「中盤まではイイ感じなんだけど・・・」三日月とネコ 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
中盤まではイイ感じなんだけど・・・
地味な公開、あらすじ紹介を観てもあまり興味の湧かない作品だったが、倉科カナのキャスティングのみに惹かれて観賞。
【物語】
40代の独身女性戸馳灯(安達祐実)は熊本の書店で働いていた。ある晩マンション自宅に居たとき熊本地震に襲われる。
揺れが一旦収まり、飼い猫を連れてマンションの庭に避難していると、同じマンションに暮らす30代の精神科医・三角鹿乃子(倉科カナ)に声を掛けられる。鹿乃子も猫を連れていたため、猫の話題で盛り上がる。そこに猫好きの20代のアパレルショップ店員・波多浦仁(渡邊圭祐)が加わわった。
この晩を契機に3人の奇妙な共同生活が始まる。2年が経過し、3人はその暮らしに強い充足感を覚えていた。 が、灯に仕事上で知り合った長浜(山中崇)という男に好意を寄せられたことで、3人の暮らしに変化が起きようとしていた。
【感想】
現実にはちょっとあり得ない設定。
震災で住居を失い、避難所で数カ月共同生活を送った後の仮設住宅ならあり得るか?
避難所暮らしをしたら、よりプライバシーを確保の欲求が高まって、やっぱりないか。まして異性である。
そんな無理な設定なのだが、中盤までは「こんなこともあるかな?」と思わせてくれる日常が描かれる。今どきの価値観多様化、LBGTQ的要素も織り込まれて、「有ってもおかしくない」と感じさせ、3人の世界に癒しを感じることができ、楽しむことができた。
しかし、灯の前に長浜は現れてから「この生活は長くは続かない」という現実に引き戻され、リアリティーを醸す展開も良かった。
「そりゃ、そうだよな」と。
不満を覚えたのはその後の展開。意外性はなくとも、そのままソフトランディングしてくれれば良かった。再びリアリティーから離れる結末にちょっと不満。
俺的には3人の暮らしは「一種夢のような大事な思い出」として胸に残したまま3人それぞれ“普通”の暮らしに戻ってくれた方がスンナリと受け容れられた。
頭では多様性を認めても、実感として受け容れられていないジジイの感覚かも知れないないが。