ラストマイルのレビュー・感想・評価
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映画館で観る価値はありません
もちろん、ある程度面白かったです。ただし、それは脚本の面白さであって、この作品に映画でいうところの「映像」や蓮見重彦さんの言う「ショット」は1ミリも存在しません。
日本人の映画鑑賞層は一定数、「面白い!」というのを「その脚本が面白い」と混同していて、編集やキャメラ、美術などに対する関心が欠落しています。
この作品もその例外ではありません。「映像」がどこにも存在しない、そしてキャメラの妙味のまったくない作品を映画とは呼べないでしょう。
グローバリズムが大量商品の最終アウトプットである物流に注ぎ込まれた時に歪みがくることは、もはや誰もが想定・経験していますし、今更感があります。
明らかに利益を享受している層も一定数いるはずですので、歪みの来る層だけを取り上げるものフェアでない印象です。
TV鑑賞で十分ですが、それでも満島ひかりや岡田将生をはじめ、俳優陣は輝いていました。まあ、そこにおまけして50点ですね。
社会派エンタメ作品。
ポチれば翌日には商品到着。そんな当たり前の日常に隠れた物流業の過酷な実際に切り込んだ作品。「アンナチュラル」や「MIU404」と絡めることでエンタメ映画としても上手く仕上がっています。請け負い家内運送業の悲哀、親子の絆、伏線回収、火野正平親子が全部請け負っています。
ドラマはいらなかったかも
映画の本筋は面白かったのだと思う。2つともドラマは観ていたし、アンナチュラルは大ファン!再放送は必ずチェックするしこの映画に対しての期待値もここに起因するものもあった。でも逆にこの要素が映画の邪魔をしていたように思う。
ろくろうバイト掛け持ちしすぎじゃない?とか、このやり取り懐かしいな~とか、旺志郎くん刑事になったんだ!とか本筋と関係ない所に気が散ってしまう。
満島ひかりさんは映画館に足を運んで演技を観たくなる素敵な女優さんだし、もっとエレナの心の揺れにフォーカスをあてて欲しかった。パワフルで強いようでいて脆くて儚いエレナ。意見や行動のチグハグさ、と言うか心の揺れよね。会社の、社会の光も闇も理解してどう進むのか。
一方の私は初めてのプレゼントの下りも理解しきれていない。白い手帳って何か意味があるのかな?アジア統括と話した時の引用としては原点回帰として出てきてたけど。複雑そうな生い立ちも少し覗いてみたかった。
期待しすぎたぶん残念感が増してしまったので辛口評価です。大好きな俳優さん盛りだくさんだったのにな。
カスタマーセントリックとは何か? きちんと自分の頭で考えている人は強いよ。
ポスターをみると「シェアード ユニバース ムービー」とキャッチがついている。これってバラバラな複数の物語が一つの映画の中で共通の舞台に乗っかるということで、元々はアヴェンジャーズやX-MENのような作品群のことを言ってた。
今回は、塚原あゆ子、野本亜紀子のコンビのTVシリーズ2作品がオリジナル作品の映画に乗り入れるという趣向で興行的には大成功。劇場はTVシリーズのファンと思われる人たちで一杯になっていた。それはそれで全然悪いことではない。
ただ映画の主題の「ラストマイル」すなわちサプライチェーンの最後、消費者の手元に商品が届く最終段階で事故がおこり、そしてその原因はその手前である物流倉庫のなかで仕込まれている、という設定の意味合いが、シェアードのシーンが入ることでちょっとボケちゃったね。ちなみにサプライチェーンっていうのは生産者から消費者に至る一連のモノやお金や情報の流れのことを指します。
いや、本筋の方の話もよくできているんです。でも「綾野剛のキャラはドラマ通りだな」とか「石原さとみでた〜」とか目を奪われているうちに、あれあれ何だか話がわかんなくなっちゃったとかいう人多いんじゃないかな。つまりラストマイルと物流センターでそれぞれ起こることの対比がきれいに見せられず間にあれこれ入ることで理解を阻害するっていうことです。そして5年前の事故の真相、それに関連するロッカー内の謎の数字、っていうあたりは明らかに説明不足というかおそらく設定自体が十分に掘り下げられていない。あれでは中村倫也や仁村紗和がわざわざ出演した意味がないです。
でもこの映画でやっぱり光るのは舟戸エレナを演ずる満島ひかり。優秀なビジネスウーマンを圧巻で表現できています。Daily Fast社のモットーである「カスタマーセントリック」を彼女は自分の言葉で説明しているでしょう。私の経験でも、顧客第一をどこまで自分の身体に覚え込ませているかでマーケッターとしての優秀性は違ってきます。大概はディーンみたいに付け焼き刃なんだけどね。
野木亜希子の脚本はやはり面白い…。
ブラックフライデーの時期に(amazonを匂わせる)世界規模のショッピングサイトから配達された荷物が
爆発するシーンから始まり、それからテンポ良く物語が進んでゆく。
ショッピングサイトの満島ひかり演じるセンター長と正社員の岡田将生、本部のディーン・フジオカ、それとともに
羊運送の社員阿部サダヲや末端の運転手の日野翔平と宇野翔平親子、最後に荷物を受け取る安藤玉恵の家族。
それぞれがそれぞれの立場や矜持があり、どれが一番ということも断定せずに続けられる物語は
かえって、今の現実感を浮き彫りにする。
自分が何気にネットでポチる商品にこれだけの人々が絡み、それぞれが生きているのに感動すら
覚える。
中村倫也とその彼女さん(わからなかった)が若干弱くて、爆弾を仕掛けるに及んだことが
あまり説得力がないかなぁ…。
後、ロッカーの落書きの意味もよくわからなかったのは私だけ⁇
それでも、「MIU404」のキャストや「アンナチュラル」のキャストが時々画面に登場して、
懐かしかったり、変わったと思ったり。
配送問題はいろいろ言われていて、今のままでOKと思っている訳ではないけど
「お客様のために…」という言い訳な末端を自分も担ってしまっているんだと思う。
帰宅したら、玄関にamazonの置き配があって、このタイミングで…と苦笑い。
難解
脚本の野木亜紀子作品は「アイアムアヒーロー」「罪の声」「犬王」「カラオケ行こ!」結構観ている!?オレ
予告で見ていた段階では、「踊るナンチヤラ」みたいな誰でも楽しめるファミリー映画ぐらい思っていたら…
いや、舐めてましたね
情報量、専門用語、登場人物が結構多く、謎解き部分はっきり言って、よくわかりませんでした
(゚∀゚)イェ~イ
唐突に出てくる麻生久美子、星野源、綾野剛、石原さとみ、窪田正孝、松重豊…これドラマ見ていない人は(自分は配信で1話ずつだけ見た)はっきり言ってノイズでは!?
話の展開も早く、個人的に前半はあまり面白くない…(満島ひかりのキャラがとにかく鼻につく)
謎解き部分はあまり映画のテーマに関係ないといえばないのだろう
月曜日の午前中としては、客席は埋まっており、人気あるのだな、この映画、と理解できたが、果たして観客のなかで、これ面白かった!と言える人はどれくらい!?が自分の本音(面白い人はとても楽しめたと思う)
決して作品批判ではなく、自分には難解だったという話
昔みたいに、誰が観ても理解できるある意味中身スッカスカな映画ではなく、観る人をある程度選ぶ、リテラシー高めな作品ですので、機会があれば、もう一度観てみたいな、と
でも、満島ひかりのキャラは最後までビミョーでしたね…オワリ!
単純なファンサービスに止まらない社会派ドラマ
ネット通販にまつわる、川上から川下までの物流問題にスポットを当てた結構骨太な社会派ドラマだが、そこにアンナチュラルとMIUのキャラたちがクロスオーバーさせてファンには堪らないエンターテイメントに仕上げているプロデュース力に驚嘆。
社会問題はどうしても説教臭いものになりがちだが、各ドラマの面々が適宜登場して盛り上がるため、弛れることなく、終盤まで集中してドラマを満喫できる。
あくまでも問題提起が根底にあるため、登場人物の行動動機や展開のご都合主義感は目を瞑って、純粋に物語を楽しんだほうがよいと感じました!
物流はますます自動化して、人がつぎつぎに排除されて、でもどんどん便利になっていくんだろうなー。
巨大なネット配達業界
豪華な俳優陣で、巨大組織ネット配達業に爆弾事件をふくませる大がかりなお話。テンポも良くてセリフも秀悦。俳優人たちの演技は素晴らしい。とくに満島ひかりさんは上手くて魅入ってしまいますね。
ただまとまりとしてはどうなんでしょう。ちょっと話が広がり過ぎていたというか、欲張りすぎたのかな。配達業、ブラック企業、マーケット顧客第一主義における理念問題、事件の二転三転、ちょっと頭が疲れているのか…結果的に一番の見せ所がよくわからなくなりました。
それでもつまらない作品とはならないのが、やはり脚本やプロデュース力の力が凄いからなのでしょうねぇ。でも…誰に思い入れをしたか?と聞かれたら、まったく思い浮かばず、中途半端な感じも否めず。とりあえず今はなくてはならないネット、配達業界。これらのビジネス世界の裏側を見たことでも満足。テレビで見るとちょっと集中力が切れたかもしれない。映画で良かったと私は思います。
野木亜紀子ワールド全開
とても面白かったです。
128分に収まるよう、しかも1分も飽きないよう練られた脚本、主演二人以上の存在感を放つ多数の脇役、チョイ役までもが強すぎ(アンナチュラル、MIU404)という、一流のエンターテイメントでした。オリジナルだからこそ128分でほぼ過不足なく描けたのではないでしょうか。
ストーリーには確かに疑問もあります。あれだけ爆弾が爆発して、なおあの会社から買う?箱開ける?普通怖くてキャンセルすると思う。等々
とはいえ、外資系なんて収益下がれば簡単にクビになりますし、運送業がパンクしかかっている現状、これに近い悩みを持つ人・企業もあるだろうなと。
社会問題をエンターテイメントとして扱うのは、野木亜紀子に任せておけば安心です。
話がズレますが、犯人のご遺体と判断した中堂さんとミコトの会話を聞いて「アンナチュラルもう一回みたいな」と思いました。
大手ショッピングサイトの物流センターと運送会社の人達の奮闘を描いた作品。 本年度ベスト級。
ネット社会の問題を提議した作品って感じ!
スピード感ある作品と期待したもののそれ程でも無かった感じは残念。
予想外だったのは意外な豪快キャストが多く登場。
石原さとみさん。綾野剛さん。星野源さん等のキャストの登場にビックリ(笑)
満島ひかりサン演じる大手通販サイトのセンター長を勤めるのエレナ。
出荷した荷物が届け先で爆発する事件が発生。
仕掛けられたと思われるも爆弾の数は12個と思われた。
警察と共に犯人捜しと爆弾が仕掛けられた荷物を探して行くストーリー。
予告編で満島ひかりサンのキャスティングに疑問があったけど鑑賞後の感想はお似合いのキャラだった(笑)
最初に爆発したアパートの二階のシーンに違和感あり。
ナルホドの伏線回収が良かった!
本作は通販サイトの荷物を運ぶ運送会社の苦労にもスポットを当てていた感じで好印象。
荷物を1つ届ける単価が安い。
これでは運送会社の人達が可哀想。
運送会社の方々のご苦労が解る作品。
事件の真相があまり深掘りされていなかった印象はあったけど、エレナや部下役の岡田将生の行動は熱かった!
エレナの行動力や決断力が凄い!
洗濯機の伏線回収はお見事!(笑)
作業効率や売上目標の「見える化」が、ある意味恐ろしい。
あんな所で働きたくないと思ったのは自分だけではないハズ(笑)
実際の物流センターもあんな大人数の人達が働いていたり、運送会社の人達のさが苦労していると思うと、安易に「ポチる」事を考えさせられた(笑)
外資系の会社の成果主義は自分には合わないかもしれません( ´∀`)
まさかまさかの
primeで配信できない問題作
ネタバレをくらう前に早く見て
ものすごく楽しみにしていた映画、期待を裏切らない内容でした。
満島ひかりさんは、あて書きしたのかなと思うくらいハマっていました。途中完全に犯人を間違えるような誘導入っていてすっかり騙されてしまいましたが、そういうのも含めてあちこちに張られていた伏線がどんどん回収されていくのも面白かったです
なお、犯人については、恋人がまだ死んでないのだから、死を選ばないでほしかった(もう狂ってしまっていたのでしょうけど)
一粒で3度美味しい TSU!この世界は誰も止められない 地獄の物流センタ-の実態
なにぃ米が無いだと?そんな馬鹿な。
絶賛収穫中でガンガン市場に流したるょ~農家の方々。
米を配送するなど、物流の重要さもこの映画を見て少し考えさせられたわ。
今日は「ラストマイル」の鑑賞ですね。
この映画は日本作ではまだ珍しいのかな、
TBSドラマ2本を本作に絡ませたシェアード・ユニバース作品です。
(略してTSU、まぁ簡単に言うとTBSドラマ祭りですなw)
本編内容に、『アンナチュラル』、『MIU404』の世界が絡ませて有ります。
こう言うのMCUやDCEU、モンスターバースなどが有名だろうか。
フジテレビドラマや日テレドラマも追随して創られてきそうだね。
チラシは持ってて見てたけども、物流物サスペンスって? 面白いの?って
途中まで思ってた。だって出だしから爆発炎上、爆弾が荷物にって。如何にもありそうな展開じゃないですか。
でも 見ている内に、これはあの アマ社とヤマ社の関係した社会問題の事をベ-スにした作品だと気付く。観ていてナルホドねと感じた。
ネット通販が当たり前の時代。最新商品の激安をポチって送料無料で発送!
商品来るの待ってるだけで楽しい。でも配送する方は必死。
いつ来るか分からないし、配達日待ってても時間有効に使えないし・・・すれ違いや殆どの方が再配達に直面しているのではなかろうか。
マンション等には宅配用ポストも有るそうだが、戸建ての宅配用ポストの設置率はまだまだ低い。玄関口に置かれてもね、食品関係なら困っちゃう場合も。
何度配達をしても 送料は同じ。再配達は地獄!!
そんな客先への最終配達区間(ラストマイル)が今作のテ-マ話。
監督:塚原あゆ子氏
脚本:野木亜紀子氏
-----本作メイン展開MC
舟渡 エレナ(物流センタ-長):満島ひかりさん
梨本 孔(マネ-ジャ):岡田将生さん
五十嵐 道元(エレナの上司):ディーン・フジオカさん
八木 竜平(羊急便の関東局局長):阿部サダヲさん
佐野 亘(羊急便の配達員 息子):宇野祥平さん
佐野 昭(羊急便の委託配達 父):火野正平さん
松本 里帆(シングルマザ-):安藤玉恵さん
山崎(自殺図る元センタ-長):中村倫也さん
その他、『アンナチュラル』、『MIU404』ドラマの出演者達の構成で
豪華な俳優陣を形成しています。
主題歌:米津玄師「がらくた」がラストの余韻を盛り上げています。
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まぁ、とにかく 親子で羊急便の委託配達している二人の話がリアルに思えましたわ。1箱配送で150円~200円とか。そりゃやってられねぇわ (@_@;)
1日10分の昼食休憩で200個配達。そして最後に死ぬ・・・
こんな年配者の方々が死ぬ思いで運んでる姿に 本当に申し訳なく感じたわ。
そしてそれに繋がる物流センタ-。ここのセンタ-長が飛び降り自殺を図るのだが。ショッピングサイトはどんどんポチらせて、どんどん配送させる。激安配送料で。末端がどんな思いで運んでいるのか分かっていないし、分ろうともしていない。この地獄構図の実態を我々に知らしめる事自体が本作の意味ある所だろうと、
そう感じた。
爆弾騒ぎで、物流拠点に即導入のエックス線装置。急遽ここを通さないと配送してはいけない。ここの間髪入れずのやり方に八木が悩む辺りや、上会社からの指示に対して暴言吐く所など、会社の責任ある役職を担ってる方なら結構同感したのではないでしょうかね。
胃の痛い話ですよ。この緊迫感はとってもリアルに感じました。
医療現場に薬が届かない・・・この問題。
人の命に直結していく現場。
そう思うと、めったやたらにポチってる場合では無いなと反省しちゃうわ。
でも今や何でも 文具や工具、部品関係、ビジネスに使う物は殆どがネット発注。
この現実、避けられそうに無いなと そう思います。
結局、リアルな話。アマ&ヤマ問題は 送料はメッチャ上がり。正規定荷受けの原点に戻り 何でも一括定額受けは無くなった様な。
映画展開ではストライキしたけど。あれは おおおっと思ったわ。
こんな話は池井戸さん作品類でやる様な内容なのかも。
結局 舟渡はセンタ-長を辞める。梨本にバトンタッチ。
舟渡を送り込んだ本国の本部長は結局 人を人と思って扱ってない。
今のネット社会、発注と同じで 人をポチって指示してるだけ。
心ある言葉やフォロ-が無ければ組織は破綻する。きっと。
その他:感じた事
ロッカ-の暗号ってそんなに重要だったかな。想いは解ったけど。
それとタイミングよく子供に爆弾が渡るかな?(ドラム式洗濯機はエライ!)
あと自殺図った息子(元センタ-長)は 彼女のせい?だったかな。
なぜ父は彼女に対して暴言を吐くのか。
爆弾送付しか彼女の復讐は果たせなかったかな?他にも遣るべき事が有ったと思う。顔を焦がしてまで爆弾自殺する思い(根底)が弱いと感じたかな。
今年の11月29日は ポチるの躊躇うわ~。
気になる方は
是非劇場へGO!
例えが下手ですが
例えが下手ですが、アンナチュラルとMIU404の出演者と本作の出演者が絡み、幕の内弁当のような映画と期待していたが唐揚げ弁当のようだった。最後の爆弾の被害を防いだのは、警察やUDIラボではなく、満島が演じるエレナと火野と宇野が演じる佐野親子だった。
無差別爆破の犯人の犯行理由が納得できなかったのが、少し残念だった。これでは安倍元首相を銃撃した犯人と変わらないし、無差別犯罪だけにもっとたちが悪い。ブラックな職場は他にもあるし、その度に不満を犯罪行為につなげられたら困る。その思いや行動する勇気は、本当に職場や社会を変えるために使うものでありたい。そういう意味でも、もう少し希望のあるラストにしてほしかった。
期待しすぎてしまった
「便利」の裏側
観客の期待を裏切らないものを作るということは、大変なことだ。
その大変なことをやってのけた。
社会派エンターテイメント映画というジャンルがあるとすれば相当上位に来そうなクオリティ。このクオリティの高さはやはり、野木亜紀子の脚本の力だと感じる。観ていて、ずっと凄い脚本だと思っていた。
「アンナチュラル」も「MIU404」も観ていない(ほとんどTV観ないので)。
だから、この2本のヒットドラマのファンの期待(ドラマのキャストが登場するとか)とは異なる期待(テーマと脚本への期待)を持って観たのだが、その期待を超える作品だった。
ECサイトの誕生で、私たちの生活は飛躍的に便利になった。ネットさえ繋がれば、山奥でも欲しいものを届けてくれる。驚くべき速さと安さで。
その裏で、流通業界・物流業界も激変した。巨大プラットフォーマーが生まれ、多重下請け構造で「ラストマイル」にしわ寄せがたまっていた従来の業界に「速さ」と「安さ」の圧力がさらにかかる。そして、消費者が気ままに押すボタンから生まれる大量の小口荷物という「物量」が押し寄せることになった。
我々はこの問題を見て見ぬふりをしてきた。
我々が便利さを享受している裏で、それと引き換えに苦しむ人々がいることを、問題意識を持った一部の人間しか観ないドキュメンタリー映画ではなく、大勢の観客を集められるエンターテイメント映画として見せる。
豪華キャストと圧倒的なテンポの良さ、台詞のキレ、サスペンス要素も交えて観客を楽しませつつ、単純に「面白かった」と言わせて帰らせないぞと制作陣の意気のようなものを感じた。これが現実。目を背けないで観ろと。
・大量の非正規社員で動く物流センター(正社員たった数人。倉庫内で動く人々をみて「ノマドランド」を思い出した)
・「マジックワード」で思考停止に追い込まれる正社員(もの凄い速さで人が入れ替わる)
・人が落ちても止まらないコンベアー(身を投げた男の願いむなしく止まらなかった)
・責任を押しつけられる物流会社
・10円単位の単価で働く「ラストワンマイル」の下請け現場
・高性能でも安さに負けた日本の家電(最後にそれが人命を救うことになる皮肉)・・・
主演の満島ひかりのパワフルさ、コミカルさとキレの良さが光る。彼女でなければ、もっと暗い映画になっていたかもしれない。阿部サダヲと火野正平が役にはまっていた。
他にも、最近観たことがないくらいの豪華名優、名脇役勢揃い(野木脚本作品の「カラオケ行こ」の綾野剛と橋本じゅんも出てたな)。
でもやはり、一番は脚本の力。野木亜紀子脚本のドラマが10月始まるらしい。久しぶりにTVドラマを見てみようという気になった。
社会問題の提起の手段としての映画、エンターテイメントの力を再確認させられたような作品だった。
(2024年映画館鑑賞24作目)
不退転の決意の満島さん
ごはんを食べよう。ゆっくり眠ろう。明日はラストマイル、観に行こう。
この日本社会で生きている人間にとって他人事にはできない映画だ。託された荷物は大きく重く、ひとりでなんて持てっこないから、持たなくていい。映画もそう言ってる。でも、その荷物は放置してはいけない。映画もそう言ってくる。放置なんてさせない絶対に。開けたくなるだろう?と。タフな映画だと思う。
荷物に入っているもの。昨日ポチったおもちゃ、時間指定してなかったから確認しようかな、とか。悩んでたイヤホン、海外製の方が安いけど、国産の物を購入しようかな、とか。最近休みがちな同僚、明日は声かけてみようかな、とか。残業続きの家族に、栄養のあるもの食べてほしいな、とか。明日有給とって『ラストマイル』観に行こうかな、とか。隣人に、他者に、社会に、家族に、自分自身に、優しくしたいと思える気持ち。
できる限り多くの人に映画を観てもらいたい。荷物を受け取ってほしい。ささやかな優しさを積み重ねることが、この世界に真に絶望しない唯一の方法だと思うから。
さあ、ごはんを食べよう。ゆっくり眠ろう。明日はラストマイル、観に行こう。
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