劇場公開日 2024年10月4日

「幼馴染男子三人の友情の触媒としての謎の生物「ふれる」の日常ドラマは面白く楽しめて後味も良い」ふれる。 ミラーズさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0幼馴染男子三人の友情の触媒としての謎の生物「ふれる」の日常ドラマは面白く楽しめて後味も良い

2024年10月4日
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鑑賞方法:映画館

『あの花』『ここさけ』『空の青さを知る人よ』などの青春秩父三部作を制作した監督・長井龍雪、脚本家・岡田麿里、キャラクターデザイン・田中将賀の名トリオの作品で、結構贔屓にしていた面子なので久しぶりの再集結は素直に嬉しい。

今回は秩父が舞台ではなく、メインは大人になった幼馴染三人が暮らす新宿区高田馬場周辺での共同生活が主軸になっている。

島生まれでコミニケーションが上手く取れない子供時代と島の守り神的存在の謎の生物「ふれる」を介して繋がっている三人の設定がなんとも奇妙で面白いが、キャラも三者三様に悩みやクセが強くて、更に加わる女性二人の性格も捻りが、ありこの辺は岡田脚本の卓越した部分で楽しめる。
ストーカーネタの扱いが軽いエピソードになっているのは意外だが主題では無いのでアレで良いと思う。

前半に女性二人が共同生活に加わり、ちょっとした多幸感を観客に提示してその後のイタイ展開で落とす積み重ねのタイミングも上手い。

「ふれる」の能力によって通じあっていたと、誤解していた三人の戸惑いや焦りも丹念描写されており、声優として担当している役者陣も適材適所で好演だと思う。
俳優と声優だと台詞の発声が違うのか、メインの女性二人は実力派で、ちょっとしたセリフの発声による解像度が高いのだが、誇張気味な印象もあり男性陣の発音のバラツキも感じる面もあったが、ややどもり気味のメイン主人公でもある秋役の永瀬廉はハマっていて良い。
作画的や演出的には、「ふれる」珍妙な可愛らしさや190クラスの高身長である「秋」の窮屈な挙動を台所やバーカウンターでさりげなくみせる動きのつけ方にこだわりがありキャラクターデザインと作画監督の田中将賀氏の今回の狙いだと思う。アニメとしても近年テレビと劇場アニメで、京都アニメーションを凌ぐクオリティと量を制作しているCloverWorksの体制も凄いと思う。(『ぼっち・ざ・ろっく!』の続編もやって欲しいけど発表がない!)

気になるのクライマックスの運動場の展開に見せ場やケレン味が弱くて盛り上がりにかけ、長井監督の他の作品にも若干感じるのだが、同じ東宝アニメ組ローティションに入っている新海誠や細田守と比べると映像は遜色ないけど淡白な印象をうける。(作品内容のスケールは違うけどそれはそれ)

総体的にコミニケーションの難しさやあり方を描きつつ社会人よりの青春を見せる良作で後味も爽やかなのでオススメできる作品

ミラーズ