「100分ぐらい踊っている感じで、そのクオリティが天井突き抜けるぐらい凄い」ストリートダンサー Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
100分ぐらい踊っている感じで、そのクオリティが天井突き抜けるぐらい凄い
2024.3.14 字幕 アップリンク京都
2022年のインド映画
兄の無念を晴らすためにダンス大会に向き合う青年を描いたダンス映画
監督はレモ・デソウザ
脚本はトゥシャール。ヒーラーナンダーニー
原題は『Street Dance 3D』で、シリーズ3作目の作品
ロンドンで行われるダンス大会「グラウンド・ゼロ 2017」にて、決勝で大技を決め損ねて大怪我を負ったインデル(プニート・パターク)は、リハビリ生活を余儀なくされて意気消沈していた
彼の弟サヘージ(バルン・ダウン)は、兄をなんとか力づけたいと思って、クリケットのギャンブルで得たお金で一等地にダンススクールを作って、子どもたちのコーチとして兄を雇おうと考える
インデルはその行動に感化され、地元の子どもたちを相手に、簡単な振り付けなどを教えていくことになった
「欲しいものは何か?」と聞かれた兄は「グラウンド・ゼロ」のトロフィーの写真を見せる
サヘージは、その願いを叶えるために兄が作った「ストリートダンサーズ」を再結成させ、友人のD(ダルメーシュ・イェーラーンデー)、ポジー(ラーガウ・ジャヤール)、スシ(スシャーント・ぷジャーリー)を中心としたチームを作り上げた
だが、彼らの前に地元のダンスグループ「ルール・ブレイカーズ」が立ち塞がる
サヘージたちはインド人で、ルールのメンツがパキスタン人と言うこともあって、クリケットの試合でも対立し、行きつけのカフェに迷惑をかけまくるのである
ルール・ブレイカーズはイナーヤト(シュラッダー・カプール)を中心としたグループで、彼女のいとこゼイン(サルマール・ユフス・カーン)も一員となっている
ある夜、カフェの営業終わりに数人のホームレスが店内に入ったのを見たイナーヤトは、その違法行為を目の当たりにしてしまう
オーナーのラーム(プラブ・ディーヴァー)と店員のチョートゥー(スシャート・カトリ)は、秘密裏にホームレス移民の支援をしていて、イナーヤトたちの残飯を彼らに与えていたのである
映画は、ダンスバトルがメインになっているものの、その背景にインドの貧困問題と不法移民問題も描かれていく
いわゆる実話系の物語で、のちに「SWAT」として活動するシク教徒の支援活動の発足を描いている
エンドロールでは、その活動の一部始終と中心となったラームのモデルの人と、サヘージのモデルになった人が登場するのだが、字幕が早すぎて読みきれなかった
物語は「勝つこと」を目標にするサヘージと、ホームレス支援のために戦うイナーヤトの対立が描かれていて、サヘージが不法出国に関わったサブエピソードも後半に回収される
このあたりはかなりベタな内容なので、いつ来るのかな?とドキドキしながら待つと言う感じになっていた
決勝の相手が停電させて無音になったところで登場するのだが、ここまであからさまな感じになるよりは、ロイヤルズに圧倒されて言葉を失っているところに太鼓が登場する、と言うのでもよかったと思う
映画はほとんどのシーンで踊っている内容で、ガチのダンサーが100人以上登場する
主要チームが3つ、サブで登場するチームが5つくらいあるのだが、エンドクレジットを見ても誰が誰かはわからない
インドのダンス事情に詳しい人なら「カリスマ級のダンサーが出演していること」はわかると思うのだが、日本のダンスシーンすら疎い人としては、そのスキルを堪能するだけの映画になっていると感じた
いずれにせよ、インド国内の問題が結構登場するので、このあたりの情勢に詳しい方が理解は進みやすい
ダンスシーンは圧巻で、これをスクリーンで観ないでどこで観るの?と言う感じのクオリティになっている
個人的には、ラームがソロダンスをするシーンが大好きで、脇を支えるチョートゥーのロボットダンスも身の毛がよだつほどに素晴らしい
普通のおっさんが実はすごいダンサーだったと言うあるあるネタだが、彼が立ち上がるシーンこそ、珠玉のシーンだったのではないだろうか
ともかく圧巻、ダンス好きの若者なら、スキルを学ぶ上でも避けては通れない作品だったのではないだろうか