- 予告編を見る
私の家族のレビュー・感想・評価
全2件を表示
当事者目線を大事にする取材
TBSのジャーナリスト、久保田智子さんが自身の家族についてつづった作品。彼女は、特別養子縁組で子どもを授かったのだが、それをきっかけに自らもジャーナリストとして特別養子縁組の取材を続けていた。同時に自分の家族も記録も撮りため、それらをまとめたのがこのドキュメンタリー作品だ。子どもに養子縁組の事実を伝える「真実告知」のあり方が映画の中心になっているが、そこから広げて対話することの大切さを描く内容になっている。久保田さん自身の両親との対話、さらには特別養子縁組に子どもを出さざるを得なかった女性との対話、そこから社会の格差問題なども浮かび上がってくる。テーマを押し付けない、パーソナルなレベルで綴られた映像の背景にしっかりとしたジャーナリストとしての矜持が浮かび上がる素晴らしい作品だった。
特別養子縁組の当事者だからこそ、取材対象者の敷居そ下げ、丁寧に話を聞きだすことができるのだろう。久保田さんのジャーナリストとしての能力の高さも感じさせるし、やさしさにも溢れた作品だ。
夫婦の覚悟と少しの疑問
元気良く仕事をしていた女性アナウンサーが、不妊症であることがわかり、結婚を諦めていたが、求婚者が現れ、一緒に考えていくことを認め合い、結婚。特別養子縁組を選ぶまでには、夫も直ぐには同意しなかったようである。両親もそうだろう。
父親、母親へのインタビューは、歯切れが悪かった。映画になって一般公開されることを前提に、娘を前にして悪かったことを言うのと、一般公開されるとしても、第三者が取材するのとでも、少しは違ったかもしれない。妹の遺児たちがいたようだが、その子たちを引き取って育てるという選択肢は考えなかったのだろうか。
いざ引き取って育てていこうとする段階になって、自分で産んでいないコンプレックスが生じたようである。これは父親以上に感じることかもしれない。
夜尿の原因の一つに、被虐待が挙げられることもあるけれど、生まれて直ぐ引き取るのなら、それは該当しないであろう。
物心つかないうちから「生みの親」という言葉に慣れさせるのは、隠し事をしない、という点では良いけれども、その意味を知ったときの戸惑いは確実にあるだろう。そのときに揺るぎない愛情で受け止める覚悟は必要だろう。まだまだ予断を許さず、人生の節目節目で撮影した集大成を観ないと安心できない気がする。
全2件を表示