「未完成なものが重なることでテンポが削がれるが、ビジュアル訴求力はとてつもなく強い」ソウルメイト Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
未完成なものが重なることでテンポが削がれるが、ビジュアル訴求力はとてつもなく強い
2024.2.24 字幕 MOVIX京都
2023年の韓国映画(124分、PG12)
2016年の香港映画『ソウルメイト 七月と安生』のリメイク映画
小学校以来の腐れ縁とある約束を描く青春映画
監督はミン・ヨングン
脚本はカン・ヒョンジュ&ミン・ヨングン
原題は『소울메이트』で、「ソウルメイト」という意味
物語の舞台は、韓国の済州島
そこで両親と暮らすコ・ハウン(チョン・ソニ、幼少期:リュ・ジアン)は、堅実に生きてほしいと願う両親の願いに応えながらも、得意な絵で生活したいと考えていた
ある日、彼女の通うクラスにソウルからアン・ミソ(キム・ダミ、幼少期:キム・スヒョン)という少女がやってきた
ハウンの隣の席に座ることを促されたが、荷物を置いたミソは、そのまま猛ダッシュで逃げてしまった
途方に暮れる教室、ハウンは隣に座っていたという理由だけで、彼女のカバンを届けることになった
海岸近くでミソを見つけたハウンは、彼女がいる展望台へと向かう
それから仲を深めていった二人は、ハウンの家に居候するまでになっていった
ミソの母(ホ・ジナ)はミソを置いて恋人の元に行ってしまい、それから彼女はハウンの両親(チャン・ヘジン&パク・チェンソン)の世話になっていく
物語は、高校生になったハウンに「想い人」が登場するところから動き出す
同じ学校に通うジヌ(ビョン・ウソク)に恋をしたハウンは、サークルの集会ゲーム「ゴー・ストップ」にしてペアになることができた
喫茶店で彼の似顔絵を描いたハウンは、勇気を出して告白をし、二人は付き合い始めるようになる
映画は、大学合格の祈願のために山に登り、その洞窟で「あること」が起きてからおかしくなる3人を描いていく
足を痛めたハウンを置いて、洞窟に向かったミソとジヌは、そこで口付けを交わしてしまう
よそよそしさから距離を取り始めたミソは、その後、ミュージシャンのギフン(ナム・ユンス)と付き合い始め、彼のためにソウルに行くと言い出してしまう
その別れには様々な意味が込められていて、それでも切れない絆というものが描かれていた
物語は「ミソを描いたハウンの絵」を起点として、学芸員(カン・マルグム)から連絡が入る現代パートが描かれ、ハウンが残したブログを読み進めながら、ミソが過去を思い出す形式になっている
現代パートでは、ある商社に勤めているミソが女の子(のちにアン・ハウンと判明する、演:キム・ソホン)を育てている様子が描かれるものの、父親らしき人物は登場しない
ある時点を最後に連絡を取り合っていないことが仄めかされるものの、その理由は最後まで明かされないまま、すべての伏線の回収はジヌに向けての制裁のようにも思えてくる
何も知らないまま、成長していけば自分かハウンの面影が見えてくるわけであり、それを含めても、あの洞窟でおかしくなった二人の関係に対する罰のようにも見えるのである
映画は、香港映画のリメイクだが、リメイク元は「ウェブ日記の映画化のために作者を探す」というものになっていて、それ以外の流れはほとんど同じになっている
だが、小説から絵画にしたことで、メリットとデメリットが両立する流れになっている
リメイク元は書かれた日記を追いかけるのだが、本作の場合もその日記を追いかける格好になっている
それよりは、ハウンの絵を見ながら過去を思い出していく方が良くて、最後に辿り着く絵で彼女の本当の想いに気づくという流れの方がスムーズだったように思えた
日記の完成とそれに付随する絵画が同時並行しているので、それよりは絵画だけに集中した方が良かったのではないだろうか
いずれにせよ、絵画にしたことによるビジュアルの訴求力は素晴らしく、中途半端に日記を挿入したことでテンポが悪くなっているように思えた
公開されているものと公開されていないものでは追いかけていく理由も異なっているので、改変をするならばそちらに振り切れば良かったと思う
最終的に、ハウンの未完成の絵を完成させて展覧会に出品することになるのだが、それがハウンの願いだったのかはわからないので、秘匿で始まった物語は秘匿のまま終えた方が綺麗にまとまったのではないだろうか