「名探偵コナンという作品への解像度が低い映画です。」名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ) うえをさんの映画レビュー(感想・評価)
名探偵コナンという作品への解像度が低い映画です。
今回の映画では原作では明かされていない設定が出てくるので見終わった直後はその事実に驚嘆したものの落ち着いて振り返ってみれば歴代映画と比べると今回は面白かった!とも思わなかったというのが正直な感想です。
第一にキャラクターの性格が違うなという違和感が終始ありました。
特に映画というのは作品によってキャラクターの性格がぶれがちですがそれにしても今回の映画はそれが多いように思います。
園子はなんだかふにゃふにゃしているし、和葉はやけに大人しいし、蘭のはしゃぎ方は原作よりもコメディに走りすぎているような…。皆高校生なので歳相応と一言でまとめることもできますが…。
もし今までの通りであるなら、園子はもっとコナンに対してツンケンとしていて協力はしてくれても語尾を伸ばすような話し方はしません。和葉はふらふらしている平次にもうちょっと口うるさく言うでしょう。特に大会に出る予定(しかも団体戦も選手登録している)ですから和葉の竹を割ったような性格からするときっちり駄目出しするはずです。平次が言うことを聞くかどうかはともかく。それに付随して大会すっぽかして告白スポットを夜通し探すというのも無責任さが際立ってしまいキャラへの魅力を下げています。
蘭は家庭環境から面倒見がよく、昔から平次と和葉のことを応援していますがあんなにふざけた態度ではなくまるで年上のように落ち着いてアドバイスができる女の子です。そんな子が唯一年頃相応にわがままを言える相手が新一であるので、もっと素敵な子のはずだけどなぁとやきもきしました。
怪盗キッドもキッドとしての彼は完璧主義であるはずなのに京都弁をあんなにあからさまに間違えるのも仮に平次やコナンを煽る為にわざとしていたとしても何度もしつこく同じことをする意味はないはずです。スマートに軽やかに危ない場面もそつなくこなす、そんな怪盗キッドはどこへ行ったのか。
さらに言うと優作も新一をはるかに上回る切れ者なのに劇中では話し方や内容含めほんわか天然系なのはがっかりしました。双子であると言っていなかったとして、それが優作ならばそれはあえて言っていなかったという方がキャラクターとしてしっくりきます。
有希子に至っては原作では明るくお茶目な性格なのに映画だと発言がただの馬鹿なのが残念過ぎる。
原作での彼等彼女等はそんな性格ではないという気持ちがこの映画をもう一度見ようと思わない理由の一つです。
ストーリーも特別悪くはないのですが良くもないといった具合です。
いわゆる三つ巴な戦いといったような展開は設定としては好きなのですがその状態は敵が判明してから斧江が捕まることでさっくりと終わってしまい結局コナンサイドとカドクラの対立に切り替わるし…。
コナンサイドは基本的に大人を頼らないかつカドクラも部下がたいして使えないので敵対しても緊張感が全くないです。
最初は大物感を出しながらもキッドに気づいたのはカドクラのみ、その場でキッドと切りあったのもカドクラ、方々への指示出しもカドクラ、車からの狙撃でバイクに命中させたのもカドクラ、斧江を狙撃したのもカドクラ、スタングレネードの中唯一先に進めたのはカドクラの車両。全て本人が行うというボスのフットワークの軽さ。カドクラはもっとどっしり構えるキャラであった方が敵としてのプレッシャーや重厚感があってよかったんじゃないか。
そして別作品のキャラクターが出てくるのは青山作品の醍醐味ではありますが、鬼丸の存在が微妙過ぎるんですよね。YAIBAの件はさておきコナン原作で登場する鬼丸は高校生でとんでもなく強い設定かつ、平次でも勝てるかわからないと言わしめる猛者です。しかし映画序盤では沖田が『強い相手と戦いたい、服部がいないなら大会に出場する意味がない』といったことを発言していますが鬼丸がいるのに?と首をかしげてしまいました。鬼丸が大会に出場していたかまではたしかに不明瞭ではありますがでも函館にきてるんだよな、とも思うし…。謎が深まりました。
鬼丸は最後に大立ち回りをしますが(コナンとしては)ぽっと出のキャラクターが無双とも言える活躍をしてもいまいち気持ちが盛り上がらなかったです。
またこれは個人的な主観ですが主題歌も微妙だなぁと思いました。
去年はすぐに曲を検索しましたが今回は全くそんな気が起きませんでした。
今こうして思い返しても良かったところよりも悪いところの方が容易に思い浮かぶあたりが自分の中でのこの映画を表していると思います。
良かったところというと黒羽盗一さんが出てきたところですかね。
監督と脚本を確認したら過去に同じような感想を抱いた映画を担当されていて、一人で勝手に納得しました。
長々と書き連ねましたが簡潔に言うと、名探偵コナンという作品への解像度が低い人が制作した映画です。