劇場公開日 2024年5月31日

「点数ではない温かみ」映画 からかい上手の高木さん R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0点数ではない温かみ

2025年7月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

やはり漫画が原作でしたか。
その実写版がこの作品
そのニュアンスの違いはわからないので、実写版だけに感じたことを妄想する。
ラブコメディというジャンルのようだが、人の気持ちという簡単に「変わってしまうもの」を「決して変わらない何か」はあるはずだという前提で、それに照準を絞り込んだ作品のように感じた。
教頭が言った「初恋というのは、だいたい終わってしまう」というセリフに込められた「一般的」な概念や常識
西片と高木にあった「変わらない何か」とはいったい何だったのだろう?
それを、最後の教室のシーンで二人が語り合っていた中に差し込まれていたのだろうが、それそのものを言葉にするのは難しい。
冒頭に登場する架空のコミック「100%片想い」
この少女漫画っぽいものはいったい何を表現していたのだろう?
そのアニメを夢中で見ているのが西片
あの漫画は西片の憧れでもあるというのがわかる。
未だ色あせない憧れ
西片の心の中を彩っているものの正体
そして突然かかってきた「高木さん」から出の電話
アドレスに「高木さん」と書いているのは、西片自身が彼女を憧れとしていた理由。
同級生の女子に、今も「さん」付けするのは、「100%片想い」という漫画の憧れの世界を、無意識かもしれないが、実在する「高木さん」に当てはめていたのだろう。
そしておそらく、この漫画を好きなのは高木も同じで、密かにまた読んでいることを当てられてしまう。
高木にとっては、西片が何を考えているのか、概ねお見通しなのだろう。
ただ、
高木自身が明確に西片のことを好きだと思っているにもかからわず、何度も打っているへなちょこパンチは一向に西片に当たらない。
さて、
大した伏線があるわけではなく、大どんでん返しもないこの作品。
漫画のほっこり感がヒットして、アニメが作られ実写化されたのだろうか。
お互い好きなのにはっきりしないという構図は、「君の名は。」と同じだろうか。
「秒速5センチメートル」の逆バージョンかもしれない。
この作品は、純粋で真実だと疑わなかった恋愛が、距離と時間によって無惨にも蝕まれていくことを描いていた。
そして本作では、ある種の恋愛というものは、「変わらない何か」によって決して壊れないことを描いていた。
「変わらない何か」とはいったい何だろう?
本当に戻りたかった場所 それが西片の隣だったこと。
10年前と何も変わっていなかった西片を感じた高木の安堵と喜び。
中学生の恋愛相談によって自分の気持ちを重ね合わせるという展開
高木は町田に自分の心を見透かされた。
それは彼女にとって恥ずかしいことではなかった。
歳の差とか経験値とか、多少はあるかもしれないが、町田も高木も同じように純粋なのだろう。
その純粋さ、純朴さをそのままに残している場所があの島なのだろう。
その大自然というロケーションが生み出した人間性は、くじかれることなく育まれて、「変わらない何か」を作り上げたのかもしれない。
純粋な少女漫画に抱いた憧れ
その世界を100%信じ切ることができた西片と高木
このほっこり感こそ、この物語の中枢なのだろう。
実写化に感じるまどろっこしさは、現代人のせわしい感覚を映し出している。
一般的に見れば、ありえない世界。
その「変わらない何か」を共有したことで、付き合うとか通り越してポロポーズになる。
まさにソウルメイト的恋愛物語
「変わらない何か」とは、相手を思いやる気持ち 一緒に過ごした時間の記憶 心の奥にある“憧れ”や“理想” 自分が自分でいられる場所なのかもしれない。
こうしたものが、時間や距離、成長や変化を超えて、二人の間に静かに残り続けていたのだろう。
相変わらず予備知識ゼロで見たが、
高木は病気で、余命宣告されていて、もう一度だけあの頃に戻りたかったという物語かなと妄想していたが、見事外れてしまった。
よもやよもやの物語だった。
ただ、
あの二人の持った、恋愛に対する純粋さが羨ましいと思った。
いい作品だと思う。
点数では語れない温かみを感じた。
「からかい上手の高木さん」は、評価されるために作られた作品ではなく、心に残るために作られた作品なのかもしれない。

R41
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