劇場公開日 2024年8月1日

「いわゆる「ポリコレワールド」ではないもののわかりにくい(字幕版)。」インサイド・ヘッド2 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5いわゆる「ポリコレワールド」ではないもののわかりにくい(字幕版)。

2024年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

今年274本目(合計1,366本目/今月(2024年7月度)37本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。

(前の作品 「劇場版モノノ怪 唐傘」→この作品「インサイド・ヘッド2」→次の作品「このろくでもない世界で」)

 前編は見たかな…。レベルです。いずれにせよ前編の知識が前提にされることはありません。
また、ディズニー映画特有の「日本語吹き替えばっかり」に関してもテレワークのフレックスタイムをうまーく利用して字幕版で見たのですが、字幕版は特有の落とし穴があります(なお、字幕版をうまく選べたのですがやはり大阪市とてその手の映画を「原語で」見たいというのか外国人の方多めでした)。

 および、ディズニー・ピクサーシリーズで時々ある、いわゆる「ポリコレ論」に関してはほぼ感じられず。コーチの方が黒人の男性の方だったと思いますがその程度です。ほか個々出ていたのかもしれませんが特段強調する部分はなし。

 ストーリーとしては、アイスホッケーの強化試合の集まり?に参加することになった主人公の女の子ライリーの悩みと、その「心の中」を操る精霊(?)を描いた物語…といったところですが、前編を読んでいないとちょっと読み取りづらい部分があります。

 アイスホッケーに関するルール(ペナルティに関することなど)は常識扱いなので注意です。
そしてこの映画、「ポリコレ論はあまりない」と書きましたが、「各国のことを取り上げすぎ」な部分があり、映画内だけでラテン語、フランス語、スペイン語が出ます。スペイン語に関してはかなりわかりづらく、前提となる知識を持っていればわかりますが、この映画は全編英語であり(一部ラテン語等も出る)、スペイン語圏の方が積極的に見ることはないと思いますが、おそらく理解ができないのでは…と思います(この点後述)。

 総じてみると字幕版はこの「言語ネタ」(特にスペイン語ネタはある程度の知識を要求する)が厳しく、その点で難易度が跳ね上がりすぎで理解が難しいのが難点です。この映画に関しては、無難に吹き替え版を選んだほうが良いだろうというところです。

 採点は以下まで考慮しています。

 -------------------------------------------------------------------------
 (減点0.5/「オルビダモス」の意味するところが理解しがたい)

 後述しますが、カタカナでしか出ませんが、 olvidamos とあてられるところ、この意味を理解するのはもう知識勝負大会ではないのか(リアルクイズ大会状態なのではないのか)といったところです。ただ、アメリカでは南米ではスペイン語が普通に使われるほか、スペイン系移民も一定数いるため、スペイン語は一定程度常識扱いで(だから、高校にもスペイン語は第二外国語にもあるし、展開上もそうなっている。後述)、日本では逆にスペイン語をそうそう使うことはないので(愛知・静岡西部などで南米系の外国人を扱う行政書士はある程度わかるがという程度)、ここは知識・文化の差が出ます。

 なお、減点対象からは外しましたが、エンディングロールは脅威の16分(スマホにて確認)。13分ごろと16分ほどでいわゆる「おまけシーン」があるので注意です(いつ終わるのか謎でスマホ等取り出している方が他にもいましたが仕方がないと思います)。
 -------------------------------------------------------------------------

 (減点なし/参考/「オルビダモス」とは何か)

 エンディング近くになって登場する「オチ」のシーンです。誰が話しているかは本質論ではないので、A/Bなどで表します。聞き取れた範囲です。

 A:  Oh! Riley has a Spanish test tomorrow.
   (そういえば、ライリーは明日スペイン語のテストがあるんだっけ?)
 B: Oh! You’re right! We totally "olvidamos", meaning "forgot"!
   (そうだった。私たちは完全に "olvidamos" 、つまり「忘れいていた」よ)

 …です(この点、かなり海外版でも意味が分からないと話題になり先行公開のアメリカ等では質問が多い部分)。

 「忘れていた」ということから推測がつくように、この「オルビダモス」は olvidamos で、原形(辞書形)ではolvidar になり、英語でいう forget の過去形にあたるものですが、forget 「忘れる」からスペイン語のこの動詞は類推がまずできません。かつ、forgot とあるので過去形ですが、過去形の中でも、スペイン語には「点過去と線過去」があり(この点後述)、その「点過去」(ある過去の一つの時点に着目した過去)の、動詞 olvidar の「1人称複数・直説法・点過去」の形ということになります(これらの点は他の評価サイト等からも確認済み)。つまり、「(私たちは)(ある過去にある一つの時点で)忘れていた」ということ(点過去)になります。

 ※ 紛らわしいことに、動詞 olvidar は直説法現在/直説法点過去の1人称複数が同形で olvidamos になります(-ar動詞では共通して起きる)。よって、 meaning "forgot" (つまり、「忘れていた」ってことだよ)の部分がないと解釈は一意になりません。

 ただこの点、日本ではここまでわかるのはスペイン語を専攻している学生さんか、日本ではその趣旨的に愛知静岡などで南米外国人を扱う行政書士くらいしかおらず(ほか、広島市など車工場がある街でもおきるが、最大のマーケットは愛知静岡の労働者と、それを支援する行政書士)、この難易度は無茶苦茶厳しいです(というか誰がわかるのこれ…まぁ、実はポルトガル語とスペイン語は似た言語で、この動詞の活用形もそっくりなので、ポルトガル語話者(実質、日本では日系ブラジル人の方々)でも類推ができる)。

 ----------------------
 ※ 英語には、「現在形」に対して「現在完了」というものがあり、「過去形」に対しては「過去完了」というものがあります。同様にスペイン語にも現在形に対しては、「現在完了」というものがあり、未来形に対しても「未来完了」という時制があります。

 しかし、スペイン語ではもともと、「点過去・線過去」の「2種類の過去の使い分け」が細かく発達したため、「点過去完了・線過去完了」という概念は理論上存在しますが(後者は特に断りがない限り過去完了で、「時制の一致」以降の中級以上では登場しうる)、実際には初級中級では出てこない事項です(NHKのテレビ・ラジオスペイン語講座などでもこれらの時制は省略されるのが普通)。
 ----------------------

yukispica