「10月12日の深夜、仏国グルノーブルで、女子大生クララが友人宅から...」12日の殺人 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
10月12日の深夜、仏国グルノーブルで、女子大生クララが友人宅から...
10月12日の深夜、仏国グルノーブルで、女子大生クララが友人宅からの帰宅途中に何者かに火をつけられ、その翌朝、焼死体が発見された・・・
といったところからはじまる物語は、実際に起こった事件で、本件は未解決のままであることが冒頭示されます。
なので、謎解きミステリー、犯人逮捕で溜飲を下げるということはない。
グルノーブル署では、ヨアン班長(バスティアン・ブイヨン)のもと、関係者への聞き込みから調査を開始。
浮かび上がってきたのは、被害者クララの奔放といってもいい男性関係だった。
クララの親友は「彼女は惚れっぽかっただけ」というが・・・
映画を観ていると、警察陣の調査は地道で手堅い。
日本の2時間サスペンスなら、犯人逮捕と相成ること請け合い。
だが、捜査線上に次々と浮かんでくる被疑者は、これまた次々と消えていく。
さて、そういう捜査の経緯を観ることになる観客は、心のどこかで、「この被害者、奔放な男性関係で、殺されても仕方がないかもなぁ」などといった不謹慎な考えが脳裏を横切る。
これこそがドミニク・モル監督が意図していたところではありますまいか。
観ている観客が犯人・・・
無意識のうちに犯人の立場になってしまう。
怖い、怖い。
警察の捜査むなしく、事件はお蔵入り・・・
だが、新任の女性検事(公判前の調査が仕事)が、事件後4年経って、捜査再開をヨアンに命じる。
まもなく、事件と同じ10月12日を迎えるのだ。
犯人は、必ず動き出すはず。
事件現場と被害者の墓に監視カメラを設置せよ、と。
それぞれのカメラには二組の人物が写っていた・・・
事件解決へと動き出すかに見えたが、冒頭に示されたとおり、事件は未解決。
事件の波紋は広がるが、被害者遺族は広がる波紋の中心に居続ける・・・
冷徹ともいえる視点で描かれたミステリー/サスペンス映画。
先に観た『落下の解剖学』にも通じる人間観察。
フランス流ミステリー/サスペンス映画の醍醐味を堪能しました。