「二度見ると黒幕がわかる」ラストマイル 豊川内角さんの映画レビュー(感想・評価)
二度見ると黒幕がわかる
1度目観たときには見終わった後、モヤモヤっていう感情が残った。
そのモヤモヤの感情がわからず、もう一度観に行ってしまった。
梨本孔がホワイトハッカーをやっていたと告白したとき、観ている者はエレナに疑惑が向くのであるが、のちにアメリカ本社のサラから山崎佑の削除依頼があったことわかり、この疑惑は観客の心から消える。
孔がホワイトハッカーをやっていたと告白したあと、まるで誤魔化すかのようにエレナは遊ぼうと言い「焼き鳥四並べ」というゲームを持ち出す、そして爆弾のスイッチを入れたと騒ぎ出して警察が駆けつけて爆弾を解除して孔からも疑惑が消えて心の距離が縮まる。
どうしてあそこに爆弾があったのかという疑問も消えてしまうのだが、「もし爆弾が12個ではなく11個だったら」という印象的なセリフからこの爆弾はエレナが隠し持ち、足りなくなる予定の1個だったといえる。
「のり弁ではなく唐揚げ弁当が届くんですよ」というセリフからエレナは爆弾の可能性のある商品を知っていたことがわかる。
エレナは本社のサラが筧まりかからメールを受け取るのと同時に筧まりかからメールを受け取っている節がある。
この時点でエレナは筧まりかの脅迫メールを利用してサラへの意趣返し的な復讐をしようというレベルでしかエレナは考えていない。
エレナは筧まりかが仕込んだ爆弾を1個隠した以外は事態に対して誠実に行動しているから観客はエレナの行動に疑問をもたない。
後の羊急便で八木さんと話をするまで、ベルトコンベアを止めようとは思わないし、羊急便がDAILY FASTを訴えたり、運送業者各社がDAILY FASTの仕事をボイコットしたりするのは、八木さんと羊急便の社長を交えて話をしてのこの時思いつきから生まれた計画なのだ。
この計画に「優秀な人もいるものですね」とエレナは五十嵐の前で自画自賛する。
そして事務所に戻ってきたときに書類を改めてみて、届くはずのない日に届いて爆発しているスマホに、エレナは筧まりかの死とそれに込められたエレナへのダイイング・メッセージを読み取る。
そして「ヒントはロッカーにあった」と叫ぶ。
これは山崎佑がロッカーに残した「2.7m/s→0」のダイイング・メッセージに繋がる。
このメッセージを筧まりかが見ていれば事件を起こさなかった。
「私のせいでなければ世界は罪を贖わなければいけない」という考えで爆弾を作り自殺から始まる筧まりかの単独犯の爆弾劇は起こらなかった。
3度目観たとき、最後の最後で筧まりかの死を知って咽ぶエレナに涙が出た。