「人類やアイドルは嘘をつかないと成り立たないが、正直でありたいという主人公たちの葛藤は彼女たちを大きく成長させアイドル以上に輝かせたのであった。」トラペジウム eigazukiさんの映画レビュー(感想・評価)
人類やアイドルは嘘をつかないと成り立たないが、正直でありたいという主人公たちの葛藤は彼女たちを大きく成長させアイドル以上に輝かせたのであった。
4人の女子高生の青春ヒューマンドラマ。トラペジウムとはオリオン大星雲の中心部にある4つの若い星の集まりのことである。主人公の東ゆうはアイドルグループをみずから結成するという計画を立て、全国の高校を回ってメンバーを集める。4人揃ったのでアイドルをめざす活動を開始する。やがて東ゆうと他のメンバーとの間に活動に対する温度差が生まれ4人はアイドルグループを解散する。だが4人の友情は不滅であった。東ゆうとメンバーたちの美しい友情を描いた作品。
点数3.5。お勧めします。4人の仲間を集めてアイドルを結成する話。仲間と一緒に何かやろうとする者たちにパワーをもらいました。ただし、ドラマチックな展開が少なく盛り上がりに欠けるのでこの映画は私には刺激が少ないと思った。
政治や宗教などがそうであるように人類は嘘をつくことにより成り立っている。そうしないと全人類はたちまち大ゲンカを始めてしまうだろう。アイドルもまた大勢の人に嘘をつかないと成り立たない職業であるがこの作品の4人の女子高生たちは正直でいたかったのでアイドルグループを解散する選択をする。アイドルという職業は演技や歌などで嘘をつかないといけないが4人の友情は正真正銘の本物であることがわかって私は感動した。
人類はなぜ嘘をつくのだろうか。私の答えは人類はいつも正直でいたいと思っているが嘘をつかないと人類は成り立たないからやむをえず嘘をつくのだと思う。映画の主人公、東ゆうは本当に正直な女の子であった。アイドルになりたいという自分の夢に正直だし、ファンに正直に尽くしたいと思っているし、他のメンバーに対する友情もまっすぐで正直である。でも全部をかなえることは不可能でそれでは成り立たないのが現実なのだった。他のメンバーたちも正直すぎるがゆえにこのアイドルグループは解散することになる。アイドルはしょせん嘘だが4人の友情は嘘ではなかったということだと思う。同様に人類は嘘をつくが人類の愛は本物であるとこの物語は私に言っていると思った。
この映画は4人がアイドルグループを結成するまでよりも結成してからが注目点である。4人は自分に正直でありたいがために葛藤し、その葛藤は彼女たちを大きく成長させる。2005年アカデミー賞作品賞を取ったクリントイーストウッド監督・主演のアメリカ映画「ミリオンダラー・ベイビー(2004年)」という女性ボクシングとそのトレーナーを描いた映画があるが、この映画は主人公の女性ボクシング選手が無名選手からチャンピオンになるまでよりもそれ以降の主人公とトレーナーの心の葛藤が作品の主題だった。この「トラペジウム」も女子高生4人がアイドルグループを結成してからの心の葛藤が作品の主題だと思う。
アメリカの実写映画「ミリオンダラー・ベイビー(2004年)」では後半に主人公の女子ボクサーがケガをしてボクシングができなくなる。ボクシングができない体はもはや自分ではないから自分の命もいらないと考える主人公だが彼女のトレーナー(クリントイーストウッド)はたとえボクシングができなくても主人公に生きていてほしいと葛藤する。つまり嘘(楽に死なせたい気持ち、またはキリスト教の教えに従うこと)と本音(生きてほしいという気持ち、または人間の本質)の葛藤がこの映画の主題である。「トラペジウム(2024年)」の方は4人の女子高生のアイドルメンバーが嘘(偽のアイドル活動をすること)と本音(正直に生きること)の葛藤をして結果的にはアイドルグループを解散する。私は「ミリオンダラー・ベイビー(2004年)」と「トラペジウム(2024年)」は似ていると思った。そしてこれら二つの映画で描かれる嘘と本音の葛藤は人類の永遠の悩みであると思った。
視聴:液晶テレビ(有料配信Amazon Prime Video) 初視聴日:2025年7月13日 視聴回数:1(早送りあり) 視聴人員:1(一人で見た)
2025/7/30 追記1:
日本がバブル経済期だった平成2年公開の日本映画「東京上空いらっしゃいませ」(1990年)も女子高生アイドルが主人公の青春アイドル映画であった。主人公の神谷ユウ(牧瀬里穂:当時18歳)は現役女子高生でアイドルでキャンペーンガールだったがスキャンダル絡みの交通事故により幽霊になる。幽霊になったユウは東京の上空で彼女を成仏させようとする死神をだまして再び肉体を得て地上に戻ってくる。ユウが生き返ったと思ったユウの仕事仲間で独身で一人暮らしの中年男性の雨宮文夫(中井貴一)は最初戸惑うがアイドルのスキャンダルを隠すためにこっそりとユウを自分の家に泊めて一緒に暮らし始める。新しい人生を与えられたユウは幽霊ながらも懸命に生きようとする。映画のクライマックスでは他人の結婚式に飛び入り参加してユウは歌って踊るのだがこの場面での白いドレスを着たユウのダンスシーンは本当に生き生きと生きる人間の美しさを表現していて名シーンであった。アイドルとは生き生きと生きる人間の美しさの素晴らしさを世間に伝える役割をもった高尚な職業であると思った。生きていない人間が必死に生きようとするこの作品はお金やモノはあるが本当に人生を謳歌していないバブル期の人たちへの皮肉であろう。そしてこの皮肉はアニメ映画「トラペジウム」(2024年)での生き生きと生きていない4人のアイドルたちが解散し、本当に生きていると思える道へ4人それぞれが進む結末といいたいことが同じだと思った。
追記2:
映画「東京上空いらっしゃいませ」(1990年)も映画「トラペジウム」(2024年)も人間が生き生きと生きるとはどういう事かをアイドルという職業を通して問題提起している。「トラペジウム」の主人公東ゆうと「東京上空いらっしゃいませ」の主人公神谷ユウは名前がどちらも「ユウ」である。「ユウ」は英語で「ユー(君または君たち)」の意味であろう。だからこの映画は「君」または「君たち」の物語でもあると作者は言いたいのだと思う。君たちは生き生きと生きていますか。とこのふたつの映画は問うている。
追記3:
アイドルとは何か。人間が生き生きと生きるとはどういう事であるか。何かを一所懸命にすることであろうか。家族や友人や他人など人とのつながりを大切にすることであろうか。または人類を救うことであろうか。それは個人によってひとりずつ違うのである。「トラペジウム」の4人のメンバーはそれぞれ人生の目的が違っていたがそれは当然のことだと映画は言っている。アイドルになりたい東ゆう、聖南テネリタス女学院に通う華鳥蘭子、ロボット製作を目標とする大河くるみ、顔を整形して人生を変えたいと思っている亀井美嘉。彼女たちの人生の目的は違うのが当然でありアイドルなのは一瞬の過程にすぎなかった。人間が生き生きと生きるとは人それぞれ違うし老若男女全員が違うのであろう。若い人たちだけではなく赤ちゃん、子供、青年、中年、老年と皆が生き生きと生きるためにアイドルという存在があるのであろう。そうすると赤ちゃん、子供、若者、青年、中年、老年とすべてがアイドルであるという結論になる。嘘をつかないと成り立たないような偽のアイドルは本当のアイドルではない。本当のアイドルとは生き生きと生きているすべての人であると私は思う。
追記4:
映画やドラマなどの俳優も偽のアイドルと同様に大勢の大衆の前で嘘をついて成り立っている。演技とは自分の心に関係なく大勢の前で嘘をつくことである。俳優が演技で嘘をついているのが許せなくなり私はある時期から実写映画を見たくなくなった。本当に心を揺さぶられるのは演技ではなく実際に起こった出来事である。映画で感動するのは演技を事実と錯覚しているから感動するのである。私は嘘は嫌いである。それはきっと自分が嘘つきだからだ。そういう意味では私も広義の俳優なのかもしれない。生き生きと生きるということは嘘をつかない人生をおくるという事ではないだろうか。だから人生の俳優や偽のアイドルをやめ自分に正直に生きている人が真のアイドルといえるだろう。
追記5:
「四天王」は、仏教における仏法守護の神である4体の神々の総称です。東方を守る持国天、南方を守る増長天、西方を守る広目天、北方を守る多聞天(毘沙門天)の4体で構成されます。
持国天:東方を守護し、人々の幸福を願うとされる。
増長天:南方を守護し、人々の成長を促すとされる。
広目天:西方を守護し、人々の知恵を広げることを願うとされる。
多聞天(毘沙門天):北方を守護し、福徳を授けるとされる。
(AI回答より)
アイドルの元祖は仏教の神々であろう。寺院に足を運ぶとさまざまなアイドルに出会うことができる。この「四天王」は東西南北を守護する神さまであるが「トラペジウム」の4人もまた神だったということができる。
追記6:
仲の良い友人が4人集まれば車での旅行も楽しいし麻雀の面子もそろうし丁度いい人数である。私も昔はある仲良し4人組の1メンバーであった。そこでは東ゆうのようなリーダー役の他の3人を誘う役割の友達がいたものである。その仲良し4人組で旅行などしたが年を取ってリーダー役が誘わなくなると4人組は崩壊した。実は私に内緒で新メンバーを追加して継続しているのかもしれないが彼らとは現在は連絡を取っていないので真相はわからないままである。
2025/8/2 追記7:アイドルの歴史
アイドルの歴史を考える。人類史上最大の3.5次元アイドルといえばイエス・キリストであろう。彼のストーリーは聖書という超ベストセラー本で知れ渡っており地球上で知らない者はほとんどいない。絵やフィギュアも盛んに作られており教会という名前の専門映画館も世界各地に存在する。最近流行になっているすとろべりーぷりんす(略称:すとぷり)というアイドルグループもやはりアイドルである。すとろべりーぷりんすは6人組みの男性アイドルグループであり、特徴的なのは顔をアニメにしている点である。顔をアニメにすることにより特殊な効果を狙っているのかもしれない。ともあれ彼らがアイドルの歴史の一部なのは確かであろう。
追記8:人類はなぜアイドルを作るのか
人類は群れで行動する哺乳類である。なので群れで狩りをしたり一緒に暮らして身を守ったり群れの危機には戦ったり避難しなければならない。群れのリーダーを一人決めると群れ全体での意思統一をしやすく群れの生存率があがるのかもしれない。だから人類は生存率を上げるためにリーダーを作るのだ。群れのリーダーももちろん生きている生物なのでケガをしたりしてリーダーが交代することも多かったであろう。それゆえに人類は臨機応変にリーダーを作る能力に長けているのだと思う。人類は死なない究極のリーダーを作ることを考えた。アイドルの誕生である。アイドルとは死なないリーダーである。アイドルは群れのメンバーの脳内にある概念なので死なない。群れのメンバーが群れを離れるときにそのメンバーの脳内でだけ消滅する。死なないリーダーのいる群れは強い。よって宗教は群れの生存率向上のために人類によって作り出された旧式のシステムであると思う。そして現代の政治でも大統領という役職アイドルがいるので政治も宗教の延長線上にある。だが未来には新しいタイプの群れ生存率向上システムができると思う。アイドルの話に戻そう。アイドルとは顔である。群れのメンバーがリーダーをリーダーとして認識するには顔を見ないといけないからだ。だからアイドルは顔を盛んにテレビやユーチューブで映そうとする。顔を群れのメンバーに見せなければアイドルたりえない。
追記9:なぜグループアイドルが成立するのか
群れのリーダーは一人のほうが群れの意思統一がしやすく生存率が上がるはずであるがなぜグループアイドルが成立するのか。それは群れのメンバー一人一人が全て同じではないということであろう。リーダーの決め方は結構いい加減なのかもしれない。リーダーを認識して安心感を得られればそれだけでいいのかもしれない。結論として自分のアイドルを見つければ生活の中で安心感を得られ生存率が向上する。