「個人的年間映画一位確定 感想レポート」ラストマイル アッキーさんの映画レビュー(感想・評価)
個人的年間映画一位確定 感想レポート
まえおき:この映画を2回見たが、あまりにも大好きな映画となってしまったため感想はとてもバラバラであり、後に綴る作品で最も感じた
感想が大学のレポート並な文量であるので伝わりづらい。ただし、私が思うできるだけの熱量・思いを是非みんなにも知ってもらい、共有していきたい。
1回目を見た時面白すぎて「今年の個人的映画ランキング1位になるだろうな」と思い、初日から3.4日が過ぎてからの2回目。
もう個人的な年間映画第1位が確定してしまった。
私はアンナチュラル・MIU404のドラマが大好きであり、特にMIU404はこれまで何周見てきたのか数えられない程志摩と伊吹のコンビを初め大好きなドラマである。そんな中2023年おわりにこの映画が発表されてから公開日に至るまで楽しみに待っていた。そして蓋を開けてみたらこれまで公開日まで期待しまくっていたどの作品よりも期待を裏切らなかった作品である。
本題
ラストマイルが何故もうこの夏の段階で年間一位で確定なのか?それを簡単に表すと「誰もが見たいと思えるようなエンターティンメント性、圧倒的なキャスト陣などプロデュース性、作中を沸き立たせる劇中曲、そしてこの作品全体の根幹を担っている百数に及ぶような考えさせられるストーリー」この4つの視点がどれも一級品であり、結局は個人的な見解になってしまうが今年の一位が確定してしまったのである。監督塚原あゆ子、脚本野木亜紀子、プロデューサー新井順子、音楽得田真裕をはじめとした作品を手掛けたスタッフ陣の活躍はとてつもない。
簡単に表すならMIU404から変わらずの爆破シーンなど塚原あゆ子のテイク、1人1人味のあるキャラクターをキャスティングでき、日本版アベンジャーズとも言われる程の新井順子のプロデュース、エキサイティングするシーンやシリアスなシーンで最大限のBGMを施し、いつまでも耳に残る得田真裕の音楽、そして作品の魅力を最大限に作っていく野木亜紀子の脚本は観衆に何かを訴えかけ、その反面クスッと笑える二面性。こうしてアンナチュラルやMIU404という大人気ドラマから変わらず、この4人を初めとしたスタッフたちは映画という舞台に写しても完成度は変わらない、いや、それ以上を見せてくれたと考える。これまで人気だった民放ドラマからの映画化は最高な作品が何本も世に出されてきたが、駄作も少なくはないだろう。その点も含めて実写邦画歴代興行収入第一位を獲得した「踊る大捜査線THE MOVIE2」に続くような最高峰の実力が発揮されたのではないかと感じる。
そして作品を見て最も感じたのが脚本家野木亜紀子をはじめとしたスタッフが訴えかけた社会問などをを長々と語っていきたい。
私がこのストーリーに最も感じたものとして
「日本という国の状況・これからの行く末」が
強く訴えられていたのではないか
アンナチュラル・MIU404でも様々な社会問題を取り扱っていたがこの作品でも多いに表現されていた。そして私が年間映画一位として確定した最もな要因でもある。
私がこのように考えた要因とは事件の根幹ともなった「山崎佑の飛び降り事故」、「デイリーファスト」、「サービス」、そして「日本人の性質」
軽く思い出せばこれらの背景があるからであるだろう。
まぁ私がイメージするデイリーファストのモデルとして「amazon」であるだろう。実際のamazonは世界的かつ日本でも勿論無くてはならない会社であるだろう。そんな会社を想起させるようにデリファスは価格も良好であり、物流センターは日本随一であったり、誰もが商品を購入するような大手会社であるだろう。
だからこそそんな会社を表すように、会社を強くする為の「12か条」、本社がアメリカにあるからこそ山崎佑が飛び降りた後の契約書などのアメリカ方式、少しでもミスをしたり配送を止めたら数億単位の損失が見込まれる状況などがあるだろう。
これこそブラックフライデー前夜から始まる連続爆破事件、実際にも起こっている日本での問題の数々のきっかけともなっているだろう。
私も作品のあらすじを見た時はこんな会社の状況が事件の要因となっているなど知る良しもなかった為、1回目を見たあと作品への思いが多いにひっくり返された。
そして日本人は勤勉で真面目な性質が多く(私自身もルールに準ずる性格かも)だからこそミスやプレッシャーを想像した際の追い詰められる要因でもあり、(山崎佑をはじめエレナや五十嵐、そして実際には登場してないのかもしれないが「やっちゃん」など)が実際作中でも追い詰められ、飛び降りや爆発、病気で亡くなってしまうなど実際この日本でも様々な問題・事件が起きてしまっている。
これはデイリーファストだけではない。日本にある多くの会社・多くのコミュニティにて起こっているだろう。(また、羊急便の八木が作中にてデイリーファストや上層部、下のドライバーたちの板挟みによる対応によって心身が追い詰められ、終いには社長へ爆発してしまったり寝タバコをしながらエレナからの要求を無視するなど現代の我々に最も表されているのではないかと思う)
そして「サービス」。いわばこれは12か条にもある「カスタマーセントリック〜全てはお客様のために〜」がこの世界の実情、そして何よりも多くの人々を追い詰めている要素でもあるだろう。
私はこの要素が何よりも作中に起こった事件の要因であり発端であるとも考える。まぁ事件を起こした2人の犯人、デリファスの統括本部長である五十嵐、アメリカ本社のサラなど事件への影響を及ぼしたのは何人もいる為私が考える要素は間違いなのかもしれない。しかし日本の状況こそ事件を起こした要因と考えたい。
まず、毎日進化している「利便性」これが多くの人を追い詰めている。デリファスのような即日配達や破格な価格帯、大雑把にいえばスマートフォンやお店やサイトのサービスの充実。
このように多くの人が便利さを感じ、毎日多くのサービスを利用している。
このように利便性が毎日進化している裏側で多くの人が多くの仕事において仕事量が過多とななり、プレッシャーが多くかかってしまう。
キツイ仕事によるストレスによって便利なサービスを利用していき、例えば癒されたりリフレッシュすることで生活を送っていく。
これを一周として永遠に繰り返していき、このように誰もが便利な生活を送る背景には循環の切迫(作中で例えるなら山崎佑の「ブラックフライデーが怖い」、エレナのアメリカでの休職など)によって1人1人の仕事がどんどん厳しくなるのではないか。
改めて「日本の状況」というのは様々なサービスの利便性が向上していくことで多くの人が多くのサービスを使う。これによって1人1人の仕事量、プレッシャーがかかることで過労自殺が近年増え、作中での山崎佑の飛び降りとなってしまうのではないかと考える。
だからこそ、日本の状況こそが事件の発端と私は考察する。
このように「デイリーファスト」、「日本人の性質」、「サービス」など様々な状況から「山崎佑の飛び降り」へと繋がり、連続爆破事件へと発展していく。
「日本という国の状況」とはこのように考える。
そして最後のシーンで孔がセンター長に就任決定したと同時にロッカーでの山﨑佑が書き残した「2.7m/s 70kg」を見て恐怖を感じている表現には実際に起こる「2024年問題」を想起しているのではないかという考えがよぎった。
作中ではデイリーファストが羊急便や他の大手配達会社に対して配達料の値上げ交渉をした事で問題が少し解決されたが、問題は大きく解決していない。孔がセンター長になることによって働き方は全く変わらないし、現実に起こっている物流問題はこれから多く起こっていくこと等
「これからの行く末」とはこのようなことではないかと考える。
こんな長々と語って説明していったが、脚本家野木亜紀子をはじめとしたスタッフたちが多くの要素を作品に散りばめていき、表現していき、私は今作における「日本という国の状況」を訴えているのではないかと考え、感じていた。
先にも綴った要素を基にストーリーへの感想や考察を語っていったが、他にもたくさんの要素を作品で感じることができた為に「ラストマイル」としてのストーリーの高精度は唯一無二であると考える。
あとがき
本作を見たことで多くの声として「日常における今の生活を見返していこう、当たり前がどれだけ幸せなことなのか」などの感想を目にしてきた。1人1人が振り返る事で実際に浮き彫りにある問題は少しずつ変わっていくのかもしれない。
ただし私は事件でのきっかけとなった要素は今や日本国内ないし世界中で当たり前となっているものであり、長年経っても大きく変えることは不可能なものではないかと考える。今の生活は便利であるからこそサービスを利用する事から抜け出す・改善していくことは難しく、これからどんどん進んでいく社会の縮図をこの「ラストマイル」で見れたように思える。
それでも私も含めてこの作品を見た1人1人がサービスを気持ちよく利用できることへの感謝・働く者への感謝という完璧な「お仕事映画」だったと改めて大きく感じる。