「プロ意識に欠けるアイドル」トラペジウム やまちょうさんの映画レビュー(感想・評価)
プロ意識に欠けるアイドル
原作未読で、いわゆる最近話題の集団アイドル?にも全く興味が無いのですけど、アニメの絵柄が可愛かったのでついつい鑑賞してしまいました。
序盤、アイドルを目指す主人公東ちゃんがアイドルグループ「東西南北」の人集めに正に東奔西走します。グループ結成以後はメディアへの露出や売り込みまで一手に担い、まるでアイドル兼プロデューサーみたいな立場で奮闘するストーリー。
「アイドルという虚像」を作り出すためには東ちゃん自身あまり興味のないボランティア活動も「好印象を演出する過去の経歴、大手メディアに接触する手段」として利用するあたり、ほんと分かり易い上昇志向、欲望の発露が見られて逆に新鮮だったのですが、その裏の戦略はともかく見せる態度の悪さ、表情が醜悪すぎて興醒めです。
特に相手に対して不満な時に何度か見せた彼女の「チッ」っていう舌打ちが無意識に出ちゃうのは普通の家庭に育った高校生女子の仕草としてあり得ない。平気で食べものを路上に捨てて隠したりするし、育ち悪すぎ(笑)。
外見が抜きん出て美しいわけではない人間(失礼)がアイドルとして戦略的にメディアへの露出しようとする際、綺麗事は言ってられないのは分かります。
ただ、それらが性格の悪さに直結するかって言ったらそうじゃないと思うし、実社会でもそれは証明されています。例えば長く芸能界に残る人って裏方さんにも気を遣い、常日頃からファンサービスに意識がある方がほとんどというじゃないですか。これは伝聞ではありますが実生活と照らし合わせても真実と思います。
最終的には、主人公から協力者が離れることで彼女の今までのやり方の一部は否定されることになるのだけど、この「手段を選ばない上昇志向=性格の悪さ」としか捉えられない時点でこの物語の底の薄さが露呈してしまいます。元アイドルさんの原作ってこのあたりはどうなってるんだろうと、最近の原作無断改変問題を絡めて疑問を持ちました。
また、言及されるかどうか期待していた「自分を応援してくれるファンに対する感謝の気持ち」ってのが具体的な行動として最後まで明示されずに残念でした。
例えば東ちゃんに対するファンレターの数が他のメンバーと比較し少なくて精神的に落ち込む描写がありました。
おそらく内容確認さえせずゴミ箱直行モードを暗示してるんでしょうけど、少なくともその中に車椅子の可愛い女の子を始め、ボランティアで実際接触した方々からの手紙があったかも・・・という認識があってしかるべき。
少なくとも全部の手紙に一応目を通す、場合によっちゃ感謝して部分的、選択的にでも返信するのがプロのアイドルのしかるべき行動というものじゃないでしょうか。ファンが返信みて感動し過去のボランティア活動の掘り起こし含めてSNSで拡散してくれるかもしれないのに。そこを期待して戦略的に動くのがプロの本当のあざとさなんだけど、分かってないねぇ。
東ちゃんは最終的にそれなりの着地点を示しますが、この「一人一人のファンあってのアイドル」という視点、描写が最初から最後まで抜け落ちていて、見た目以外で推せないアイドルの典型の様で残念でした。
むしろ、彼女以外のメンバー3人が皆、あざとさも無く基本善人で終始こちらに共感してしまう始末。
この流れは、この作品の本意じゃないと思うのだけど、どうなんでしょうかね。
返信ありがとうございます。
解像度が高いほどヘイトが高まる主人公…笑
脇にいれば、物語に波風立ててくれる便利キャラなんですけどね。
再会してもまったく気づかず、卒業アルバム見て全然違うと感じる変化。
そこに「顔を変えた」だと、明らかに整形を示唆してたと思います。
高校生、あるいはそれ以下でそうまでする闇は、どうしても聞き流せませんでした。
舌打ちについては、難しいですね。
ある声優さんは昔、リアルなものから口で「チッ」と言うなど様々に使い分けると言ってました。
主人公の性格的にリアル路線で正解なのでしょうが、より嫌いにもなりますよね。笑