「天才ミュージシャンの伝記であり、搾取の歴史のドキュメンタリー」リトル・リチャード アイ・アム・エヴリシング 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
天才ミュージシャンの伝記であり、搾取の歴史のドキュメンタリー
リトル・リチャードといえば、大昔に見たグラミー賞授賞式にプレゼンターとして登場し、「受賞者は……アタシだって!」というボケをしつこいほどやっていて、でもまあなんだか楽しくなるような陽性キャラなおかげもあって印象が悪かったりはしなかったのだが、このドキュメンタリーを観ると、ロックンロールのオリジネーターでありながら正当な評価を得られていない不遇感を長年抱えていたと知り、あのボケがかなり本気だったことに驚いた(その場面の一部はこのドキュメンタリーでも見ることができる)。
さらにチャック・ベリーのコンサートドキュメンタリー『ヘイル・ヘイル・ロックンロール』ではチャック・ベリーとボ・ディドリーと3人で座談会をしていて、ここでも黒人ミュージシャンの搾取について、冗談を交えながらもかなり熱く語っていた記憶がある。
パフォーマーとしてもシンガーとしてもピアノ奏者としても、また作曲家としても素晴らしい才能の持ち主であることくらいはわかっていたつもりだが、正直、リトル・リチャードのことを今までなにも知らなかった。これは伝記ドキュメンタリーであると同時に、音楽業界の搾取の歴史のドキュメンタリーでもある。非常に学ぶところの多い、見ごたえのある作品であり、ロックに興味があるなら観ておいて損はないです、と、ありきたりな表現ですが、ウソ偽りなくオススメします。
コメントする