「表現者のドキュメンタリー」かづゑ的 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
表現者のドキュメンタリー
宮﨑かづゑさんという、一人の表現者についてのドキュメンタリー作品だ。10歳から80年間、ハンセン病療養所で生活してきたかづゑさんの好奇心旺盛に生きる姿を近距離でカメラに収めた作品で、被写体のかづゑさんと熊谷監督の距離の近さが素晴らしい。物理的に近いだけじゃなく、心の面でも距離感が近くてだからこそ、撮れる画がたくさんあって感動する。
瀬戸内海にある長島愛生園の歴史も語られる。ハンセン病の差別の歴史をテーマにした作品ではないが、かづゑさんがどんな環境で人生を送ってきたのかを知ることで、今のかづゑさんのたくましさと美しさの本質に迫れる部分がある。「本当のらい患者の感情を知ってほしい」とかづゑさんは言う。この映画には、僕が知らないことがたくさん描かれていた。この島の自然はとても美しい、かづゑさんは「ここは天国でもあり、地獄」という。かづゑさんの言葉は天国と地獄、両方を知る人の含蓄に溢れていて身につまされる。
かづゑさんのようにいつでも好奇心を学ぶ姿勢を失わないようにしたいと心から思った。
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