「こういうのでいいんだよ!」DitO old-tearsさんの映画レビュー(感想・評価)
こういうのでいいんだよ!
オリンピックやスポーツを見て盛り上がれる人はもちろん、東南アジアの生活に興味がある人、いろんな世代が満足できるし、おススメできる見逃して欲しくない1本。
朝飯に白飯、卵焼き、パリッとやいたウインナー、みそ汁、漬物を久々に食べたような感覚。それがしかも丁寧にお皿もシンプルだが、鮮やかな食卓。例えるならそんな作品。
視聴後、感動と生きていく熱い活力をもらえる名作
ストーリーはシンプルかつ王道感がある、しかし細かいところで作りこまれているのが素人目にもよくわかる。(あらすじは他を参照して欲しい。)マニアな人には物足りないかもしれないが、これでいい。
BGMのジャズも印象的だが邪魔せずうまく盛り上げ、ビートとともに高揚感が自然と増していく。これほどわかりやすく主人公やストーリーにうまくはまったBGMはそうそう無い。
視聴後もあのリズムと躍動感が思い起こされる。
カラフルで活気ある街並み、海辺の景色の家々の美しさ、人々のたくましさ、弱さ、家族との絆の再構築。ベタな展開とマニアの方は思うかもしれない。
でもこれでいい。自分はこんなフィリピンのリアルを知らないし素直に面白かった
フィリピンの人も納得するリアルさだと思う。知り合いのフィリピン人も予告をみて非常に興味を示していた。
鑑賞後はきっと「よし!明日も仕事がんばろ!」と自分なりの拳を上げているはず。
田辺桃子さんは登場時やストーリー初期には本当にしょんぼり感があるが物語の展開に合わせてものすごく魅力的に輝きだしていく。こんな花がある人だったのかと驚かされる。
一番演技の幅が広かったように思う。素晴らしい役者さんで今後も期待したい。
結城貴史さんは40半ばにしてこの精悍さ、実際に現地に住み、ボクシングも本気で取り組んでいるのがよくわかる。とにかく彼がフィリピンに住み、体を張って経験したことをしっかり表現しているので説得力を強く感じる。違和感が全くなく、世界観がしっかりしている。おそらく彼が伝えたかったこと、やりたかったことを表現しきれたのではないかと勝手ながら感じている。
物語のキーワードは鬼滅の刃の「心を燃やせ」以来の熱いフレーズだった。
映画製作側の熱さを感じる。本当に背景も含めてきっちり描かれている。
時間をかけて、情熱をかけて、実際に住んで体験しないとできない作品なのがよくわかる。
現地に監督兼主演の結城貴史さんも何年も住み、じっくり構想を練ったそうだ。
説明はなくとも、フィリピンのリアル、ボクシングのリアルが物語の温度を上げていく。
例えばスパーリングシーンなどあるが、ガチである。カメラワークなどの誤魔化し無し。
リングにカメラは上がらず、視聴者は実際の試合同様の観戦をする形になる。
リングもフィリピンの実際の野試合?という感じを再現している。
余談ですが、DitO 鑑賞後はディトではなくディートォという発音じゃないと気持ち悪くなると思う。
これも物語のあちこちでキーワードのように出てきて、他の単語はわからなくても、
はっきりDitoだけは聞き取れる。そこがまたいい。ヒーローにも悪人にもいろんな人のDitoがある。それを見つけるのも今作鑑賞の際の面白さだと思う。
私のオールタイムベスト。