「警官から見た事件の再現ドラマ」12日の殺人 ヤマッチさんの映画レビュー(感想・評価)
警官から見た事件の再現ドラマ
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2016年10月12日深夜、帰宅途中の女性クララが突然ガソリンをかけられ火を着けられて殺されます。事件を捜査する警察、班長になったばかりのヨアンが中心となります。そこからは捜査官の目線での展開となります。親友のナニーへの聞き取りから、クララの交友関係を聞き出し関係者に次々と事情聴取していきます。特徴的なのは、関係者がクララについて証言しますが、回想シーンや想像でのクララは一切登場しません。まさに事件の再現フィリムというつくりです。捜査する警官にこの事件がどのように理解されていくのかを伝えています。事件発生時には、火を着けられ殺されてしまうクララへの同情と犯人への怒りがあります。しかし、クララは数々の男性関係があり、惚れやすく尻軽女性でした。そのことが明らかになることで、捜査官達の意識に変化が起こります。よくある痴漢等被害女性に対して、被害者女性にも非があるというような雰囲気となります。あくまでも犯罪を犯す側に問題があるはずがゆらいでいきます。関係した全ての男性が疑えてきます。しかし、どれも決定的な証拠はありません。これにより迷宮へ陥っていく捜査官この展開を淡々と映し出しています。未解決事件を主軸に描かれるミステリーというより、凄惨な事件を前にして動揺したり、犯人に対して憤りを感じたり、偏見をもってしまうという人間の本性を現していると思いました。事件解決への妨げが証拠不足や捜査不足ではなく人間性にも影響を及ぼすこともあるという一つの事例のように思いました。
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