「いつかいなくなる、ただひとりのあなた」ぼくが生きてる、ふたつの世界 どん・Giovanniさんの映画レビュー(感想・評価)
いつかいなくなる、ただひとりのあなた
だいだい いつもそうなんですが、ふたりの同居している家族に今夜(ホームシアターで)何を観ようか相談というか聞いてみたんです。
Yは「考えさせられる映画がいいな」と言い、Aが「泣ける映画がみたい」とのことなので、ふたりのニーズに答えられそうな映画をNetflixでみつけました。
東北弁はネイティブなので聞き取れるのですが、字幕付きで鑑賞しました。
結果的に良い選択でした。
原作も有料パンフレットも未読です。
キャメラウォークの ブレというか グラつくのが氣になりました。
淡々と時系列で主人公(大ちゃん:吉沢亮)の成長過程を観るといったスタンスで、ホームビデオっぽく演出してリアル感があります。
木製の箱に入ったチャンネルを回すタイプのブラウン管テレビから始まって、リモコン型のブラウン管テレビになり、ファミコンとスーパーマリオブラザーズのカセットを買ってもらって、後の大ちゃんの部屋にはゲームボーイが置いてあって、おそらくお小遣いで購入したであろう漫画本を読んで過ごします。
それからラジカセがあって、いかにも団塊ジュニア世代の子ども時代の描写に「ああ、こうだったなぁ」と懐かしく思ったりするシーンが多くありました。
舞台は宮城県の海が比較的近い場所。2011年3月を予感させます。
劇中で、アメリカ、フランス、カナダの共同製作の『Coda コーダ あいのうた』(2022年日本公開)のことを言及したということは、今作はリメイクではなさそうですし、邦画らしい視点で東日本大震災を描く映画なのかと思いました。
母親の回想シーンは、きっとそういうことだろうし、『あまちゃん』(主演:能年玲奈、現のん)のようにトンネルを抜けると悲惨な光景が!のようなことになるかと思っていた矢先、「letters」(下川恭平)のアコースティックギターと声のハーモニーが美しいエンデェングになり、原作者が今作の主人公だったと最後に知りました。
震災前の家族、特に母とのことが描かれていて、メンタルの強い祖父母がいたから母がいて、父と出会って恋をして、赤ちゃんを産んで、それが自分(大ちゃん)で...と、命の歴史と自分と世界の関係を20代くらいの頃に理解したのだと思います。
一緒に観たYは泣いていました。
Aは泣かず無言で何かを考えていました。
人は自分に足りないものを求めてしまうものなのかもしれません。
タイトルについて考えてみます。
“ぼくが生きている”というのは当たり前のことですから、わざわざ言う必要がないのですが、敢えて言うというところに意味を感じます。
“ふたつの世界”は、交流としての「聞こえない人たちと聞こえている人たち」、単純に場所としての「田舎と都会」、「外の世界を知らずに電車の中しか見えなかった頃と外が見えてからの世界」、「生と死」、異なる二つのことを言っていることは確かだと思います。
何事も表裏一体であるという観点からみて、タイトルの対義語を考えてみるのも楽しいです。
ああだこうだと考えることができますし、考えているうちに泣けてくる作品です。
題名からの考察などしない私にとっては、とても面白く読ませていただきました。
場所や時間から、てっきり、「あのシーン」があるのだろうと思っていたので、ないままで終わったのはとても嬉しかったし、私にとってのこの映画の価値を高めてくれました。
どん・Giovanniさま
追記しても誰も気付かなさそうなので、コメントさせてください😊
第34回映画批評家大賞、作品賞・主演男優賞・助演女優賞・編集賞、最多4冠受賞。
日本で唯一のプロの映画批評家による映画賞で、昨年の公開作品を対象にした最後の映画賞です。
賞レースのオープニングのTAMA映画賞と、大トリの批評家大賞の受賞になります。
授賞式は6月9日東京国際フォーラム、また授賞式の配信があると良いですね😉
4/29に埼玉県大宮駅西口にOPENする、ミニシアター+カフェ+シェアハウスの複合施設「OttO(オット)」。
オープニング上映作品は『ぼくが生きてる、ふたつの世界』、4/30は呉美保監督のアフタートークがあります。
大宮には映画館が無かったそうですが、「映画館に住もう」って発想がステキすぎますよね😆
昨年9月公開の作品が、7ヶ月過ぎて4月になっても、映画賞受賞のニュースがあり、劇場上映が日本のどこかでずっと続いていること、小さな奇跡だと感じています😌
どん・Giovanniさま
>さすがマイキーじゃなかった、吉沢亮さんですね。
このコメントで思い出しました。『東リベ』のレビューが、どん・Giovanniさんとの出会いでした☺️
YouTube情報、第3弾です(そう言えば、予告編のナレーションも下川恭平さんの声でした)
「第34回TAMA映画祭TAMA CINEMA FORUM〜第16回TAMA映画賞授賞式」、吉沢亮さんの最優秀主演男優賞の受賞スピーチが、アミューズオフィシャルチャンネルで配信されています。
TAMA映画祭の公式チャンネルでは、特別賞を受賞した呉美保監督と吉沢亮さんのわちゃわちゃトークも見れたのですが、3月末までの期間限定アーカイブで残念でした。
キネマ旬報の表彰式は、日本アカデミー賞と違って、受賞スピーチに時間制限や編集カットが無いので、招待状を手に入れて式に参加するか、生配信で中継を見られたら、完全版で楽しめます。
米アカデミー賞授賞式の『コーダ』と同じように、キネマ旬報ベスト・テン表彰式でも、忍足亜希子さんの登壇時とスピーチ後に、会場の拍手は手話の拍手に変わって、手をヒラヒラさせていました。
どん・Giovanniさま
同じ映画を何度も観ない方だと思いますが…😌
呉美保監督はこの映画のラストを決めてから、映画制作を始めたそうです。(この映画のラストが好きというレビューやコメントを、たくさん見かけました)
1つ目はラストの、PCの画面に映画のタイトルの文字を入力するシーン。主人公の五十嵐大が原作者で、ノンフィクションの映画だと分かるシーンです。
2つ目は終盤の、親子で過ごした上京前の1日と駅の回想シーン。このシーンを観てから映画をもう一度観ると、大が上京してからの後半の日々が違って見えてきます。
(駅の撮影は嵐のような天候、雨の中いきなり晴れてテスト無しの本番、吉沢亮さんの顔に光が差した瞬間のあの表情は一発OK、カット後にまた雨で吉沢亮恐るべしだそうです)
実家から無言の留守番電話がある度に、心配してバイト中にすぐかけ直したり。
大の言葉が聴き取れなくても、補聴器で音としての感覚なら伝わるお母さんのために、部屋で大きな声で電話をかけたり。
引越荷物も片付いていない一人暮らしの部屋で、買ってもらったスーツだけが大事そうに壁にかけてあったり…
MVを見ていたら、色々なシーンを思い出してしまいました😢
YouTubeでは、キネマ旬報ベスト・テン表彰式のアーカイブ配信で、助演女優賞の忍足亜希子さんの受賞スピーチも見られます。(招待状をいただいたのに、開場に間に合わず生中継で見ていました)
※長文コメント連投失礼しました。
コメントありがとうございます。
やはり舞台が日本だとしっくりきますね。コーダは大分あけすけ過ぎで・・当局の言いつけを聴かないのもちょっと日本じゃあり得ないですから。
共感ありがとうございます。
あの祖父母、そしてお父さんも・・成長するにつれ大くんは、どこか醒めてるというか諦めてる様な感じになっていったのだと思いました。しかしグレずに素直な所は残して自立出来ていく、やはり愛情を再確認した駅のシーンにぐっと来ましたね。
どん・Giovanniさま
コメント返信ありがとうございます&お詫びさせてしまって申し訳ありませんでした🙇
レビューを読んだ後で、コメントをだらだら書き直して遅くなった私に全ての原因があります🙅
お詫びに出演情報を🙋
下川恭平さんは、呉美保監督の『きみはいい子』で子役出演した縁で、エンディングソングを歌っています。五十嵐大(吉沢亮)が手話サークル仲間と、誕生日のお祝いをするお店の店員役で出演もしていました。
もう1人🙌『侍タイムスリッパー』主演の山口馬木也さんのマネージャーが、五十嵐大(吉沢亮)のバイト先のパチンコ屋の店員役で出演していました。「侍タイファミリー」の間で、『ぼくが生きてる〜』も良い映画だから観よう!という声が、SNSで拡がっています🙆
どん・Giovanniさま
共感とコメント、ありがとうございました😊
一つ前のコメントが何だかしっくりこなくて、削除して書き直している間にコメントいただいてました😅
>今作は、鑑賞中よりも レビューを書いている時のほうが 涙が多く出まして、熟成ですね、評価がどんどん上がっていくのです。
そうなんです…それでレビューが書き終わらなくて、年を越しそうになって、クリスマスに慌てて下書きアップしました。
>さっそく YouTubeで期間限定のMVを 観ました。映画を思い出せて良いですね。
10月までの1年間限定でしたが、Blu-rayの特典映像になったため、6/25発売までのYouTube公開になってしまいました。
>ところで、コメントにあった 3対とは どのような意味なのでしょうか。もしよければ教えて欲しいです。
↓
>>“ふたつの世界”は、交流としての「聞こえない人たちと聞こえている人たち」、単純に場所としての「田舎と都会」、「外の世界を知らずに電車の中しか見えなかった頃と外が見えてからの世界」、「生と死」、異なる二つのことを言っていることは確かだと思います。何事も表裏一体であるという観点からみて、タイトルの対義語を考えてみるのも楽しいです。
3対でなくて4対の対義語でした。「生と死」を数えそびれてました。
私がこの映画を昨年のベスト1に選んだ最終的な理由が、悲劇的で直接的な「死」を描かなかったことでした。映画に登場するのは、祖父の加齢による病死、それも仏壇と会話だけでした。
ここ数年で鑑賞した作品を振り返ると、殺人も自死も余命も登場しない映画は、多分『ドラえもん』くらいしか無いことに気付きました。『コナン』でさえ、人が殺されるのは当たり前の世界観ですから…😓
どん・Giovanniさま😃
>いつかいなくなる、ただひとりのあなた
このレビューのタイトルで泣きそうになりました。こういう1行が書けるようになりたいです。
この映画は初日にバリアフリー字幕で観て、1ヶ月後にもう一度観に行きました。レビューを書くのに3ヶ月以上かかって、クリスマスに下書きをアップした未完成レビューのままです。
パンフレットには、完成台本が丸ごと載っていて、映画のラストが「2011年春」となっているのを探してホッとしました。原作文庫本の見出しには、東日本大震災と優生保護法の文字を見つけて、すぐに読む勇気がありませんでした。
エンディングソングの歌詞を英語にした理由は、監督が「聴こえる人にも聴こえない人にも、劇中の母からの手紙を字幕の文字で読んでほしかった」からだそうです。YouTubeで限定公開されている、この曲のMVが大好きです。
原作は五十嵐大さん(1983年生まれ/映画の吉沢亮さんの役と同じ歳)の自伝的エッセイ、『ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと』。
映画化にあたり改題された『ぼくが生きてる、ふたつの世界』。「ふたつの世界」が何を意味しているか、この映画を観た友人達と話した感想で出たのが、どん・Giovanniさんのレビューにあるように「3対の対義語」の世界です😉