「星になろうとした若者の結末とは!?」トラペジウム tamjwさんの映画レビュー(感想・評価)
星になろうとした若者の結末とは!?
主人公の高校1年生の東ゆうは夢があった。それは東西南北から女の子を集めてアイドルグループをつくるという夢。なぜその夢を叶えたいのかというと、アイドルをみたとき、思った。人間は星になれるんだって、みんなを笑顔にさせて、楽しくさせる美しい星になれるんだ、だからアイドルになりたい‼️と。東は純粋で努力家である。自分の夢が決まっていて、それをしっかり言語化して、叶えようと努力する。自分の気持ちに正直な人間である。性格は悪いが、高校生という精神的に未熟な年頃から誰でもそうであろう。というか人間はみんな性格は悪いのだ。東はアイドルメンバーを集めるために奔走する。自ら色々な高校に出向き、スカウトする。メンバーの趣味を聞き出し、色々勉強し、メンバーの好感を得る。華鳥蘭子、亀井美嘉、大河くるみ、それぞれ個性的な性格をした人間である。メンバーのスカウトに成功した東は、次の戦略を開始する。メンバー全員でボランティア活動をして、グループの好感度を高めるのだ。しかし、それは頓挫し、東は機嫌を損ねる。次に行ったのは、観光地で外国人に英語で建物や歴史を説明するボランティアだ。その観光地にTV局が取材しにくるので、そこで注目を集めて、グループを売り出そうというのだ。結果は、TVではカットされて、東はガッカリするのだが、ADからの電話で外でのロケ撮影をしてみないかと提案される。これを東は受け、無事に東のアイドル計画はトントン拍子に進む。歌を歌い、踊り、TV出演、事務所に所属、東の夢であるアイドルになれたのである。これで晴れて、星になれたね、ちゃんちゃんでは終わらない。徐々にメンバー内で不満が溢れる。大河くるみが楽しくないと感じる。大河はロボット専門学校の生徒で、人様に立って何かを積極的に表現するのが得意ではない。大河は疑問に思う。本当にアイドルってこうなの?本当に有名人になって幸せなの?不特定多数の人に認知されて本当にうれしいの?大河の精神が徐々におかしくなってしまう。そして、ある日、亀井美嘉の熱愛写真が流出してしまう。東は激怒し、友達にならなければよかったと告げる。歌のときに口パクがどうのとかで、揉め、徐々にグループ内に暗い陰鬱な雰囲気が漂う。ネットでは下手くそだのアンチコメント、誹謗中傷を浴びる。メンバー内で笑顔が消えて、我慢して、辛い思いをして活動を行うようになる。何かが間違っている。明らかにそう思えた。そして、それはついにくる。大河くるみが発狂してしまう。もうやめたい‼️もう行きたくない‼️心が拒絶して、精神が壊れてしまったのだ。東は引き止めようとするが、華鳥が止める。もう解放してあげましょうと、しかし、東は暴走する。アイドルは美しいんだよ‼️人々を笑顔にして、楽しませるんだよ‼️その場面はもっとも現代人の心の声を代弁している。誰だって有名になりたい、チヤホヤされたい。誰だって、承認欲求を満たしたい。その時の東の顔は狂気そのものである。亀井美嘉は泣き、今の東ちゃんはおかしいよ、怖いよ、と言われ、東の夢は破れる。亀井に周りの人を笑顔にできないのに、アイドルなんてできないよと言われる。東は自分はアイドルに不向きな人間だと理解する。そして、グループは解散し、メンバーはやめ、東も辞める。自宅に引きこもり、食事も喉を通らず、学校にも行かずに、寝込む。母親は心配するが、東は泣くのを堪える。電車を待っている時の女子高生達の将来どうする?大学に行くのか?という話が東の耳に入る。アイドルの夢がなくなった今の自分に将来などあるのだろうか?何もなくなった自分は何を目指せばいいのだろうか?東は純粋で正直で努力家である。やりたいことや夢があれば、それに一直線に向かって進めばいいのだが、その目指すべき道がなくなった今、どうすればいいのかわからないのは当然だ。東は途方にくれる。これからどうしよう?そこでお世話になったADから電話がかかってくる。ADからは番組の音楽CDに東達のアイドルの音楽が入っていると、そして、自分は東達のおかげでとても楽しいことができたと感謝の言葉を述べた。東は涙が溢れ、泣きそうになる。その時は泣かなかったが、自宅に帰り、ベランダで、我慢せず、思いのままに泣く。その上には美しい星が輝いていた。東は学校に行くが、友達もおらず、陰で悪口を言いふらされていた。自分は夢もなくなり、何もなくなった。その時、ボランティアの人達に遭遇し、過去の自分と重ねて、自分の内面と向き合う。そして、またやりなおす決意をする。亀井に会い、過去の自分を教えてほしいと頼む。亀井と東は小学生の頃からの同級生で亀井がいじめられているのを東が守ってくれたのだ。亀井は東にあの時から東のファン1号だと言う。東はハッとする。自分の本当に大切なものに気づいたのだ。どんなに不特定多数の人間を喜ばせようと思っても、周りの人間を不幸にしては、人間として失格だと当たり前のことに気づいたのだ。そして、メンバーに謝罪する。自分の過ちを謝罪する。メンバーは謝罪を受け入れて、アイドルの思い出をそれぞれ語り合う。そして、それぞれが、アイドル時代に自作の歌詞を書いたものを東のLINEに送る。その歌詞がとてもいいし、感動した。もっとも魂を揺さぶられたし、感情的になった。私は感動して泣きそうになった。そして、彼らはそれぞれの将来の夢を語り合う。それぞれが自分の夢がある。東の夢は?往生際の悪い東のことだから、簡単に夢を諦められない。夢が東を思考させ、行動に駆り立てたのだ。簡単に夢を諦めることができるなら夢とは言わない。東は芸能関係やアイドル関係の仕事につくことを決意する。10年後、彼女達は再会する。彼女達はお互いに別々の道を歩んでいるが、表情は笑顔だ。それが彼女らの幸福を物語っている。東達は、星の写真展を訪れる。そこには、10年前に写真を撮った、自分達の姿が写っていた。そこには、hello、10年後の私からあなたへ、一言と書いてある。夢へ向かって、一生懸命考え、行動し、フィードバックする。そこには、失敗や挫折や悔しさ、悲しさ、自分の弱さと向き合うことになるが、その過程は絶対に無駄にはならない。過去があるから今がある。必死に一生懸命努力し、考え、行動したことは、絶対に未来に生きてくる。それは絶対に裏切らないと。彼女はそれを10年経って実感している。だから、10年後の私からあなたへと、東は「ありがとう」と過去の自分に言葉を送る。未来の自分のみが過去の自分を肯定できるのだ。最後に、東ゆうは星になれたのだろうか?星に憧れ、星になろうと努力した。しかし自分は美しい星だった。自分は美しい星になっていた。この作品は懸命に夢を追いかけ、努力する普通の人間となんら変わらない。芸能界だろうが、なんだろうが、そこで生きている人と我々は変わらない。星というのは憧れているだけではなれない。現実で行動しないとなれない。懸命に努力することで星になれるのだ。星になろうと懸命に努力し、思考し、行動する。それ過程が何より尊いし、己を星にならしめるのだ。私はとても感動したし、EDの曲も感動した。勇気も非常にもらった。昨日の星より今日の星の方が明るく照らされるは本当にいい歌詞だと思った。何か目標や理想に向かって、一生懸命努力している人、勇気を持ちたい人は絶対に見た方がいい。