物特売期間「ブラックフライデー」時の宅配物に連続的に爆発物が仕掛けられる爆弾テロに立ち向かうクライムサスペンス。
満島ひかりさん扮する新任センター長、舟渡エレナの巨大集配センターでの奮闘が最初描かれるんですけど、拒絶反応感じるくらい妙にテンション高く、よくある企業に洗脳されちゃって常識すっとんじゃった管理職みたいです。
で、自社の扱う荷物が原因と思われる死傷者が出るテロが実際起こってもあまりそのことに関心がない態度でさらに違和感アップ!
「配送センター稼働率向上第一、人命第三!」ってくらいの危うい倫理観でテキパキと薄ら笑い浮かべながら突き進んでいきますから、「??・・・この人、主人公設定じゃないのか?」って疑念が浮かびました。
ただ、突き進んでいく際のバックグラウンドミュージックが肯定的(マーチっぽい)な曲調でしたから、この作品自体、狂った倫理観の元に構築されたストーリーなのかも、とも考えられます。
実際は脚本的に仕組まれた演出で、最後はうまいこと纏めるんですが、提示された人命軽視の倫理観はいくら辻褄合わせてもサイコパス感が否めず、結果的に常に共感の枠から外れたお騒がせキャラになってしまったのが大変残念でした。満島ひかりさんはこのぶっとんだキャラをしっかりトレース出来ていて素晴らしいと思いましたけど。
あと、物流環境の諸問題はなかなかその深いところを突いていて芯は外してないと思います。わたし自身、仕事で物流業務してるので深く納得しました。よく取材できてました。しかし、物流24年問題で現実世界では現場はもっと疲弊してると思います。
最後に羊運送の八木さんでしたっけ・・・彼の出した最終的な解決策は素人のソレであちゃーって感じ。感情論じゃ企業は動かないのよって脚本家の方に教えてあげたいですなあ(笑)
では。
謎のメッセージ…?
映画【ラストマイル】鑑賞してまいりました。
テレビドラマ『アンナチュラル』の大ファンでもあったので、各々のドラマの世界観を劇場版として組み合わせての作品かなって勝手な解釈のもとに、先入観を持っての鑑賞になりました。
先入観有りだった私からすると、序盤は少し展開が遅く思われたんですけど…、キャラクターの各々の説明っぽいシーンが大体で終わる頃に、急にストーリー展開が早くなっていき、自身で様々な推理をしている間にストーリー展開も早くなり、結果的に時間を気にする間もなくクライマックスへと導かれる内容かと感じられます。
各々のドラマの世界観を期待し過ぎると、ちょっと違うことになります。ただし、ドラマに出ていたキャラクターは再登場し、世界観は若干再現され、重要なシーンばかりで再現されていますので、そこは期待して大丈夫かと思います。
劇中に出てくる…謎のメッセージ…があるんですが、これもまた、答えが解き明かされる感じではないんですが、また各々の解釈にお任せって感じになっていて、そこが面白い内容かと感じました。私には、キャラクターの可哀想な切ないメッセージに感じられましたが…。
上映時間が気にならない感じの内容でしたので、是非リピーターになれたらって思いました。
追記)無事に100個受け取りされても…
いつもにも増した理不尽
行動を考えよう
150円 20円 2,000円
0
マジックワード
Want
管理/評価/デジタル だらけな世界
DF社から始まるテロップ順
そしてラストマイルの責任感
国からの広報や業界の提言よりも重くダイレクトに
また野木さんチームからの問いを貰った気分
送料は企業負担なので有り 当たり前に無料な訳では無い
メッセージはテロップや影ナレにも込められていた
今作も俳優さん自身の共感を感じてしまう名言多数
20日 岡田さんの「アベンジャーズ」って表現通り
満島さんが予想された通りの「あっ!」な初回
2回目はもう少し落ち着き鑑賞させていただく予定
※2024.08.25 2回目鑑賞後に追記↓
正常性バイアス (確かに身勝手な思い込み!)
だから事件が起きても購買欲は変わらずなのか
そして絶望疲弊し過ぎて壊れてしまった犯人には
そうなる前にMIUチーム誰かと出会って欲しかった
数々の爆破シーンを見ながら浮かんだシーン
『どこで いつなら 止められた?
誰かの未来を良い方にスイッチ出来たかも』
UDIチームには 覚悟の自死を鑑定され…
彼女達の行動を理解することは出来ないけれど
時を戻し どうか思い留まって…と願ってしまった
陰の主役;社名はマジック手書きの軽バンに乗った
ドライバー親子の正義・頼もしさに感動
(階段駆け上がる姿は自身の安全などお構い無し)
日頃は温厚で一切抗わない父の
『貴様ードライバーの命なんだと思ってんだ馬鹿野郎!』
その父の後継者となるであろう寡黙な息子の
決死の救出劇からの『良い製品使ってますね☺️』
本当にラストマイルのヒーロー達でした
安眠まくらも届けてくれてありがとう
始めは株価や収益至上主義だったエレナさん
孔さんや八木さんをも五十嵐イズムで従わせかけて
自身の悲鳴も無視し続け『まだ出来るやれる!』と鼓舞し…
八木さんに『今どこに有るんですか?そのデータは??』とやり込め
『ならば自分で探しに来い』と一喝逆襲され
実際に出向いて以降の 大どんでん返し!
本当に優秀で良い仕事振りでした
パトカーで恐らくは数年振りの安眠姿…
きっともう彼女は壊れない大丈夫! とホッとしました
(最後のロッカーシーンの孔さんの絶望的な表情とは対照的)
そして両ドラマの元高校生達の成長を見せてくれたこと
その後を知れて嬉しくて仕方ないシーンだったなー
鑑賞から数日 私の頭の中でコンベアーの無機質な
カシャッジャッジャッジャッ の音が消えません…
やはりこれからも何が起きても止まらない(止めない)のかな
軽すぎ
死傷者が自社が配達物から出ているのに、茶化しているのか、ふざけているのか、セリフが軽すぎる、刑事なんて個性を出したいのか悪ふざけとしか思えない。派遣された上司が身元がハッキリしないとか、余計な情報いれすぎで犯人追及と爆弾混入の焦点がボケてしまったようです。もっとサスペンスが盛り上げられたのに残念。
社会問題に踏み込んでます+脇役に主演級俳優陣
この映画の脚本、監督、プロデューサーが手がけたドラマ二作品とのシェアードユニバース。
この作品の中には彼らも生きている世界なのでわくわくした。
ティザーで流れるシーンは序盤ですべて終わるので、予想していたすべての要素の向こう側に連れて行かれた。
主演は満島ひかりさん、岡田将生さんを中心としてディーン・フジオカさん、阿部サダヲさん。
本作は物流に焦点があたるので、司法解剖から状況を推察するアンナチュラルや、瞬発力で捜査を支える機動捜査隊のMIU404のメンバーは事件に関わることはあれど直接的に関わらないので、石原さとみさん、井浦新さん、窪田正孝さん、市川実日子さん、綾野剛さん、星野源さん、麻生久美子さんを中心としたメンバーはその世界でやるべきことをやっている。そしてそれは特別なことじゃないので、出てきても過去作を知っている人の発言や仕草なので気になる人はドラマをどうぞ。
ドラマのなかで限定的に出てきた登場人物も出て来ていて、シェアードユニバースなのだと感じた。いかんせん豪華すぎる。
よくありがちなドンデン返しや、犯人の気持ちは描かれない。
犯人の背景や心情を知りたいと思う人はいるかもしれないが、そこは描かれない。
MIU404でもそうだったが、犯人を理解した気になり犯行を仕方ないねとなるのは昨今ネットを中心に問題なりがちなので、描かない方針を続けていてよかった。
社会問題のエンタメ化は健在
この映画単体として面白かった。
『MIU404』で見せた、「最新の社会問題をドラマの核になる事件に取り込む」手法が遺憾なく発揮されていましたよ。
架空の外資企業にしてたけど、完全にモデルはAm●z○n。
まさに私がAm●z○nを使わなくなった理由の数々が目の前に展開して苦笑い。
・ろくに検品せず出荷する配送システムのいい加減さの問題
・社員も使い捨てにし、異様に高いノルマの押し付けで鬱になって退職する人間が後を絶たない問題
・下請け(物流)へのコスト削減の押し付け、無茶な送料叩きの問題
・物流末端である家庭への配送業者(ラストマイル)のなり手不足・人手不足に、過労死問題
・ブラックフライデーで、荷が届けられる保証がないのに注文を取ろうとする問題
・注文しても必要なものは結局必要なタイミングで届かないんでしょ?な問題
・やっと届いたら、中身が壊れてたり不良品だったり、絶対途中で落下させてるでしょ?問題
・不都合を下請けに押し付ける、アメリカ流の傲慢な契約の問題
・結局は株主と自社利益しか考えてない人命軽視な昨今の日米大企業に蔓延する問題
「シェアード・ユニバース」はくすぐり程度で、予備知識なしでも全然大丈夫って程度。
でも「シェアード・ユニバース」のキャラたちは、一人一人がそのプロフェッショナルな技術と信念で真相へとたどり着き、「単なる組織の歯車ではない」「Am●z○nと違う」というアンチテーゼとして描かれていたので、彼らの存在が物語に活きていたと思うから、わかればなお一層楽しめると思う。
野木脚本ファン は(そうでない人も)全員観るべき
「アンナチュラル」第1話の重層的なストーリーに魅了されて以来、彼女の脚本作品はほぼ網羅しています。
そして、これまた大好きな満島ひかりさんが主演、かつ、エレナは彼女に当て書きされたそうなので、この時点ですでに面白くないハズがない。
ネタバレ回避のため公開初日にレイトショーで鑑賞。
お客入りは…ほぼ満席!
アンナチュラル、MIU出演者はカメオ的な出演なのかと思いきや、結構ガッツリと、しかし自然な流れでストーリーに絡まっていました。
「物流の2024年問題」がストーリーの底流にあり、しっかりと社会問題を提起するあたり、単なるエンタメでは終わらせない!という野木さんの強い意思を感じます。
「邦画はサブスクに出てきたら観よう」派、でしたが、この作品は音響のしっかりした映画館での鑑賞をおすすめします。
「2.7m/s→0」ここ込められた思いに鳥肌
野木亜紀子最強説ここに立証!!
まじで!まーじーで…ビビった。笑
観終わって劇場が明るくなった時、気づいたら鳥肌たってたわ🐓
脚本家・野木亜紀子まじで恐るべし!
この人話作るのほんと上手すぎよ←
どうりで関わってるドラマや映画のほとんど好きな訳だ!
緻密に練られた物語、個性的なキャラクター、強く暖かなメッセージ性、etc、、もう最高でしかない👍👍👍
もうI LOVE NOGI❤️ってTシャツ作って毎日着たいぐらい!笑
総理大臣さんよ、官僚さんたちよ、我々の税金で飯食ってるお偉いさんたちよ、この映画を観てくれ!
ムダに真面目で働き者の日本人からのメッセージですよ。
受け取ってくれまじで‼️🎌
※一切の返品は受け付けませんのでー
ドラマ「アンナチュラル」と「MIU404」と繋がるシェアード・ユニバース・ムービーであるが、ドラマ見てなくても全然楽しめるし、ドラマ見てたら尚更楽しめる一本です。
考えるのが止まらない
誰もが被害者にも加害者にもなり得る題材の話。また、映画から感じたものとしては良い意味の怖さを感じました。
考えるのが止まらなくて、常に頭の片隅にその考えが残る感覚。どうすれば山﨑のようにならずに居られるか、どうすればエレナのように気づけるかなどなど。
物流という中々普段の生活で目に見えない舞台で、一体どういうふうにどんな人達が働いているのかを少し垣間見た様な気分になりました。
なんかスッキリしない
いつになく客席が埋まっていた。
前人気が高いのかな。
出演者は豪華。
内容は配送業のブラックな部分を描く告発もの。
それに端を発した、爆弾テロ事件。犯人の動機も会社への復讐?
標的が違わないか。会社の信頼をなくして、経済的損害をあたえるため?
その為に一般市民への無差別テロをするのか。
どこまで真相を知っていたのかわからないが、新センター長の人命を無視した態度には嫌気がさした。
いいのか?それで、後から訴えられるぞ。顧客の安全無視で。
センター長の決裁っていくらまでOKなのかな。X線透視装置を10台ぽっちった?これは必要経費?
後から会社から権限の濫用といわれそう。ていうかクビか。
最後のシークエンスもそれで全体が丸く収まるわけでもあるまい。
150円は安いといえるかな。
犯人はどうやって倉庫内に爆発物を持ち込み、すり替えたのか、驚きの種明かしをぜひ劇場で目撃してください。
『ラストマイル』は、11月のブラックフライデー前夜を発端とする連続爆破事件に立ち向かう、物流センターのリーダーたちをはじめとする人々を描くサスペンス映画です。
テレビドラマ『アンナチュラル』及び『MIU404』の監督・塚原あゆ子と脚本家・野木亜紀子が再タッグを組み、同じスタッフによって製作され、両シリーズと同じ世界線で起きた連続爆破事件の行方が描かれます。
タイトルの「ラストマイル」(ラストワンマイルともいう)とは最終拠点からエンドユーザーへの物流サービスのことを指し、客へ荷物を届ける最後の区間を意味します。
●ストーリー
流通業界最大のイベントのひとつ11月の“ブラックフライデー”の前夜。世界規模のショッピングサイト・DAILYFASTの西武蔵野LC(ロジスティクスセンター)から配送された段ボール箱が爆発する事件が発生。やがて日本中を恐怖に陥れる連続爆破事件へと発展します。西武蔵野LCセンター長に着任したばかりの舟渡エレナ(満島ひかり)は、チームマネージャーの梨本孔(岡田将生)とともに事態の収拾にあたります。
誰が、何のために爆弾を仕掛けたのか?残りの爆弾は幾つで、今どこにあるのか?舞台となるのは、ネット通販を支える巨大倉庫とそこから配達を行う宅配便です。それは、
決して止めることのできない現代社会の生命線といえます。世界に張り巡らされたこの血管を止めずに、いかにして、連続爆破を止めることができるのでしょうか?
すべての謎が解き明かされるとき、この世界の隠された姿が浮かび上がります。
●解説
わたしも派遣社員として、Amazonや楽天で働いた経験があります。その体験からいえば、本作の舞台となる西武蔵野LCが、かなりリアルに実際のオートマチックな最新鋭の倉庫の実態を再現できていることに驚きました。しかも細部にわたるまでDAILYFIRSTのコーポーレートカラーで徹底的にデザインされているのです。
しかもオペレーションまで実際に即しており、5階建ての巨大倉庫なのに社員わずか9人でオペレーションされていて、800人の派遣社員で運営されるという設定は、まさに最近の巨大倉庫の日常そのものでした。朝の派遣社員の出勤シーンから、作業しているところまで、わたしが日常を接する倉庫の実際を細かく再現していたのです。
よくまぁこんな作品に協力する倉庫があったもんだ感心しました。ロケ地はさすがにネット通販関係ではなく、機械工具卸売商社トラスコ中山の物流センター「プラネット埼玉(埼玉県幸手市)」と「プラネット北関東(群馬県伊勢崎市)」がロケ地として使用されているそうです。撮影期間は2022年12月から約2ヶ月間行われ、映画のイメージカラーには、物流センター内の棚や設備にも使われているトラスコ中山のブランドカラー「ブラック×オレンジ」が使用されています。2ヶ月もメーカーの物流拠点が全面撮影協力したことが画期的です。
ネット通販の物流倉庫では、すべての作業工程が数値化されています。ピッキングや梱包、入荷の商品格納などの作業も1時間に何個という目標数値が掲げられて、月間処理数の優秀者と作業効率の悪い者の順位が壁にデカデカと掲示されているのです。とあるアパレルの倉庫では、入職3回目以降で作業効率がノルマ以下の人間には肩たたきが行われてしまい、ヘタすると出入り禁止になってしまうのです。
本作でもデイリーファーストの目玉商品であるデイリーフォン1万台販売と、西武蔵野ロジスティクスセンターの稼働率70%以上の維持が至上命令でした。
ところが警察から、デイリーフォンを受け取った瞬間に箱が爆発し、受け取った顧客が焼死したというショッキングな連絡がエレナの元に舞い込みます。
会社の株価が下がることを防ぐため、やむなくエレナはすべてのデイリーフォンの出荷中止を実行します。出荷中止は現場に混乱を招き、そのしわ寄せは商品配送の60%をデイリーファーストに依存している羊急便が影響を受けることになるのです。
さらにそのしわ寄せのしわ寄せは羊急便と業務委託を結んでいる佐野親子(火野正平・宇野祥平)にも波及していった。特に業務委託されている佐野親子は一つ届けることで150円、受け取ってもらえなければ一銭にもならないという過酷な労働環境だったのです。
このように本作は、普段縁遠く感じる巨大物流倉庫のお話しを、身近な宅配請負業者の目線で描く、作品となっています。今やネット物流にお世話になることが一般的になっているので、とっつきやすい作品でしょう。
それにしても爆弾テロに使われた宅配商品が、いつの間にか爆弾とすり替わっているトリックは出色です。すり替えるタイミングは倉庫内でしか考えられません。けれども倉庫に入るためには厳重な持ち物チエックが待ち受けるのです。犯人はどうやって倉庫内に爆発物を持ち込み、すり替えたのか、驚きの種明かしをぜひ劇場で目撃してください。
●感想
本作で印象に残る点は、数字を元に完璧さを求めすぎるネット通販物流の問題点を描いた作品になったことです。
爆弾テロの警察が当初犯人だと睨んでいた山崎佑は、エレナより前の社員であり、西武蔵野ロジスティクスセンターで「ブラックフライデーが怖い」と言い残して飛び降りして5年間昏睡状態にありました。センター長になって3年目で心身ともに疲弊した上で3か月休職していたのです。
冒頭に登場する山崎佑がロッカーに書き残していた「2.7m/s→0」と「70kg」という文字にはおそらく観客の皆さんも倉庫のスタッフも誰も気に留めることはないでしょう。実は西武蔵野LCで使われているベルトコンベアの速度と耐久重量と同じ数値だったのです。しかし山崎がベルトコンベア目がけて飛び降りてもベルトコンベアは止まりませんでした。センター責任者の「死んでもベルトコンベアを止めるな」と厳命していることとの対比で、2.7m/sが0になることはなかったデイリーファーストの歪な社内常識が明確になる印象的なシーンだったのです。
ネット通販の倉庫には、働くスタッフの健康を喚起し、労働災害を予防するポスターやスローガンがくどいように掲示されています。でもそれは建前であって、先ずは目標数値の達成が大前提にあるのです。その結果本作のように心が折れてしまう人が出てしまうことはきっと現実社会でも起こり得ることでしょう。これについて各社はもっと考えるべきではないでせしょうか。人はモルモットではありません。数値だけで一面的に管理する労務管理は、持続可能な価値感を重視する今日にあって、もっと再考すべきことではないかと思います。
また本作では、ネット通販に経営の半分以上を依存する宅配業者との関係も問題提起しました。DAILYFASTが爆破事件後に一方的に責任を宅配業者に押しつけようとすることに堪忍袋が切れた羊急便は、業界連盟でDAILYFIRSTの集荷を拒否するストライキに入ります。これはドラマ上の虚構ではなく、実際にも配達員によるAmazonの集団訴訟がおこっていて、ネット通販会社が運送業者を安く買い叩いていることが本作でクローズアップしています。運送業者とはいまや国の血管ともいえる今日、末端の宅配請負業者の手間賃が、一個150円から事件後170円に値上げされてもたいした収入アップはつながりません。劇中佐野親子が嘆くのも当然です。トラックドライバーの時間外労働が規制強化されても、ドライバーの人材不足は変わらず、労働環境は簡単には変わらないでしょう。
本作のヒットで、流通・運送業界全体の意識改革のきっかけとなることを願います。
●最後にひと言
『MIU404』の熱心なファンだったわたしは、綾野剛と星野源の名コンビの活躍シーンを期待していました。けれども登場シーンは僅かで、アンナチュラルの不自然死究明研究所共々、カメオ出演に近いものでした。是非次回作では、コンビが大活躍するシーンを期待しています。
ハラハラドキドキする。TVドラマは見てない。
途中で梨本(岡田将生さん)が、山崎のデータを消したのが舟渡エレナ(満島ひかりさん)だと暴き、福岡には舟渡エレナなんてヤツはいないことが判明する。満島ひかり犯人説が出てきて、ああ、それなら爆弾も仕掛けられるし辻褄が合う、満島ひかりが山崎のことからDF社に恨みを抱いての犯行だったのか、そういう展開だったのか、満島ひかりが犯人だったなんてビックリー(違うんだけど)。とスッカリ騙されるが、真相が実は全然違う展開で、またまたビックリ。
爆弾が入った荷物を紛れ込ませる方法に、よく思い付くなと唸ってしまったが、その方法を見つけた舟渡エレナもまた切れ者だ。
爆発した現場の場面が生々しくて、現在のガザやウクライナを思い起こした。テロ爆弾や空爆を気にしなくていい日本の日常が続けばいいなと思った。
物流業界と運送業界の過酷な状況が描かれているところも見どころだと思う。
とにかくに荷物が膨大だ。24時間受付OKのネットショップで、みんな気楽にポチっとするからね。
雨が降ろうが ヤリが降ろうが 人が降ろうが、コンベアは止めるなというブラックな売上至上主義の場面が怖い。
八木(阿部サダヲさん)が社長だと知らずにドナリ声で文句を言ってしまい、実は社長だったと分かってうろたえてしまうところが、阿部サダヲっぽくて面白かった。
DF社からの指示に逆らえない阿部サダヲだったが、最後には頭に来てしまい、満島ひかりに「あんたが来て自分で探せ」と言って寝転んでしまうところが痛快。あとでホントに満島ひかりが来て慌てるところも笑える。
一件落着でボチボチ終わりかなと思っていたら、満島ひかりが12個目の荷物があることに気付いてからがハラハラドキドキだ。
さすがに子供は犠牲にならないと確信していたが、宇野祥平さんはビミョウである。例の洗濯機のお陰でセーフ。ラッキー。
ドラマファン向けのファンムービー?
アンナチュラルとMIU404は自分も好きで、良く出来たドラマシリーズという評価です。
ただ(その2ドラマを知らないと演出意図が理解できない部分もあるのに)その2ドラマの組織やキャストの存在は今回の物語には必須ではありません。
その中途半端というか無理やり詰め込みというかが仇になり、全体としてどうにも焦点のはっきりしない映画に仕上がってます。
物語は先の読めない展開で、舞台や視点も昨今の社会情勢を取り込んでいるためそれなりに楽しめるのですが、独立した映画として売るのはちょっと弱い感じも否めないので、マーケティング的に上記2ドラマ要素をブッ込まざるを得なかったとかでしょうか?
真相はどうあれ、ドラマファンに向けるのであれば上記2ドラマの組織やキャストがより密接に1つの事件に絡むような物語にすべきだと思いますし、今回の物語やキャストを推すのであれば、上記2ドラマの要素は一部キャストのカメオ出演程度にしておくべきだったのではと思いました。
ただ、隣の席の知らない人は上記2ドラマの熱烈なファンだったらしく、上記2ドラマのキャストが出るシーンでは身を乗り出して声を上げて喜んでいましたので、そもそもそういう人向けの映画だったのかも知れませんし、制作側の目論見どおりの内容なのかも知れませんが。
全935件中、841~860件目を表示