「優しいお父さん、お母さん。」ぼくが生きてる、ふたつの世界 Buttonさんの映画レビュー(感想・評価)
優しいお父さん、お母さん。
ろうあ者を両親に持つ五十嵐大の成長物語です。
この映画は大と両親の日常を描くドキュメンタリー作品のようです。何か事件が起こる事はありません。ヤクザ者の大の祖父が賭け事に負けて暴れるぐらいです。といっても誰かが傷つくことはありません。
大の母親はとにかく優しいのです。自身の事で大に迷惑を掛けているという引け目もあって、大が何をしても決して大を叱ることはありません。とにかく「大ちゃん、大ちゃん」なのです。この子だけは幸せになってほしいという想いが伝わってきます。
大は幼い頃はお母さんが大好きな想いだけで進んでお母さんを助けようとしますが、成長するに連れ自分の両親が周りの両親と違うことを自覚し、両親を疎ましく感じるようになります。母親を授業参観に呼ばなかったり、自身が上手くいかないことを両親の障がいのせいにしたり…。
20歳になった大は父から東京で生活することを勧められます。父親自身がろうあ者同士の結婚を周囲に反対され東京に駆け落ちした過去を語ります。東京に出て、大にもっと大きな世界を知って欲しかったのだと思います。
東京で暮らすことになった大は自活することの厳しさを知ることになります。そして、大と両親との関係だけでなく、広くろうあ者の実情を知ることになります。
初めて帰省した時、実家に着いた時の大はとてもいい顔をしていました。東京に行く前の表情とはまるで違っていました。そこには成長した大の姿がありました。
ラストの大の回想のシーンで、東京に行く前に母親は大の為に一緒に大のスーツを買ったり、食事をします。最後に母が「今日はありがとう」、「何が?」、「皆の前で手話をしてくれて…。」、大が今まで母親を傷つけていた事に気付き号泣します。このことが無ければそれから東京に行く大が成長することはなかったように思います。
何かが不自由であることがこんなにも繊細な親子関係を育むのなら、世の中の全てが大のような親子関係なら、もっと優しい社会になるのではないか、そう思いました。
みかずきです
大の両親、優しくて自然体で穏やかで、素敵でした。
聴覚障害者であることをしっかり受け止めあるがままに生きています。
高い自己肯定感が両親の優しさを支えていると感じました。
ー以上ー