劇場公開日 2024年8月23日

「ロッカーの裏側に書かれたメッセージ」ラストマイル アベちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ロッカーの裏側に書かれたメッセージ

2024年9月26日
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鑑賞方法:映画館

不条理な死に対して法医解剖医がその解明に挑むドラマ「アンナチュラル」は大好きなドラマである。全話をもう2回観ている。「MIU404」はバディものの刑事ドラマだがこちらも大好きだ。塚原あゆ子監督・野木亜紀子脚本のコンビは最強だと思っていた。どちらも続編を期待し続けていたが、この世界線を共有した「ラストマイル」で遂にミコトにも中堂さんにも志摩にも伊吹にも再び会えた。
それだけでも凄い出来事だが、本編「ラストマイル」も映画として十分に楽しめた極太のエンターテイメントであったとまず絶賛させていただきます!
映画の主役はあくまで満島ひかり、岡田将生、阿部サダヲらの「ラストマイル」チーム。脇役は「アンナチュラル」「MIU404」のチームですが、石原さとみはじめの主役級メンバーは事件解明の重要なピースを紐解くものの「ラストマイル」チームの邪魔にならないような絶妙なバランスで見事に映画の中に溶け込んでいました。その作り込み方が素晴らしい。テレビ局側が制作委員会のキモを担うTVドラマの続編ものの映画は数限りなくあるがこの「ラストマイル」は明らかに一線を画している。

いわゆる「ラストマイル」は物流サービスの最後の役目の方を指しますが、小売の現場でもレジカウンターで商品を渡す人やレストランで料理をテーブルに届ける方など最終消費者に最後に接する方は全て同じだと思います。しかしこの「ラストマイル」では単に現場が大変なのだと問うてる訳ではなく、数千人の派遣労働者がいる巨大センターの中でたった9人しかいない正社員。ホワイトキャリアの人々も「ラストマイル」を担う人々として描き、その苦悩と葛藤がめぐりめぐりこの爆弾事件へと結びついていったのです。
そして、ロッカーの裏側にマジックインキで書かれた数字の意味を見ている側に考えさせるという終わり方はこの映画を一段高いものにしていたと思います。

アベちゃん