劇場公開日 2024年8月1日

「見事なアップデート」インサイド・ヘッド2 ありのさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0見事なアップデート

2024年8月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

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 前作のヒロイン、ライリーが思春期を迎えたということで、彼女の中の感情はより複雑になっている。前作のヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリに加え、シンパイ、イイナー、ダリィ、ハズカシといった新たな感情キャラが登場してくる。思春期ならではのアンビバレントな心情がユーモラスに表現されていて、今回も面白く観ることが出来た。

 ただ、擬人化した感情キャラが繰り広げる脳内アトラクションムービーというアイディア自体は前作でほぼ出尽くした感があり、新鮮さという点では若干物足りなさも覚えた。どうしてもアイディア勝負のような所がある作品なので、このあたりの既視感は拭えない。

 また、少し突っ込みを入れたくなる個所もあった。大人になるにつれて感情キャラが増えるのであれば、前作でライリーの両親の脳内にどうしてシンパイやイイナーたちがいなかったのか?一応言い訳がましくフォローはされていたが、どうにもスッキリしない。元々続編を製作するつもりはなかったのだろうから、この辺りは致し方がない。

 物語は、古い感情のヨロコビたちと新しい感情のシンパイたちの対立を中心にしながら、ライリーの心の成長も描くというものである。決してスケールの大きなドラマではないが、この年頃であれば誰もが経験したであろう物語で素直に楽しめた。
 前作同様、挫折や後悔、ネガティブな感情がその人の成長の肥やしになるというメッセージも極めて普遍的で、老若男女問わず多くの観客に突き刺さるのではないだろうか。

 また、記憶の保管庫で登場するカートゥーン風なキャラやメイド・イン・ジャパン的なゲームキャラも個性的なビジュアルで良い。中でも、クライヒミツというキャラクターは、俗にいう黒歴史を思わせるキャラで出色である。誰にでもこうした記憶の奥底に隠しておきたい過去というのはあるのではないだろうか。

 感情たちのドラマの一方で、本作ではライリーの現実を描くドラマも展開される。将来に対する期待と不安、葛藤は、幼少時代を描いた前作以上にドラマ的な深みが感じられる。

 このような形でライリーの成長を描いていけば、更なる続編も期待できそうである。次は恋愛や嫉妬といった感情が出てくるのだろうか?いずれにせよ、トータルのコンセプトがしっかりと確立された作品なので続きは作りやすいように思う。

ありの