「向き不向き」トラペジウム U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
向き不向き
原作未読なれど、監修に原作者の名前があったからそうズレた物語にもなってないのだろうと思う。
東さんが無茶苦茶有能なプロデュース能力を持ってて驚くのだけど、アレが若さというものか。
アイドルとかに代表される特殊な職業って、成れる人は多いのかもしれないけど、続けていくにはそれ相応の特性が必要なんだなと思える。
原作は乃木坂を卒業した高山一実さん。
ご自身の体験ってわけではないだろうけど、そこかしこに経験者だからこその台詞があるようにも思える。
おそらく様々なものを見てきたのだろうと思う。楽しい事もそうではない事も。
だが、詮索したいわけではないので、それは一旦置いておく。
構成は結構しっかりしてた。
アイドルになりたい東さん。彼女が思う勝てる戦略を記したノートを片手に作戦を遂行していく。
メンバーが集まり、結束を深める。
お城のボランティアに目をつけた理由がさすがだとは思うも…その野心が運をも引き付けた事にたじろぐ。
著名人が口を揃えて話す「売れるには運が必要」ってのはこういう事か。
運を待ってるだけではなくて、彼女は運を掴める場所で待ってたわけだ。
…随分とか細い糸にも思うけれど、地方の女子高生が考えうる最大限の接点が城だったのであろう。
そして「出会い」
東西南北に目をつけたADは10年後、すっかり垢抜けてた。彼女と出会ってからはグングン時間が進む。
そしてアイドルとしてデビューする。
多忙な時期を経て不和が生まれ東西南北は解散する。
「アイドルが楽しくないわけないじゃない!」と訴える東さんなのだが、目がいってた。アニメ故の誇張表現だとは思うのだけど、原作ではどんな文章だったのだろうか?
ちょいと吹き出す。
アレで良かったのかなぁと。イッてるにしても方向性が違うような気もしてる。
時折挟まれる舌打ちが印象的だ。高山さんの持論に「舌打ちとか溜息とかって幸せが逃げてくよ」みたいなモノがあったのだろうか。
他の3人の退所報告を浜辺で聞く東。
「君はどうする?」
「わかりました。やめます。」
振り絞るような重く低い声が、胸の真ん中を抉る。
自分の夢を諦める瞬間ってどういうものなのだろうか?想像したくもないけど、彼女の胸の内は文字通り破れたようだった。
挫折が無慈悲に彼女を襲う。
けれど、彼女の夢は彼女を逃しはしなかった。
番組制作のアルバムに収録されるデビュー曲。彼女達が一つの目標に向かい手にした成果だ。
時間を経て離れ離れになったメンバーが集う。袂を分けても、友達なのは変わらない。
そして、東は「諦められないんだよね」と笑う。
再出発なんだろうな。
10年後、諦めなかった東はアイドルになってた。卒業間近なのかもしれないけれど、彼女がなりたかったキラキラ輝く存在になってた。
野心を抱き作戦を練って運と出会いを手繰りよせ、一所懸命前進し、諦めない。そうやって彼女は彼女自身の夢を掴んだ。
途中に描かれる不和の元凶は彼女ではあるものの、本作で描かれる「アイドル」って職業には向き不向きが明確に存在すると強烈に残るエピソードでもあった。
とまぁ…
王道な展開を見せるも⭐︎3.5なのは、なんだかのっぺりした印象を受けたからだ。起伏の幅が弱いというか…色味のせいもあるのだろうけど、彼女達があまり勘違いをしないからかなぁ。
城のボランティアの爺さん2人が明らかに女性の声で、予算なくて出演者の女性に声を当てさせたとしても、下手すぎんだろとか思ってたら、ご本人と同僚だった。
ははは…😅