「この問題は今なお続いている、現在進行形の課題に切り込む」ラストマイル Koheiさんの映画レビュー(感想・評価)
この問題は今なお続いている、現在進行形の課題に切り込む
今やネットショッピングは日常生活にすっかり浸透している必要不可欠な存在となった。どんどん世の中が便利になっていくということは、消費者目線では非常にありがたいことだ。私自身もその恩恵を受けている一人である。
他方、労働者目線で考えてみるとどうだろうか。少し違った見方ができるかもしれない。便利になればなるほど、当然のように、消費者は便利なサービスを当たり前のこととして求める。企業は利潤を追求するためにその声に耳を傾けざるを得ない。果たして、その裏側で働く人々のことをどれほど考えているのだろうか。下層から中間にいる人たちは、半ば使い捨てのような働き方を強いられる。
下請けともなると、尚のことである。すでに、運送業の人手不足は世間でもよく知られた社会問題となっている。消費者はどんどん便利になっていくことを求めるが、それが必ずしも人類全体の幸福をもたらさない。なぜならば、一部の働く人々を消耗品のように扱っている側面が否定できないからである。そうした人々が、現状に不満を表明し、仕事を受けてくれなくなったら、どうなるのか。今まで何とかなってきたから、これからも大丈夫ということはない。そういう危機意識を感じざるを得なかった。
今作における巨大物流センターでの出来事は、効率化を追求する現代社会が抱える問題を象徴している。舟渡エレナ(満島ひかり)は、一見して巨大資本の代弁者かのような振る舞いをしているようにも見えたが、結局はそうでなかったということがわかり、安堵した。また、梨本孔(岡田将生)は、時折「虎に翼」星航一の姿がオーバーラップしたが、ブレないキャラであった。きっと彼ならばこの先も大丈夫だろう。現在進行形の問題を巧みに描いた野木亜紀子氏にも大拍手!