ラストマイルのレビュー・感想・評価
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頑張るおじさま達に癒された
優生思想的な人が多い世の中でピラミッド構造となっているショッピングサイトと物流業界。顧客満足なんてものは後付で売上重視の社会をまざまざと見せ付ける1本。
重厚なシリアスとコミカルな会話劇が塩梅よくエンタメとして落とし込まれており久々心躍る傑作でした。
自分が壊れていくことに気付かない社訓12箇条のマジックは身近に感じる要素もあり、満島エレナの強烈なキャラクターに疑心暗鬼になりつつも、最後は彼等を応援していました。
岡田将生さんは珍しく温度感のない役なのでそれもまた新鮮で目で感情を魅せる演技力は流石。
アンナチュラルとMIU404、そしてラストマイルの三作で出演の大倉さんが演じる毛利さんは力の抜け方と観察力のある優秀さのギャップにヤラれます。今回天然が炸裂した刈谷刑事(酒向さん)と抜群の相性でした。
そして末端の委託ドライバー佐野親子のワチャワチャも最上級に可愛すぎる。
鑑賞後に米津さんの主題歌「がらくた」を聴くと暖かさと切なさが倍増し感涙に浸りました。
映像が洋画に劣る邦画はショボさを補う何かが必要。さて、本作は・・
製作費が圧倒的に洋画より少ない邦画は映像面のショボさを補う何かがないと観客動員は望めないと思っています(脚本の良さとか動員力の有る出演者とか)
まず、映像は洋画に比べると悲しくなるほどショボいです。
あと、本作は、ちょうど実社会で問題になっている物流業界の影を扱っています。
(社会に不可欠・縁の下の力持ちと言葉では持ち上げられることがあっても、実際に待遇を改善されることはほとんどなくやりがい搾取でコキ使われるキツイ業界だそうです)
話としては面白かったですし見て損にはならない作品だと思いました。
ただ、テレビドラマとちょっとコラボしていて出演陣は豪華でしたが、話の進行の点では特段の必要性は感じなかった。
まあ、客入りに繋がるので否定することではないのでしょうけど・・
繋がる
推理要素は捻りもあり様々な疑いがあるも、案外ストレートな展開で起承転結があり見やすかった。また、普段何気なく利用しているECサイト、ネットショッピングをテーマに、ハラハラドキドキを味わえるのは、とても身近で入り込みやすい作品でした。代理代行や下請け、配送業者など、様々なしがらみや配送料の安さといった社会問題に触れつつも、この作品のストーリー性を貫いている点が素晴らしかった。また、Customer-centricのお客様中心主義についても、捉え方次第でお客様以外の会社主義という見方もできるということが、この作品からの学びでした。
真面目な日本人ドライバー
真面目で刀を抜けない日本人。主人公の女性はそれが淡く出された女性で、海外らしさがありながらも、出自が日本であることを拭えないようなキャラクターでした。
物語としては大手物流会社から始まりますが、大手から顧客まで繋がる作品ですので、物流会社だけではなくその他の会社でも当てはまる内容です。
野木亜紀子さんが書かれたアンナチュラルでは『幸せのはちみつケーキ』の回がありましたが、それと似たものをよく感じます。(異なる点としては、死因が意図的か意図的じゃないかのところで、これがそれぞれの物語のメッセージ性に繋がります。)
事件があったことにより一度はベルトコンベアーも止まりましたが、解決すれば元に戻ります。
元に戻った際、退職した主人公とは違って、会社に残る人間たちは何を思うのか、0という文字を見た人間は自身もそうならないようにとまた気を負ってしまい負の連鎖になるのか。
主人公が八木に言った「嫌なら止めちゃえばいい」というセリフは、止めるだけではなく、辞めるともかかっていたのでしょう。
己を犠牲にした山崎にも直接言いたくなるような、もしくは今後こうなってしまうかもしれない方々へのメッセージとして強く感じます。
飛び降り自殺は、失敗してしまい植物状態になる事例も多くあり、自殺の成功ではなく失敗を描くことで、よりリアルさが出ます。
エンドロールには相談センターの綴りもあり、閉鎖的になっている日本で働いている私たちへのメッセージでもあったと思います。
気丈に振る舞う彼等も、心の奥や頭の中では山崎の思考と似たものがあるかもしれません。
権力を持つこと自体は悪なのではなく、それをどう行使するのかによってそれぞれ物の見方が変わります。
主人公は度々海外と日本を比べるセリフを吐きますが、委託ドライバーのキャラクターを見て思い出したのは、SNS上でよく共有される海外と日本ドライバーの荷物の置き方の対比動画です。
海外ではドライバーが荷物を玄関に向かって投げたり、踏んでしまうも謝りもなく去ってしまう光景があり、それを防ぐために玄関にドリンクや食べ物を置いて改善されたという動画が拡散されました。
日本のドライバーはドリンクや食べ物が玄関に置かれなくとも商品を丁寧に届けるのがほとんどです。
この日本人の真面目な部分が映画ではよく映し出され、それと伴い委託ドライバーは雨が降る中傘もささず、荷物が落ちないようにバランスを取りながらもインターホンを押す部分がありました。
必要のない自己犠牲の元に成り立つ仕事は真面目な日本人がよく映し出され、またドライバーとしてプライドのある人間像として受け取りました。
1時間ある休憩を30分にし俊敏な配送をすることは、傘もささず雨に濡れる中荷物を抱えることは、仕事を止めるため自ら飛び降りることは必要なのでしょうか。
必要のない自己犠牲を、自身で認識することが大事なのではないでしょうか。
人の命を犠牲にして成り立つ仕事は、もはや戦争と何ら変わらないのではないでしょうか。
序盤で張られた伏線がよく回収されていたと感じます。
ストーリーの舞台を複数当てたことで、異なる立場、経歴の人たちが移されるため、観客がストーリーの社会背景や空間をうまく認識できる作品でした。
社会問題と、言葉遊びと、きゅるんと。
面白いが詰めすぎ。
ドラマでも一話完結させているので、2時間映画でも収められるか?と思っていましたが、あれは難しい。あと1時間くらい尺があっても良かったのでは?というくらいテンポが早い。
ドラマで見慣れているので、犯人はすぐにわかったが、トリックなどはもう一度細かく見直さないと味わえないと感じた。
あと、ドラマと世界線は一緒なだけであって、続編ではありません。勘違いしている人もいるみたいですが、その後みんな元気でやってるよ!程度でストーリーには絡んでません。
気分的には、ポチる事に罪悪感を覚えつつ、これからもポチる自分にモヤモヤ。
ハッピーハッピーな映画では決してないですね。
しかし、こんな事件が起きたら、本国の方の株価には影響出たんでしょうかね?
あと、爆弾の爆発の大きさが不一致というレビューも見られますが、素人おっさんの作った、ダイハード3と同じものですから、相当適当な物と推察はします。
しかし、ツッコミどころが多いので、何回か見ないとわからないな。
メディカル便も病院側は想定していて、卸は複数業者を使っているはず。カテーテルなら業者が新幹線使っても届けるものでは?と思いました。
丁度、朝ドラで盛り上がっている岡田さん。
最後の最後で苦悩を引き継いでしまい、ドライブマイカーに引き続き苦悩の似合う美青年ポジションに落ち着きそうですね。
満島ひかりと岡田将生以外の幹部社員はどこ?
自分はTVドラマを全く見ないので、アンナチュラルとMIUと言われても何が何だかわからないのでカメオ出演が多いな?とくらいにしか思えず。
面白会話と言われている、のり弁と唐揚げ弁当の台詞も、ふーん、そうなんだとしか感じられず興味がないバンドのコンサートに放り込まれたようで居心地が悪かった。
自分の会社が爆破事件に巻き込まれているのに、問題を解決するのが満島ひかりと岡田将生だけってのは、かなり不自然な気がするけどこれはそういう世界観って事?
コナンくんとおっちゃんみたいに事件を解決しても、周りが解説とかリアクションしてくれないと成立しなくない?警察は何をしていたの?
思いつくだけでも、これだけ疑問が出てくるってのはTVドラマを見ていないと分からない映画なのでしょうか。
プーさん2はプーさん1を見ていなくても楽しめる映画だった事を考えると、脚本家の力量がいまいち分かりかねます。まぁ、プーさん実写版を面白いと思う層には作っていないんだろうけど。
見て損したとか以前に全く分からない映画でした。
何だったんだ?この映画は?
何がほしい?全部ほしい
マジックワード「全てはお客様のために」
本作でも野木亜紀子節は炸裂!ということはもちろんエンタメ性だけでなく、社会を映し出すメッセージ性も兼ね備えている。構成含め伏線も張っているけど、演出がやはりTVでクドいから、良し悪しはさておき分かりやすさはある。
大好きな満島さん、迷いながら演じたということだったが舟渡エレナ役でもその演技力・存在感(引き)そしてノリノリな魅力が弾け走り回っていた!結論ファーストで思ったことはハキハキズバズバ言うような行動力のある=仕事のできるザ・アメリカ帰りな感じをモノにしていた。人気出てからも様々な作品・役柄で確かに叩き上げてきては、日本映画界において確固たる地位を築いている感すらある岡田将生も安定。
『アンナチュラル』&『MIU404』組は、正直本当にカメオくらいかと思っていたから、実際に見てみて当初思ったよりはまだ出てくるなと感じた。当たり前だけど映画やドラマ、フィクションの登場人物たちの人生は、その前から始まっていてその後も続いてく。だから、変わりもする。そこの間は本来ないはずなのに、「いや〜みんな変わってないなぁ」なんて思ったりも。某M○Uの影響で、「何でもかんでも"ユニバース"しすぎ!もういいから!!」って食傷気味お腹いっぱいな気持ちになっていたけど、本作のシェアードユニバースは良しとしよう。やっぱり嬉しいしね!
No Limit
Customer-centric
Various View Points
2.7m/s → ◎
70kg
ロッカーのメッセージ
(感想、役者さんの本名で失礼します)
『2.7m/s→0(70kg)』
▶︎『ベルトコンベアを止めます』
中村倫也▶︎ 疲弊してしまった中村倫也は自死を決めるが、どうせ飛び降りるならベルトコンベアを止めてブラックフライデーを中止にさせよう(社員のためにも、運送会社の為にも)と考える。しかしベルトコンベアも止まらず、ブラックフライデーは続行、自分も死にきれなかった。植物状態になる前の「馬鹿なことしたなぁ…」という呟きには、飛び降りたことへの後悔や飛び降りずとも満島ひかりのように何か交渉で会社を変えることが出来たのではと考えていたのかな…
ディーン▶︎ただの飛び降り自殺だと5年間思っていたがメッセージを理解したことにより、意図的にベルトコンベアの上に落ちたことを知った…生前の中村倫也の仕事ぶりは映像がなかったけど「死んでも止めるな」と言っていたからディーンも意識が「流通を止めないこと>中村倫也の死」
になってしまったのかな…
岡田将生がたった2年でこの倉庫で1番長いこと、会社が潰れ親子での配送業(格安)、社長と満島ひかりに挟まれる阿部サダヲ、全てを解決しても1個20円しか上がらない給料(ただ会社としては160億円の損失)
全てがリアルな現代で見てて苦しくなる部分も多かったです。
伏線回収、ストーリー、現代問題の描き方、アンナチュラルMIU404の使い方、がらくたの歌詞、個人的に全てが満点の展開でした。全てを理解した上でもう1回見たいです(*^^*)
物流業界の苦悩と闇
日本映画素晴らしい!
視聴者への風刺の投げかけと自省の強制が辛い
「過去2作と繋がるノンストップサスペンスエンターテインメント」
この宣伝文句からお出しされたものが社会、ひいては物流を利用する我々視聴者への問題提起なのである。はっきり言って暴力的だ。
シェアードユニバースを謳い、世界観の広がりを謳い、エンタメ性を謳っていながら、不意打ちで「この社会の問題の当事者はあなたです」と投げつけられる。
そもそもこちらはシェアードユニバースの世界観に浸りたいのである。社会問題を訴えたいならそういう映画をそういう広告で作るべきだ。
いきなりコレを投げつけられて、私はしんどく感じてしまったし、しんどいと思うこと自体が「問題に向き合っていない」ということになるんじゃないかと感じてしまっている。
社会問題を訴えるのはいい。作品に活かされているならいい。或いは連ドラの一エピソードであれば、考えさせられる話があった、ということで視聴者も当事者意識を持ちつつしんどい感情にならずに済むかもしれない。でもこの社会風刺は、作品の前に出てきてしまった。これをエンタメとして広告を打つのは、視聴者への不意打ちの暴力だと、私は感じてしまった。風刺や批判に当事者意識を持たせることが目的だとしても、不意打ちでそれを行うのは、卑怯だと思った。
また、予告編で過去作との繋がりを強調した割に要素は薄い。メイン2人に感情移入する時間が無い。これならUDIラボと機捜とデリファスでチーム組んだ方が良かったんじゃないかなと感じた。
過去2作のキャラとコラボして爆弾魔を追う、という触れ込みだったのに対して、過去2作のメインキャラは要所で登場する程度で縦軸の2人とは絡まなかったのが肩透かしに感じる人もいるだろう(ラストマイルのメイン2人の存在感を邪魔しないための采配だと理解してはいるが、毛利さんと刈谷さんとしか絡まないのは寂しい)。
そもそもメイン2人に感情移入できない。
特にエレナはこの非常時に何言ってんだお前、という感じだし、前半の羊運送への当たりがキツイのが見ていてしんどくなる。とはいえこれが物流の闇である、という風刺なのだろうが。この後に彼女自身の話や筧との会話についての告白があるわけだが、これまでの情報開示の上でそれがあったとしてスっと感情移入できるのか、と言う話でもある。少なくとも気持ちよく好感を持てるキャラでは無い。
予告にある五十嵐の「何ができたっていうんだ」という言葉はエレナや五十嵐等の、作中の「強い者」を象徴するセリフであるが、それに説得力を持たせる掘り下げが無かったので、キャラに惹かれないのだ。
孔についてはシンプルな描写不足。孔の人となりはわかるが、バックボーンを「考察したい」と思わせる魅力や描写がない。前職がブラックですり減ってしまったことは説明されるが、それ以上のことは分からないし、興味を抱けない。
逆に佐野親子や八木は共感性の高い役でポジションも分かりやすいので、少ないシーンでも共感が湧く。彼らの何気ないシーンが伏線として活きるところもいい。彼らは実際に「私たち」だからこそ、少ないシーンで共感出来る。
物語のメイン舞台が終始配送センターの倉庫なのもスケールが小さいと感じた。空輸なども含め全国規模でてんやわんやなのかと思ったのでココは明確な肩透かしポイント。とはいえミクロな部分をフィーチャーする選択をしたと考えれば納得のしようもあるが。実際上記のように下請けの羊運送の悲喜こもごもには強く感情移入できた。
UDIラボと機捜のシーンは文句無し。最高だ。これが見たかった。UDIラボと機捜とデリファスでチーム組んで素直に作った方が良かったんじゃないかなと思う。
総じて、あのアンナチュラルやMIU404のような感情をダイレクトに揺さぶられる鑑賞体験や、彼らとのコラボレーションを期待すると肩透かしを食らう。
エンドも良くも悪くも視聴者に委ねる形な上、明確なボスキャラが居ないので2時間のエンタメ作品の鑑賞後の余韻としてはパッとしない。
総じて、映画単体としてはメインキャラに感情移入や共感がしづらく、シェアードユニバースとしても広がりを感じない、微妙な作品だという評価をせざるを得ない。
伏線回収の巧みさや、過去2作のキャラのアフターを楽しむことはできる。
良い出来
それぞれの素材は最高なのに
前提として、同脚本家の他作品や「MIU404」「アンナチュラル」は何度も見返しましたし今回の役者陣も全員好きな方ばかり。
実力派俳優たちの演技はもちろん、舞台の倉庫や爆発現場の映像技術も素晴らしかった。
現実世界の社会階層や過重労働への問題提起についても、物流ではないものの社会インフラ業界に身を置く労働者として強く共感します。
スタッフロール後のお決まり「この物語はフィクションです」のあとに続いた、心の痛みに寄り添うメッセージにも制作側の真摯さが伺えます。
ただ脚本は…。露悪的かと思えば突然弱い立場への共感を示したりスタンスがよく分からず最後まで不安定な印象の主人公。
小粋にしようとして失敗している余計なセリフと事態の深刻さとのアンバランスさにも違和感しかありませんでした。
主人公の不安定さが過重労働の後遺症の現れというならまだ理解はできますが恐らくそうではない。
それぞれの行動の意味がきっとあるはず、と期待しましたがそういったカタルシスもなく。
話題性と出演陣の豪華さだけで評価されると筋の通った脚本のある他の中規模作品が浮かばれないな、と言う気持ちになりました。
繰り返しますが素材は素晴らしいです。これからも野木さん、俳優さんたちの作品を楽しみにしています。
ヒツジさんはヤギさんで、クマさんもいた。
2024年を生きるすべての人へ
(ネタバレ有り感想の続きを後程更新予定です)
実際に観て凄いなと思ったのは、「シェアード・ユニバース・ムービー」であることでしきりに宣伝されているけれど(勿論それはすごく大事!私もドラマのファンとしてブチ上がる瞬間多々ありました!!!)、
観ようと思う入口がそこだったとしても、最後に連れて行かれる場所との落差や、本質を置いているところへの向き合い方の真面目さ、その事実の哀しさと現実の反映度の高さでした。
勿論「ビールとポップコーンが似合う映画」としてエンタメ性は損なわずに、でも私はむしろドラマも観ていないしキャストや制作陣にも興味がないけれど観てみた、というような人とも意見や感想を交わしたいと強く思いました。
少なからず今の日本に生きているならば、何かしら思うこと考えることが湧き出てくるのではないでしょうか。間口は広く、しかしテレビドラマではなく映画だからこそできる描写や大胆さを、きちんと狙って作られていることが感じられます。
…とは言え404コンビが出てきた瞬間のサントラ(伊吹藍のテーマのアレンジ版…!)と小出しにしていくカメラワークで、テンションぶち上がって叫びそうになりました
アンナチュラルチームもかなり話の重要な要素の解明に携わっていて、コインの音聞いただけで崩れ落ちそうでした
ドラマおたくとしては応援上映で観たい気持ちもあり、様々な感想が渦巻いております…いつか彼ら彼女らの旅の続きも観てみたいなあ。
ここからネタバレ↓
最後の爆弾による被害を止めたのが「HINOMARU」の洗濯機なのが、実は私が一番印象に残った点でした。
日本製の高品質の商品だからこそであって、そのことを一番身近でよく知っていた亘さんだから咄嗟に行動できたのだろうし、かつて丁寧に行った自分の仕事が、回り回って自分と他者をも救う、という展開に胸が熱くなりました。
そしてこの物語は、全ての働いて日常を営み生きている人たちへの賛歌でもあるのではないか、その象徴のようなエピソードではないか、とも感じられました。
(もっとも、「HINOMARU」製の製品が価格競争に負けて会社が潰れるなんて、今の日本と海外の縮図すぎますが)
残念ながら、その洗濯機は部品がもうないから直すことができない、まさに"がらくた"になってしまいます。ですが、エンドロールで主題歌を聞いていると、「二度と戻りはしなくても 構わない」確かに価値のあるものだと解釈できるように思うのです。
それは、先述の人の手による丁寧な仕事のことでもあるし、望まない形で仕事と誇りを奪われても「そばで生きていてよ」と変わらずに願う佐野家の父から息子へのまなざしとも重なるように思います。
また、「HINOMARU」=日の丸は、『MIU404』最終話で志摩と伊吹が着ていた「I❤️JAPAN」Tシャツのイメージとも繋がるのではないかと思いました。
MIU円盤のノギノート(野木さんの解説)では、「アイラブJAPANは組織や権威のためでなくこの国で生きる人々を守り続けるBIGラブ」と書かれていて、まさに『ラストマイル』に出てくる人、描こうとした仕事ってそれでは?と思って震えてしまって。
「止めない」ことは凄いことだけど、守られるべきはこの国で生きる誰かの人生や日常の営みや尊厳であって、そのためには「止める」選択肢も考えないといけないよ、と提示していた物語だったんじゃないかと思っています。
タイムリーな話
コラボ映画か〜
世界はどこかで繋がっている
レビューした記憶があるのに投稿がなかったので再度(?)投稿。
『アンナチュラル』の大ファンで、映画公開前に『MIU404』を初めて見てそちらも大好きになった人間です。
アンナチュラルとMIU404で既に世界が繋がっていることが示唆されていましたが、『ラストマイル』ではシェアードユニバースムービーとして3作品の世界が繋がりました。そしてそれは、現実のわたしたちの世界ともきっとどこかで繋がっているのだなと鑑賞後に感じました。きっとラストマイルが、他の2作品に比べ、かなり「わたし」個人の生活に近く、身近な題材を扱っているからなのだと思います。解剖や刑事事件に接することはほとんどありませんが、今日日、通販サイトを利用して商品を購入することはごく当たり前の消費活動です。
なので、初めての鑑賞後はうっすらと、自分も山崎佑を追い詰めたうちの一人なのかもしれないと思いゾッとしました。某ECサイトのセール開始の広告を見て、複雑な気持ちになりました。でもきっと、だからこそ、出来ることもあるのだと思います。通販サイトの商品が手元に届くまで、今までほとんど意識を向けていなかったたくさんの人に目を向けて、感謝の気持ちを持つことを、少なくともわたしに意識させる映画でした。
このレビューを書いてる時点で4回鑑賞していますが、観るたびに満島ひかり演じる主人公のエレナが好きになります。
犯人ではないかと岡田将生演じる孔に詰め寄られたときの「わたしがどんな気持ちでここまで…ッ」と涙を堪え言葉に詰まりながら、それでもすぐに表情を戻す気丈さが、気丈に振る舞おうとする強さが好きです。赴任してきたばかりでも、何も言い訳をしない。そんな彼女だからこそ、過去に一度「爆発」してしまったのだと、2回目以降で全く印象が変わるシーンだと思います。
ロッカーに残されたメッセージを見て、飛び降りの真意に察して泣き、「彼女を探さなきゃ」と言ったのは、筧まりかのことをきっと心の端のどこかでずっと、気にしていたのだと思います。だからこそ、最初の爆発の被害者が犯人にしか起こせない=筧まりか本人は死んでしまったのだと気付いて、「1番欲しかった答えがロッカーの中にあったのに!!」とその死を悼んだ。これだけ会社への損失を与えた張本人であるのに。このバランスが、舟渡エレナをとても魅力的なキャラクターに魅せている、と感じました。
初め、最後にエレナがサラに言った「爆弾はまだある」の意図を今ひとつ掴みかねていましたが、あれは中盤のエレナ自身の言葉、11個の爆弾を12個と偽って予告することで永遠に探させることにかかっているのかなとわたしなりに解釈しました。エレナ自身が「わたしが犯人ならそうする」と言っていたので。山崎佑の飛び降りが会社の責任とする証拠。あるいはもっと会社に不利益を生じさせる何か。
事件は解決しても、根本の社会問題は解決せず、どこか苦いものが残る物語の閉じ方。とてもこの製作チームらしい作品で、観て本当によかったです。
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