「「最終章」ということに偽りはないが、それで名残惜しいとも思えない」スマホを落としただけなのに 最終章 ファイナル ハッキング ゲーム tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
「最終章」ということに偽りはないが、それで名残惜しいとも思えない
成田凌演じる浦野が、主役に昇格したのは良いのだが、その分、猟奇的でダークな魅力が薄れてしまったのはもったいない。
それでも、韓国のホテルで罠にはめられた浦野が、井浦新演じる兵藤の手下を返り討ちにするところぐらいまでは、まだ、サイコパスの殺人鬼らしさがあって良かったのだが、終盤で、彼が、北川景子演じる麻美への執着を捨てて、自分を愛してくれる女性との生活を選ぶくだりでは、その、「善い人」への転身ぶりに落胆せざるを得なかった。
また、これまでは、普通の女性がストーカーの標的になるという「日常に潜んだ怖さ」が味わえたのだが、今回は、日韓首脳会談でのテロを防ぐという話になったせいで、スケールはアップしたものの、サスペンスが一向に盛り上がらない。
クォン・ウンビ演じるヒロインも、クールな役柄の割には、純粋で一途過ぎて、「悪女」としての魅力に欠けるのは残念としか言いようがない。
見せ場の一つでもあるテロのシーンでは、ドローンによる攻撃に何の対策も講じていなかった警察の間抜けぶりもさることながら、20億円をポンと支払ってしまう政府の気前の良さにも呆れてしまう。
ミステリーの核心部分になっている「butterfly」の正体にしても、早い時期から真飛聖演じる窪田か兵藤かの二択に絞られて、推理する面白さが味わえないし、前作で「犯人と思わせておいて、そうではなかった人物」が、今回は犯人だったというオチにも、釈然としないものを感じてしまった。
登場人物達のキャラクターに強い影響を及ぼしていると考えられる、親による子供に対する虐待という問題も、表面を撫でているような描写しかなく、掘り下げ不足の感が否めない。
シリーズを通じて多くの出演者が続投する中で、物語のキーパーソンとも言える北川景子が本格的に出演していないのは致命的に感じられるし、せっかくの髙石あかりが、ほとんど活躍しないのも物足りない。
さらに、いくら韓国でブレイクしたからと言って、日本人の大谷亮平や、佐野史郎までが韓国人を演じることにも違和感を覚えざるを得なかった。
唯一、ある人物が剥製にされていたラストには、意表を突いた面白さが感じられたのだが、それと同時に、今作が、正真正銘の「最終章」であるということも明らかになって、もう続編が作られないということに、少しホッとした気分になってしまった。