「式場のプールに着衣のまま飛び込むと出禁になります」映画 からかい上手の高木さん ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
式場のプールに着衣のまま飛び込むと出禁になります
あれから十年が経った。
二十五歳になった『西片(高橋文哉)』は、母校の中学校で体育の教師になっている。
そこに、フランスから帰国した『高木さん(永野芽郁)』が
美術の教育実習生としてやって来る。
二人の「からかい」「からかわれ」の日々が再び始まるかと思えば、
そうはならない。
その種の掛け合いは、前段として「TBS」で放送されていたドラマでやり切ったからだろうか。
もっとも、往時のエピソードを
映画版に上手く使い回してはいる。
『永野芽郁』は当年で二十四歳。ほぼ等身大の役柄。
一方の『高橋文哉』も二十三歳で、年齢の面では同様。
が、とりわけ相対する場面では、男の方が随分と幼く見えてしまう。
それは外見上の問題よりも、
演技の上手い・下手に起因するからのよう。
単に科白の発声だけにとどまらず、
ちょっとした表情の変化や些細な仕草に雲泥の差があり、
優劣は観ていて悲しくなるほど。
幾つかの長回し、とりわけ二人が教室で会話するシークエンスは超絶な長さも、
よくやり切れたな、と感じ入る反面、
力量の差が如実に現れる箇所でもあり、
制作サイドの英断としてよいやら、
無謀と眉をひそめてよいやら、迷うところ。
もっとも、先のドラマ版も、
総じて男子~男性の演技は、
女子~女性に比べ数段劣っており、
これは日頃から感じていることでもある。
嘗ての同級生の結婚式への出席や、
今の教え子たちの思春期らしい(恋愛の)悩み、
或いはストレートな愛情表現に向き合ううち、
元々『高木さん』の気持は漫画の初回から判っていたものの、
もやもやとしていた『西片』の心情も
それが意味することが自分でも理解でき
大団円へと進む。
これ以外の落としどころは想定できぬも、
エンドロールの中途に挟み込まれた短いカットにより
更に安堵の吐息を鑑賞者は漏らす。
『永野芽郁』を堪能できる、且つ{ラブコメディ}を期待したのだが、
笑いの要素は過少で、真面目な{青春モノ}のトーンが全体を貫く。
前者についてはお腹いっぱい、後者については肩透かし、が
正直な感想。
まぁ、今更ながら十年一日のことを繰り返していては
微笑ましさよりも薄気味悪さを覚えてしまう。
主人公たちの年齢も勘案した時に、
人間的な成長の物語りは
手堅い方向性と言えなくもない。